何科。

おそらく99%の医学生はこの類の質問をされたことがあると思う。

「何科に進む予定なの?」

この質問は親戚から聞かれることもあるだろうし、実習先の先生から聞かれることもあるだろうし、ひょっとしたら初対面の人に聞かれることもあるかもしれない。そして個人的にではあるが、聞く人が医療関係者やよっぽどの仲の人で無ければ、大半はその答えを気にしていないように思う。「内科です」と答えれば「そうか~、白衣を着てビシッとね」と言った感じだろうし、「外科です」と答えれば「手術、大変そうやね」と言った感じだろう。「内科です」と答えて「呼吸器内科?循環器内科?」「今後AIが進出してくることを考えれば内科医の需要は減ることが予想されるけれど、それを見越したうえでそのように答えているの?」と突っ込んでくる人は少数だろう(極々まれにいらっしゃるのだけど)。あくまでも話題の一つとして、決まり文句の一つみたいな形でとりあえず聞いている面も大きい。

ただ、王道外の答えが相手を惑わせるのは確かだ。僕自身は病理診断学に興味があって、病理診断医も将来の選択肢の一つとして真剣に考えている。が、かつて同じ質問をされた時に「病理医とかですね」と言って変な空気になったことがあるので、以後医者相手以外には口に出さないようにしている。そこで「病理医は、アメリカではdoctor's doctor と呼ばれていて…」とムキになって説明を付け加えても墓穴を掘るだけで、何も会話が進展しないのである。

そういう事もあって、この質問には決まって無難な答えをするようにしている。「そうですね~、研修医になって色々見てから決めますかね」みたいな感じで。もしそこでより質問されることがあれば答えるには答えるのだが、気分で答えてしまうこともある。放射線科の試験が近ければ「放射線科医も興味ありますね」とか。厳しそうな内科医の先生に聞かれて内科医以外の答えを言うのは何となく憚られるから、空気を読んだり。「小児科医志望です」と答えるのがめちゃくちゃ一般ウケが良いのは気づいた。子供を見る優しい先生、というイメージが強いのだろう。実はその裏は医者の世界でもトップクラスの激務であったりするのだけど。

それぐらいに進路は定まっていないし(もちろん、逆に想定外に猛烈な熱量で自分の思いを語られても相手は困るだろうし、仮に自分の希望科が「あそこは~だからなあ」とかネガティブキャンペーンをされた日には、なんとなく嫌な気分で1日を過ごすことになる。

でも、ボンヤリと決めていることはある。

アクシデントが起こった時に、「なんでこの科を選んだんや…」と後悔して泣くのではなく「まあ、この科を選んじゃった俺が悪いな」とニヤニヤしていられる科を選ぶのが目標だ。

つまり、自分の好きな科、興味のある科を選びたい。

「いや普通やん」とツッコまれそうだが、これは意外と難しいことかもしれない。自分の希望科が給料が低いとか、待遇が悪いとか、人間関係とか、その時の事情など色んな要素があるからだ。大学受験でも「行きたい大学」よりも「行ける大学」を希望する人が多いように。

とりあえず今にできることは「コイツ頭悪すぎる…」と思われないレベルの勉強はしておくことか。でも面倒くさいよな、最近Switch買ったからアカンかもしれん。コントローラーの操作が将来のロボット手術に役立つと言い訳しながら、今日もドラクエで世界を救っている。

「人間万事塞翁が馬」

何が禍福に転じるかは分からない。けれど、自分で興味を持って選んだ道なら、なんとか踏ん張れる気がする。

本棚を見る。

最近、コウノドリを読んでいる。

暫くは産婦人科志望かな。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?