見出し画像

【最終回】たったの3週間で人生なんて変わらない。けれども種を預けることだったらできる。自分が信じたい世界の種。それは希望だ。

Ride a Life Journey 2021 DAY21
神戸市須磨区→姫路市(まさやん自宅にてゴール)
走った距離:65.9km
この旅で走った総走行距離:1044km

ぶつかったり、叱ったりと、いろいろありながらも無事に姫路まで走りきって旅を終えたというお話でございます。終わった瞬間みんな気が抜けました。感動というより、ほんとにみんなしてホッとしたんだと思います。メンバーひなたはゴールした瞬間にチカラが抜けて、喜ぶことすら忘れてボーッとしてしまっておりました。

これがゴールというもののリアル。ほんとに。けれど大きく喜ばなくても、ガッツポーズしなくても、僕らのなかにある気持ちの部分は伝わり合っているんです。それはこうしてブログにまとめながら思うこと。


最終日の朝は5時起きにした彼ら。少しでも早く僕の家にたどり着くという目標を立てた。理由はいたってシンプルだ。今晩お祝いとしてピザパーティーとでっかいスクリーンでエヴァンゲリオンの映画を見ることを約束したので、それしかないと思う。間違いない。100%だ。笑

さあ最終日。僕らも気が抜けないようにしないと。だいたい事故は緊張が抜けたときが1番やばい。

朝のスタートダッシュはよかった。彼らはいつもだけれど、先頭に来るとそれぞれ意識が変わる。そのときはいいんだ。失敗しても、ペースがうまく安定しなくても、意識を持って走っているから。けれども後ろについた途端に、緊張感も意識も抜けてしまうのがこのチームのずっと課題だったなぁ。なんて振り返りながら思います。

それぞれが先頭を走ったあと、ほのかにも先頭の景色を見せてあげたいとほのかを先頭に立たせた。いままでは夜間走行や市街地ルートなどでは僕が先頭で最後尾のほのかとサンドイッチで走っていたけれど、ほのかが先頭を走っていた区間はそれほど多くない。最後はみんなでまっさらな景色を見て走ろう!という感じで、「ほのか!先頭!」と呼びかけた。

ほのかは最高の感じで引っ張ってくれている。さあこのまま気持ちよくいくぞ!という僕の期待はあっさりと打ち砕かれた。さっきまでめちゃんこ意識を持って走っていたメンバー全員がただのついていくモードになって、急にダレた。

ほのかの声かけにも応えないし、前もろくに見ていない。
僕の感情がこのときばかりは高ぶって叫んだ。(あとから書いていても思うのですがこういうときはほんと自然に湧き上がってくる感情なのでしょうがないと思っているし必要だとも思います。)

「おまえらな!最後まで誰かについていく旅なんか!自分らの旅じゃなかったんか!?最終日までこうして説教されて旅を終わるんか!?」

そうしてまだほのかの走る分は残っていたけれど、ほのかにごめんと告げて先頭を交代させた。「君への景色はあんまり長く見せられんかったよ。」そう伝えたときに、まっすぐに僕を見つめてうなずいてくれた。ありがとう。分かってくれて。ほんまにね、スタッフとしてお願いしているけれど、こういうところが共有できる子やないと僕は安心して託すことができないのです。帆花は年齢も経験もまだまだやけれど、こういうところをしっかり受け取ってくれるからほんとに頼もしいのです。

先頭を彼らに戻してから、メンバーの集中力もスピードも一気にあがった。メンバー同士の声かけもしっかりしてる。姫路にたどり着くのは2時くらいかなぁと、残りの距離を見ながら思っていたけれど、なんと午前中のうちには姫路市に入ってしまった。

まだ旅に出る前。練習を兼ねた、サイクリングで向かった姫路城が見えたときに、ひとつ自分が背負ってきた感情を手放したような気がした。けれども最後まで気は抜くわけにはいかない。とまた気持ちを締め直す。


子どもたちも姫路城を離れて一気に集中力が無くなった、疲れた素振りを見せて、自分の意識で動けなくなってきた。しょうがないよなぁほんと。そういうの分かるよ。僕もね、これまで何度も半年以上の旅をやってきたけれどもいつも同じだった。最後って気が抜けるんよね。そこが競技としての自転車とは違うとこやなぁと思う。

