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競技射撃のカリフォルニアチャンプにインタビュー。1982年、秋。

-なぜPPC競技にこだわる?

何だかんだ言っても、男はやっぱり、勝ち負けにこだわる生き物だ。

だろ?

いや、まあ正直に言えば、勝ち負けにこだわっている自分がカッコいいと思っているのさ。

警官や腕利きの一般人が射撃の正確さを競い合うPPC競技。日本でもその人気が高まりつつあるPPCの、4年連続カリフォルニア州チャンピオンにして、現役ポリスオフィサーでもあるフォックス・モルダー氏へのインタビューが実現しました。では、続きをどうぞ。
-PPC競技って、そもそも何なのですか。

ポリス・プラクティカル・コースあるいはポリス・ピストル・コース、はたまたポリス・ピストル・コンペティションという説もある…
いや、PPCが何の略だとか、ま、

そんなこたぁ、どうでも良いんだ。

元々はFBIがポリスオフィサーの射撃技術向上を狙って考案した訓練で、7ヤード、25ヤード、50ヤードのシチュエーションで、それぞれマン・ターゲットを撃ってその正確さを競う。

特徴はリボルバー(回転式弾倉)のピストルで争うこと。

これに圧倒的な成績で勝ち続ける

のが、俺のこだわりなのさ。

-PPCに出場し始めたきっかけは。

元々、射撃にはそこそこの自信はあったんだ。でもね、LAPD(ロス市警)で射撃の腕は誰が一番だい?
と聞かれりゃ、皆んながこの俺だと言う。
そんな、

皆んなが認める射撃のプロフェッショナルを目指すには、やはりPPCに出て勝つことが近道

だったってわけさ。

-どんなガンで出場しているのですか。

PPCマッチに出るには、当たり前だが、ガンがいる。

マッチに出始めた当初、俺は、S&WのM586ってモデルで出ていた。↓ どノーマルさ。

でもその時すでに、色んなガンスミスがPPC用にカスタムしたガンが出回っている、ってのは聞いて知っていたよ。
例えば、

トリガー(引き金)のチューンナップだ。

トリガーってのは、撃つ!と決めたらウルトラスムーズに引けて、確実に、しかし切れ味よくパチン!とリリースされないとダメだからね。それを、スプリングの強さを替えたり、パーツを削ったり磨いたりしてチューンするんだね。
あるいはバレル(銃身)やサイト(照準器)のチューンだ。精度を高めることでより正確な射撃ができるようになる。

でもね、当初は、お金がなかったんだよね。

だから、どノーマル。

それでも、良い成績出したんだよ。1年目からね。

それで、腕利きチューナーのビル・デイビスさんが声をかけてくれた。俺んとこにガンを預けてみないかってね。ありがたいことに、署の方でも、カスタム代をサポートしてくれることになったんだ。

-で、今はチューンナップしたガンで出ている?

そう、その後はずっと、俺のPPCガンは、サクラメントのビル・デイビス社でチューンしてもらうようになった。これさ。↓

このグリップ、これもデイビスさんちのゴムグリップなんだけど、握りごこちが最高なんだよ。手に吸い付く感じでね。さっきの、どノーマルに付いてる木のグリップも決して悪くはないんだが、こっちはゴムだから反動を伝えにくいし、なんと言っても俺、あまり手が大きくないから、この

薄いデイビスのグリップは、ジャストフィット

なんだよ。
日本じゃテレビの

"あぶない刑事"

でヒロシ・タチが使ってたグリップだってことで有名だって聞いたけど、いやこれ、元はPPC用にデイビスさんが作ったグリップなんだぜ?

-バレルもすごく太いのが付いてる。

ああ、これはね、バレルの精度を高めてあるの。それに、バレルの下のラグで重さを稼いで、発射時の銃のハネ上がりをマイルドにしてあるんだ。これで

次の弾が格段に撃ちやすくなる。

あとはサイトだね。サイト・レイディアスと言って、照準器というのはフロントサイトとリアサイトの距離が長く取れれば取れるだけ、正確な狙いにつながる。だから、ハンマーの上まで、目一杯、サイトが延びてるんだ。
サイト・ピクチャーはこんな感じで、すごく狙いやすいよ。

-チャンピオンを脅かされることはなかったのですか?

今でこそ俺は4年連続でカリフォルニアのチャンピオンだ。でもね、こんなこともあったんだ。

あれは、1980年秋の出来事だった。

マッチの時期が近づいて来ると、皆んなが、今年は俺は勝てないかもって言うんだよ。

若手でスゴイ腕利きが出てきたからって。最初は何言ってんだ、って思ったけどね。

でもね、練習場でその彼を初めて見かけた時、一発でわかったよ、コイツのことだな!って。

それくらい、上手かった。

若いのにね。しかも、持ってる銃がコルトなんだ。

PPCでは、S&Wがスタンダードだからね。俺もファンだよ。作動がスムーズなんだ。コルトのリボルバーは仕上げはすごく美しいんだが、競技用として考えると、ちょっと作動がネットリしてるんだよね。スパっといかない。

でも彼はコルト。しかも、同じデイビスさんがチューンしたやつだよ。デイビスさん、コルトもやるんだ、ってその時初めて知ったよ。後から聞いたんだけど、あのコルトは、彼の親父さんの形見だったらしい。

その年のPPCは、久しぶりに、緊張感の高いマッチだったね。

俺が有利だと思ったんだけど、食いつかれて、どんどん追い上げられてね。

一瞬、やられた、と思ったよ。

でも最後のステージで、俺はたまたま最高のパフォーマンスを出せて、彼は少し何かに躊躇して、ミスったように見えた。何に躊躇したのか、今となってはわからないね。

なんでって、コルトの彼、その後見かけないんだ。他の州に移ったとか、FBIに引き抜かれたとか、色々噂は聞くけどね。

彼と再会したらまた、勝負してみたいね。
ただ、俺も歳を取った。これからは、若手の指導に力を入れていこうと思う。

コルトの彼がわざと負けたんじゃないかって?それはないさ。

あれは、お互い、死力を尽くした真剣勝負だったんだからね!

(interview by E.Tuner, LA支局, 1982秋)




…ウソでーす。全てフィクションです。PPC競技については2009年4月号のGUN誌のToshiさんの記事を参考にさせていただきました。
モデルガンの写真は、"どノーマル"はマルシン製のS&W M586をブルーイング して、パンドラアームズの花梨のグリップ、"PPCカスタム"は、コクサイ製のS&W M19にスモーキーズガンファクトリー製のバレルキット、デイビスのゴムグリップを組んだものでした。

それでは、またー!



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