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チームの誰かの思いを踏みにじったうえで楽しむ旅なんだったら、そんな旅はまっぴらごめんだ。

MOUTNAIN BIKE JORNEY
7/30 DAY10 走行115km


朝から兆候が見えていた。
昨日の夜、テンションがあがりすぎて、おやすみなさいと上にあがってからも遅くまで起きていたこともあるだろう子どもたちはなかなか起き出せず。

朝ごはんの準備にも手間取って予定していた7時出発より大きく遅れた。
けれど彼らの雰囲気としてはとてもよくて朝イチで○○がパンクしても誰ひとりがっかりしたり、イラついたりすることなく修理を手伝う。
仕事終わりのよっちゃんがいてくれたことも大きいか?

1回目の休憩で、朝できなかったミーティングをするたっぷり時間をかけるというよりも間延びしている。
だらだらとおしゃべりしながらとりあえずのようにそれぞれの役割を進めていく彼ら。
昨日の夜には100km超えをする決意でいたはずの彼らもおそらく今日のイメージはすっかり抜け落ちているだろう。

誰も今日のぼくらの目標を語ることはなく今少しでも楽にいけたら、楽しかったらという風に見える。
かずみさんに「お互いが馴れ合ってくることと、集団としての意識とってバランスが難しいね」と話をした。

昼休憩。大きなスーパーで人も多いので食べるもの、食べる場所は任せると伝えて子どもたちに財布を渡した。
食べる場所を決めて伝えにくると思いきや誰も帰ってこない。
どうやら買い物をしてそのまま中で食べることにして食べはじめたようだ。
もう待ちくたびれたと思っているところにかすみさんがやってきた。呆然としているので、“なかで食べることにしたんやね”と伝えたら涙を流しはじめた。

体調がすぐれない僕を心配しているようで、なかで自分たちが涼しくいたい方を選び、どうして?まさやんひとりだよ?と聞くと「まさやんは男はやせ我慢をするもんだって言ってたもん」と返したそうだ。
そして、それなら少しでも早く食べて交代してあげようね、と提案してからも男子と女子でこぜりあいをしたり、そのあとずっと楽しくおしゃべりしながら食べ続けるのを見ていたたまれない気持ちになって出てきたそうだ。

ごめんねと思いながら僕が戻っても子どもたちの様子はまるで変わる様子もないので、僕もどうでもよくなって彼らが買った僕の食事だけをカバンに突っ込んでそのまま出発しようと出てきた。
そして自転車に戻ろうとしている彼らを集めて「かすみさんが泣いていたよ」ということだけ伝えた。

彼らに自覚は生まれるだろうか。彼らに誰かの気持ちを考えることはできるだろうか。
わからない。わからないけれど、自分たちが旅をするということは当然で、誰かが彼らのことを思ってやることも当然で、ゴールにたどり着けることも当然なのだろうか。


次の休憩地点でもなにもない、誰も声をかすみさんにも僕にもかけてこないので「たぶん君たちに僕らは必要ないのだと思うから、見捨てることはしないけれどこれからは自分で旅をしていけばいい。」と言ってお金を渡した。
このことを彼らはどう受け止めるだろうか。

新居でお世話になったよっしぃがわざわざ子どもたちのために、差し入れを持ってきてくださったタイミングでこんなことになってしまったので申し訳ない。

さらに今日は朝からスペシャルゲストが登場するよ。とは伝えていたのだけれど、こんなタイミングでプロ経験もあるサラリーマンロードレーサー栗栖が登場。

事前にゴタゴタしているよということだけ伝えてあった。
彼には先頭の子のうしろについてもらって走り方指導。
去年に続いて今年もはるばる東京から仕事を終えてやってきてくれた。
おかげでどんどんペースも上がって朝の遅れを取り戻しつつあるようだ。
そのまま30kmほど栗栖にチームをひっぱってもらった。

そうしてやってきた静岡市。今年もなんとかたどり着けた。115km。


子どもたちはひとまず真っ暗になりながら走り終えたことに安堵したようだ。
水だけ持たせて話し合いをしようと今日キャンプすることにした河原のグラウンドに円になって座った。今日一日の報告をする。

かすみさんの涙に触れたのは3人か。彼らなりにどうしてかすみさんが泣いていたのかを考えたようだ。ひとりは、自分たちがいうことを聞かないことでかすみさんのストレスがどんどん増えていって泣いてしまったと語った。

もうひとりは、自分たちがいつまでもしょうもないことで男女でぶつかって約束を守れなかったことで嫌になったのではないかと語った。意見を出させてからかすみさんに話をさせた。


彼女は「あのときの君たちを見て、一緒にいたくない」と語った。
自分はいいけど、僕の思いを簡単に踏みにじって、しかもそれを自分の楽したい気持ちのせいではなく、僕が男はやせ我慢をするもんだっていうふうに理由をすげかえたずるさにも、そのことにおかしいと思いながらもいつもならはっきり言う女子が何も言わなかったことにも腹が立ったと言った。


僕は彼らに言った。
チームの誰かの思いを踏みにじったうえで楽しむ旅なんだったら、そんな旅はまっぴらごめんだ。僕は抜けていいから自分たちでやればいい。けど最後までは連れて行ってあげよう。君らはきっとゴールして自慢するだろう、ぼくは、わたしはすごい旅をしてきたんだって。けれどそこで僕の名前だけはだすな。そんな旅を西川昌徳がやってる旅だなんて言って欲しくないから。だからここからは自分たちで旅をしたらいい。


彼らは話し合うことにした。
それもずいぶん長かった。30分は話していたんじゃないか。途中からはもはやプレゼン練習みたいになっていて、僕たちおとなは彼らのこと、これまでのことを話しながら、彼らが準備するのを待っていた。


そうして出直してきて、最初に「まさやんやかすみんを傷つけてしまってすいませんでした」と言った、そしてそこから僕とかすみさんにも家族としてまた旅をして欲しいと言った。その彼らの言葉を聞いていた栗栖が彼らに言った。


僕は短いあいだだったけれど今日は君たちの家族だと思ってきたよ。
だから言わせてもらう。頭で考えて出てきた言葉なんかよりも、素直にごめんなさいと心から伝えることが何よりも大切だよ。今の君たちの言葉からはほんとに謝りたいと思っている気持ちは伝わってこなかった。と。


そうしたら今度はひとりひとりが自分の言葉で語りはじめた。
自分が自分の心で感じていた言葉を話していた。
そこにはしっかりと思いが入っていたと思う。だから僕は受け入れた。
それらの言葉を。

そしてもう一度はじめようと伝えた。
握手をしてミーティングはお開きとなった。
みんなでごはんを買いにいって、半額シールにキャッキャ言いながら買い物をして、グラウンドで今度は話すためではなくて一緒に食べるために座って、一緒におそいおそい晩御飯をたべた。

答えなんてわからない。こうして外にも発信するから、発信しているそば友人からお叱りのメッセージが入ったり、僕らを受け入れてくださった方からすまん僕らのところに来たからかも、なんて連絡が入ってきたりする。すげーな現代のチカラ。けれども僕らは目の前にいる人を信じる。2mもないこの距離感でつながっている彼らを信じる。

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