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仏検読解問題の解き方(2)

 前回のおはなしは、仏検の問題文の構成は、パラグラフを見ると意外にシンプルっていう話でした。

今回は、一見難しそうな長文問題の何をもって「シンプル」というかをもう少し突っ込んで見ていきたいと思います。

 私が仏検問題文を見て「わっかりやすいな〜」と思う点というのは、ひとえに文やパラグラフの

状況補語 (Complément circonstanciel)

接続表現(mot de liaison)

が、非常にわかりやすく配置されているというところにあります。これらをチェックしていけば、話の流れがより明確になるわけです。

状況補語というのは、時間・場所・手段・目的・理由・条件などを表している部分で、たいがい avec, pour, en, à などの前置詞を使ったグループや副詞で構成され、仏検レベルの文であれば、コンマで区切られて文頭か文末に見つかることが多いです。

 例:Hier soir, j'ai rencontré une amie à la gare. (昨晩駅で女友達にばったり会った。)

太字部分が状況補語です。読解や聴き取り試験では、このような状況補語の中でも特に「いつ・どこで」というのをチェックして行きます。特に「いつ」は、文中で時間の流れを把握するのに必要になるため、気をつける必要があります!

 接続表現は、文と文をつなげる「connecteur(コネクター)」と呼ばれるものです。Et , mais, donc などをはじめとしてかなりの量があります。これがわかっていれば、展開を読むのがとーっても楽になります。後で、パターンの例をいくつか挙げておきますね。

 実は、高度な文書になってくると、こういった分かりやすいアンカーは滅多に登場しなくなり、叙述の力のみで読み手を惹きつける文章を作り上げる傾向が高くなります。

ネットで時事を読む人が増えた結果、スピード感ばかりが重要視されて、じっくり読み応えのあるものが少なくなってきてはいますが、それでもやはりLe Mondeを始めとする大手新聞で、「簡単には読ませてくれない良文」を読むことができます。

最近出会ったもので秀逸だと思ったのは、映画「この世界の片隅に」のフランス公開時のル・モンド紙のレビューです。

« Dans un recoin de ce monde » : les rêveries d’une ménagère dans un Japon en guerre

読んでみるとわかるのですが、文頭周辺にほとんど接続表現が出てきません。しかし、読み手がこのアニメーション作品についてもっと知りたい、続きを読みたいと思わせるようにパラグラフを構成し、うまく流れを作って引き込むよう書かれています。

また、どちらかと言うと言語化しにくいこの作品の魅力について、片淵監督の手法が他の映画とどのように違うのかを対比させながら述べていき、この作品を見てみたいなと思わせるように、丁寧に作られているんです。

 さて、それでは、私がどんな風に問いていくかを実際にやってみます!今回は、仏検のサイトにある過去問サンプル(2008年秋) 2級の大問 4を使ってみましょう。

前回の手順を使うと、文末の語彙補足欄から 犬、しかも「口輪」ということから、大きな犬、獰猛な犬、などの話だとわかります。この辺、字面だけ見てぼんやりとチェックするのではなく、連想の勘を働かせる必要があります。トムとジェリーに出てくるブルドッグみたいな犬のことでしょう。

KILLERて書いてあるし・・・

ここでチェックした語彙を知らなかった場合は、ささっと本文に日本語で書いてしまいましょう。後で問題に関わってくる可能性大ですので!

パラグラフのフォームを見てみると、3つのパラグラフ(以下, ¶ と表記)があり、¶1と ¶2はほぼ同等の文量、¶3だけが少ないため、予想としては、

¶1 : 話題・問題提起

¶2 : 話題の詳細または問題の解決策

¶3 : 話題のまとめ・¶2の今後の展開・解決策に対する新たな疑問点・問題点の提起

という流れになりそうです。

 さて、ここから、各パラグラフの文頭を中心に「状況補語 (Complément circonstanciel)」と「接続表現(mots de liaison)」を探していきます!

実際の試験では色ペンを使う時間はないですから、状況補語は○で囲み接続表現は下線を引くなど自分で予めルールを決めておきます。慣れれば○と下線を同時にチェックしていけますが、今は分かりやすいように状況補語と接続表現をわけて、以下のようにします :

・ブルーのマーカーが時間・場所などの状況補語
・ピンクのマーカーが接続表現


1. 状況補語をチェック。

では、まず文頭の状況補語(ブルーの部分)から、パラグラフ毎に。

¶1 l.1 En France (場所) , depuis 9 ans (時)
     l.2. Ce week-end (時) , encore (反復の様態)
     l.3. Pour (方法・目的)
¶2 l.6. Aujourd'hui (時)
¶3 l.13. toujours (継続の様態)

これだけで、この話の中でフランスにおいて 9年前 → 今週 (→) 今日(こんにち), つまり現在の状況 という時間の流れがあることがわかります。

また、encore (またもや) という言葉から、何かが再発したことが伺えます。 そして、それが  toujours (今でも)、という表現で課題を残しているということもありそうです。これらの語周辺に問題提起がありそうな臭いがプンプンしてきましたね!


