新宿南口フラストレーション

2月2日

胸のあたりに空洞があって、そこを空気が何度も通過して

いく気配を感じがしている。

おまけに、触らずとも顔面に赤みがかっていることがわかる。

今、ハンバーガーショップにいるのだが、

店についているLEDライトが一斉に私を照らしているようだ。

これが、何かしらの功績によって自分を照らし出している光なのだと

したらよだれものだが、実際には、体のだるさからくる口元の緩みと

視覚の明度によるものだと現実を受け入れる。

そして、恒例となった生理のおかげでこうなっている。

洗濯日和の天候だったので、マフラーは必要ないかもしれないと一度は

手放したマフラーを念のためと考えなおし、首に巻いて歩いていた。

日陰に入ると、やはり寒い。「巻いておいてよかった」と安堵しながら

新宿駅の南改札口前の信号を渡ろうとしていると、後ろから女性の声が聞こ

えてきた。声色からして20代前半だ。

「暑っ、マフラーしてる人の気が知れなーい」

私の巻いていたマフラーは、青色をしたもこもこがすぎるくらいの

ボリュームがあり、顔半分が隠れるように巻いていた。

気づかないわけがない。

信号を渡り終えるか終えないかという地点にさしかかったころ、

私は女性の行為に妙に納得していた。

天を仰いで発せられた大雑把な単語のひとつひとつが、何処かにある何かに

向けられた苛立ちに聞こえたからだった。

まっすぐに歩きたいのに、正面からは予測不可能な動きでもって遮ってくる

人間が次からつぎへと歩いてきたり、ときには衝突してくることもある。

しかし、自分は一人では生きてはいけないと自覚しはじめる、まだ柔らかい

脳みそをもった若者。

きっと、どんな言葉でもよかったのだろう。

社会へのフラストレーションは、本人も自覚がないうちにこうやって少しず

つ吐き出されているんだなと思った。

新宿南口からのフラストレーション。とでも言っておこうかな。

私は、さっさと早く帰宅して体調を整えよう。

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