50万円のショッピングモールサイト(前半)

2000年頃、ショッピングモールサイトを運営する会社(社員数5名)でITエンジニアをしてました。
その時のお話。

前編はただの時代背景。



1.ショッピングモールサイト戦国時代


1990年代後半、楽天というショッピングモールは経営者に衝撃を与えた。

「ネットで買い物??なんか危ない」と言われていた時代に
数万店の出店者を抱えていた楽天。
しかも1店舗当たりの出店費用は当時50,000円

当時の経営者はみんなこう言った。

「土地代、店番の人権費がかからずにたった50,000円でネット上にお店が出せるなんて画期的だ!!そして、そんな画期的なサイトを作って出店者を1万人集めれば毎月5億の売り上げだ!!」

第二、第三の楽天を目指した企業により
ショッピングモールサイトの作成に億単位のお金が動く時代が始まった。




2.実は戦国になってない


皆が皆、目を輝かせながらショッピングモールサイトを作り

「うちは楽天の10分の1の5,000円で出店できる!これは魅力的だ!ヒットするぞ!!」

とか言っている。


言いたいことは分かるけどね。集客はどうするの??
当時の有名検索エンジンYahooの「ショッピングモール」カテゴリは既に満席御礼。

Yahooに登録されない限り、無名サイトの集客は難しいと言われていた時代にモールを作ったところで陸の孤島になるのは確実。


さらに当時はGoogleのような優秀なロボット検索エンジンもなかったから
ネット上に出店したところで商品が特徴的なものでない限り誰も見に来てくれない。

ショッピングモール出店者勧誘担当営業が頑張って出店者を探してきても
「御社のショッピングモールに出店してもぜんぜん売れない」
といった理由で8割以上の利用者がモールを辞めていく。

自社が運営していたショッピングモールサイトの店舗一覧ページに表示できる店舗数は50店舗だったのだが


2ページ目へ到達することはなかった。


それが当時の弱小ショッピングモール運営会社の実態。


ただ、こういった状態なのは自社だけではなく
どこもかしこもそんな感じだった。

「○○社がモール作ったらしい」
「✕✕社がモール辞めたらしい」
「△△社がモール始めるらしい」

等といった
辞めたり始めたりだのの話が忙しく流れていた。


でもね。みんな第二の楽天を夢見て

「うちには秘策がある」

みたいな事いって始めるwww
(蓋をあけたら「安い」とか「地域密着型」とかどうでもいい秘策だったりするんですけどね…)



3.転機が訪れる


・1年未満で辞めれる店舗
・1店舗勧誘するのに1週間は営業が続く
・月額出店費用5,000円(初期費用は数万)

こんなの誰が見たって大赤字

最初は月5,000円のお店を1店舗見つける営業に1週間かかっても
どんどん積み重ねていけば利益が出せるようになるから大丈夫!
な~んて言っていたのに続々と出店者が辞めていくか出店数は横ばい。


そんな中、営業が案件1件とれたんだけど出店したいとかじゃなくて自社ショッピングモールサイトを作りたいって言ってる。
300万で作ってくれないかと言ってきたんだけど…

と、話しながら帰ってきた。


その話を聞いた時
🦐(おぉ!! そうか! そういうのも全然あり!)
って思った(自分以外の社員もみんな)



社長が猛反対
「ライバル(他社ショッピングモールサイト)を作ってどうする!」



4.社長との闘い


この300万の案件を受けるかどうかで社内で話し合いが行われた。

社員の言い分
・自社のショッピングモールは出店者を獲得しても1年平均で辞めていく
・月5,000円のサービスなので売り上げはトータル60,000円
・300万の案件はモール出店者50人分になる
これは今の全出店者を超える利益こんな美味しい話、断る理由なんてない。
そう言って押し切ろうとした。

社長の言い分
・モール会社のビジネスモデルは「月々の収入」このモデルを成長させている段階
・戦力を受託開発側に割けない(PGは自分一人しかいないので受託開発しちゃうと本業ECサイト改修が止まる)
・銀行からの出資を受けるには「モールによる月々の収入が伸びてきている」という実績が必須であり、受託の売り上げは無視されるので銀行からのお金がストップする。

こんな感じで意見が分かれた。
社長はこの「月々の収入があるショッピングモールビジネス」にムチャクチャ思い入れがあり
受託開発の方が直近では利益があるのは分かってはいるが譲れない思いが強いといった感じだった。

そして、社長の言い分の「銀行からのお金がストップする」に社員たちはビビった。
なぜなら
「次、銀行からお金ひっぱれなかったら給料出ない」
という状態まで来ているからだ。


なので話し合いはなかなか進まなかった。


5.そして結果は


常務「何いってるの?今確実に入る300万の方が利益になるじゃないの!」

この一声で300万のショッピングモールサイト開発案件を受ける事に決まった。
実はこの常務さん
”お金持ち家の娘さん”
なのである。
しかも常務の実家からムチャクチャ融資してもらっているのだ。
という事で社長は常務に逆らえない。


こうして300万のECサイト開発案件を請け負う事となった。


6.ゴールドラッシュ現象


金の採掘の大ブーム(ゴールドラッシュ)時、一番儲けたのは金を採掘していた人たちではなく、彼らがはくジーンズを作っていた会社だ
って話は有名ですが

まさしくそのゴールドラッシュになった。

営業曰く
1件獲得する難易度は

ECサイトの受託開発<<<<出店者

らしい。


ショッピングモールは運営するよりも作って売る方が断然美味しいビジネスだったのだ。



なぜなら
「2000万でショッピングモールサイトの受託開発をした会社がある!でも安すぎたから失敗したよね!!」
なんてエピソードが話題になっていた時代。

そんな時代に自分のいた会社は1件のショッピングモールの作成を300~500万で請け負い、しかも全案件納期内に納品している実績を持つ会社。


そりゃー大人気になりますよ。


Webエンジニアが自分一人しかいないからショッピングモール開発案件は常に順番待ちの会社さんがいる状態でした。

社長も上記のゴールドラッシュの話を出して
「これからは運用する時代じゃなく、運用したい人に提供する時代だ!」
って言ってましたしね。

超反対してたのにwww

(こういうサクっと意見を切り替える頭を持っているから社長として長年やってこれたんでしょうね)


後半へ続く。


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