2. 接続表現

次に接続表現(ピンク部分)を見ていきましょう。これも、文頭付近にある表現だけを絞ってチェックします。

¶2 l.9. De plus (その上)
¶3 l.13. Mais (しかし)
   l.14. donc (なので、だから)

ここから、¶2では何らかの現状説明が冒頭のAujourd'huiから始まり、De plus からその状況に更に新たな要素が追加されているとわかります。「何が」かは現時点ではわからないにしても、状況に拍車がかかっている・ますますおびただしくなっているということが予測できます。

それが、次の¶3の冒頭のMais という一言ですべてひっくり返されています。Mais は前文で述べたことに反する内容を続ける際に使われる接続詞ですから、長々と¶2で述べられたことが否定される内容が書かれていると考えられます。

そして、次の donc は「だから」「つまり」という要約のために使われる語ですから、ここでこの文のまとめに入っているということがわかります。この文の結論はここにあるということです。

 ところで、「結論はここにある」とはどういうことでしょうか?

この文を一言でざっくり言うと、こういうことだよ!

ってことです。お城で言うと、本丸ってことです。それ以外の部分は、最悪切り捨てても仕方がないけれど、ここだけは守らなくちゃ!っていうところです。つまり、ここを読めばこの文の主張(idée principale) がわかってしまうのです。

この主張を常に反映させながら、穴埋めや正否問題を問いていきます。簡単な文であれば、先にこの結論部分だけざっと読んでも構いません。この問題文の場合、

Il faut donc être très prudent et (  5  ) d'un chien dans la rue, surtout s'il n'est surveillé par personne.
「道端にいる犬、特に、放し飼いになっている場合には特に気を付けなくてはいけない」

( 5 ) に当てはまる文を入れなくては完成しませんが、入れなくてもざっくり意味はわかります。

 先に挙げた接続表現(ピンク) から、すでにほとんど流れが明らかになっているので、

¶1 問題提起 : 道端にいる、口輪の必要なくらい大型犬や獰猛な犬による被害
¶2 現在の対策 : 何かしらの対策がなされている例が2つ以上挙げられている           (De plus があるため、2つ以上とわかる)
¶3 結論 : ¶2で挙げられた対策は、まだ完全に有効ではないので、被害に合わないために道端の犬に気を付けなくてはいけないという注意喚起。

という構成だな、と予測をしておきます。

ここまでわかってしまえば、あとはこのプランに沿って本文を読んで行くだけです。慣れれば、穴埋めをしながら一気に読んでいくことも可能です。穴埋めを完成させたら、確認のためにもう一度全部を読み直して完了となります。

パラグラフの制御装置

パラグラフの流れを制御する接続表現はざっくりわけると次のようなものがあります。同じ言葉を使っているものはセットで使い、他のセットと混ぜてはダメです:

例えば、En premier lieu → En seconde lieu という風に。これを En premier lieu → Deuxièmement とやるのはよくない、と語学学校では教わりました。

プラン(話の展開)を提示する :
(Tout) d'abord / En premier lieu / Premièrement  (まず)始めに
Ensuite / Puis / En seconde lieu / Deuxièmement  次に
Enfin / Finalement / En conclusion / En dernier lieu / Troisièmement (et dernièrement)  最後に、最終的に、結論としては, 第三に

パラグラフ内でサブパートを作る :
D'une part / D'autre part 一部では... 他では...
D'un côté / De l'autre 一方では... 他方では...
Soit... soit / Aussi bien ... que / Tant ... que ...であるか(はたまた)...であるか / ...と同様に...
De plus / Par ailleurs 更に, そのうえ
En outre / De surcroît 加えて, おまけに
Aussi / De même / Egalement 同様に

注意を引いたり、詳細を述べる:
Notamment / Par exemple 特に, 例えば
Ainsi / À ce propos / À cet égard このように, このことから
Pour ce qui concerne / Pour ce qui est de / Quant à ...に関して言えば
D'ailleurs / En effet だいたいから, 確かに
除外したり、制限したりする:
À part / Mis à part ...を除き, ...は別として
Sauf / Excepté / Hormis / À l'exception de... ...以外
Du moins / En tout cas 少なくとも / とにかく

意見の要約、結論:
En résumé / En définitive / En un mot / Bref / Somme toute / Tout compte fait 要約すると, 一言で言えば, つまり, 結局
À mon avis / Selon moi /D'après moi / Pur ma part /Je pense /J'estime /Je considère  私の意見としては, 私について言えば, 私としては, ...と私は考える, と見ている, とみなしている・考察する
↪ (※仏検の場合、長文読解問題が一人称で語られることは少ないけれど、挿入されている登場人物の会話であったり、会話問題全般で使われる表現なので、これらの表現も知っておくと良いです)

 次回は問題を問きながら、引っかかりやすい点について解説していきます!

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