彼らに最後までがんばるぞと声かけしつつ僕の家に向かってみんなで走る。最後の5kmはカウントダウン。あと4km!3km!2km!と来た。

最後の最後で、もうひとトラブルを見せてくれる子どもたち。赤信号で止まった先頭ふたりに、続いていた◯◯が止まりきれずに突っ込んだ。バッグが外れてしまっている。どうやらフックのところが壊れてしまったようだ。

「ごめん声かけが間に合わなかった」と言うほのかに、これでいいと声をかける。前のメンバーに突っ込んだ◯◯はどうしていいのかと後ずさり。じーっと前で作業するふたりを見ている。そのあとひと段落したところで声をかけた。

「モノが壊れるのは仕方がないこと。けれどぶつかったあとの君の動きは間違ってる。自分がやってしまったあとが大事。受け入れて、そして自分ができることをする。それは旅が終わってからでも一緒だよ。さあ気持ちを切り替えて最後走るぞ。」

メンバーで声をかけあって、背中をさすって、それから走りはじめた。うん、それでいいよ。

僕の地元に入った。自分たちが、旅のまえに走りまわっていた景色が戻ってきた。もうここから僕の家まではきみたちのものだ。最後だけ仲良く3人で走れよー。そうとだけ声をかけた。


家のまえではオカンが待ってくれていた。自分たちの家族ではなく、うちのオカン。なんだかいいなと思った。これまでは感動のシーンを家族に迎えてもらいたいと思ってきた。けれどいつだって旅というのは、自分で気持ちの区切りを僕はつけてきた。ひとりだったから。ずっと。

そうして静かな気持ちで家に帰りついたから。彼らにはまだ旅の片付けやお世話になった自転車などの洗車が待っている。そうして旅をおさめて、それぞれが育った家に戻っていく。そのことの大事さが少し自分にも見えるようになってきた。


とても地味だ。けれどもそれはメンバーの心に刻まれるなにかになるものだと思から。ほんとにこうして毎回旅をして僕が教わってる。子どもたちの成長は彼らの財産。旅で気づかせてもらうのは僕の財産。

そんな仕事をさせてもらえること、大切な命を少しのあいだだけ預けていただけること、それは責任だ。大きな大きな責任で、それと同時に大きな可能性だと思う。

たったの3週間で人生なんて変わらない。けれども種を預けることだったらできる。自分が信じたい世界の種。それは希望だ。芽吹く芽吹かないがゴールではない、僕が勝手に希望として持ち続けることのできる希望。

僕の語ることなんて大したことないんです。それを語ってくれるのは人の生きる姿なのです。僕がこうしてレポートを書くのは、親子での連絡のやりとりをしないと約束してくださった親御さんに、彼らが子どもたちと一緒にいられない間、子どもたちの人生を思い描いていただくためのレポート。

そんなレポートも最終日の片付けを残してもう終わりです。
夜はみんなで買った大きな6枚のピザとポテトや唐揚げと、ジュースを持って、コインランドリーで洗って乾かした大量の洗濯物。僕の家族みんなと一緒に大きなピザを囲んでのパーティ。ゴール後に神戸から電車でかけつけてくださった叶さんが買ってくれたお祝いのケーキとともに。

そして最後は彼らがずーっと楽しみにしていた大きなスクリーンでの映画鑑賞。なにの映画かは秘密にしておいてほしいそうなので秘密にします。ひとりは寝落ちし、めちゃんこ楽しみにしていたふたりはばっちり最後まで見終えてそのあとすぐ眠りに落ちていました。

ミーティングは無し。振り返るのは明日の最終日でいい。みんなほんとにありがとう。

画像1

画像2

画像3

画像4

画像5

画像6

画像7

画像8

画像9

画像10

画像11

画像12

画像13

画像14

画像15

画像16

画像17

画像18

画像19

画像20

画像21

画像22

画像23

画像24

画像25


最終日、家族と再会する前の最後のミーティングです。このとき、彼らは僕の感覚をすでに超えていっているなと思いました。この瞬間が生まれたことを誇りに思います。

ここから先は

0字
月に4回程度配信。お金を払うのも、タダで読むのも自由です。

自分が自分でいられること。

¥500 / 月 初月無料

旅の日々で自分の心に浮かぶ思いや気づきを読み物として。僕の旅の生き方のなかで、読んでくださる方々の心に心地よい余白が生まれればいいなという…

自分の人生を実験台にして生きているので、いただいたお金はさらなる人生の実験に使わせていただきます!