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人生に物語はつきものなのか…

年を追う毎に、人は無力であると痛感する。

若い時期は弱さを隠そうと必死に貫いてきたが、今では弱さを受け入れ正直に限られた時間と向き合うことの重要さを知る。

年輪を重ね理解できるものも多々ある。
例えば小津安二郎監督作品は若人には通用しない映画でもある。
事実、今になり小津安二郎監督作品とようやく向き合えた気がしてならない。

小津作品の代表作でもある「東京物語」を図書館にて借りてきた。
随分と前に鑑賞した時は退屈でしかないと思っていた。
しかし、今ではかえって台詞の少ない点や間の取り方が絶妙であり、まるで計算していたのかと思えるほど完成度の高い作品であると改めて驚かされるのみ。

この作品は家族というものを徹底的に描いている。
手が離れた子供たちはそれぞれの場所で家庭を持つ。

老夫婦は都心に住む子供らと会うために上京する。


自身に置き換えても同様に、家庭を築くと巣立った場所が色褪せていくものだ。
希薄と言われるとそれまでだが、一家の主人となると守るものが変わって行く。
当然ながら親への愛情は変わらない。
だが、親以上に妻や子供の存在が最優先となる。
こういった内容をこの作品が描いている。

はるばる都心へ出てくるも、我が子から煙たがれるかのように熱海の温泉地へ行かされる。
都心から身近な観光地ということもあり、若い世代の人々が夜中だろうが時間を気にせず騒ぎ立てる。

こういったこともあり、老夫婦は満足に睡眠を取ることができずに予定していた宿泊日数を縮めて都心へと帰る。

我が子以上に老夫婦を向かい入れるのが戦死した次男の嫁である紀子であった。

老夫婦は道中にこんなことを話す。
「一般的に我が子より孫が可愛いと言われるがどう思う?」
夫がこういったことを述べると、「やはり、子供ですかね…」と妻は答えると、「そうだよな…」と夫はしみじみと呟くシーンが人間味が溢れ言葉を失う始末。

『家族とは…』
こういった部分に本来不可欠な絆を考えさせられる内容となる。

「我が子より他人が優しいだなんて…」
改めて愛情は計り知れないものだと痛感する映画でもあった。

補足
淡々と描きつつも、人の内情を色濃く表現した小津作品に圧巻であった。

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