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歌舞伎座再開への思い

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梅雨明けの東京。

8月花形歌舞伎 ついに昨日初日を迎えました。

3月の歌舞伎は幕が開かなかったので、2月以来。5ヶ月ぶり。

本当に待ちに待っていた瞬間であり、感無量のひとこと。


実際に観劇に行って感じた事。

エントランスを入ると香ってくる檜の香り。

歌舞伎座で一番好きなのはもしかしてこれかもしれない。

あの香りにより一気に私の中に歌舞伎が戻ってきた感じがして

涙が出そうになりました。

ですが、実際の劇場内は以前とは違っていました。

体温チェック、アルコール消毒はもちろん、

いつものルートでの売店アクセスは不可。

イヤホンガイド、オペラグラス、ブランケットの貸し出しもなし。

幕間に好きなものを食べながらその日の演目に思いを馳せるのも

楽しみだったけれども、今は飲食も不可。

徹底した感染症対策をしている松竹の方には頭が下がるとともに、

仕事でも参考になりそうな点が多々あり(笑)。

ここまでしないとエンターテイメントである歌舞伎は見られないのか、

という覚悟。


私は3部「吉野山」を見ました。

附け打ちの音がしても、いつもはワイワイガヤガヤしている客席ですが、

観客も半分、おしゃべりも控え目なのでシーンとしています。緊張感が高まる。

その中、猿之助さんから案内が突如入る。

声を聞いただけで泣けてきた・・・そして覚悟の思いと客席の人々への思いが

ひしひし伝わる。

非常に真摯な声にさらに身が引き締まる。

声質・滑舌の良さはさすが。


いよいよ幕が開きました。

静御前 七之助丈は圧巻の美しさ。美しさに息を飲む。

半分の客席と思えない大きな大きな拍手に感動。

所作の美しさにあらためて惚れ惚れ。

そしてついに佐藤忠信 猿之助丈がすっぽんから登場。

さらなる万雷の拍手が劇場を包んでいました。

きっと安心してもらえたのでは、と勝手に思いました。

のびやかな踊りと清々しい表情はさすがです。

まったくブランクを感じさせないお二人の踊り。

猿之助丈のしなやかさにあらためて惚れ直す。

やはり歌舞伎役者は、舞台の上でこそ最大に輝くのだなとあらためて思いました。

踊っている時こそ最大に美しい。惚れ惚れする。

猿弥さんも相変わらず場を和ませてくれました。

七之助丈・猿之助丈の二人の踊りに時間を忘れてしまう。

あっという間の1時間。

最後、狐に姿を変えた忠信猿之助丈は、拍手万雷の中、

さっそうと花道を跡にし幕が下りました。

心底幸せな1時間でした・・・・。


当たり前に見てきた歌舞伎座での観劇がこんなに貴重だったとは・・・。

あらためて、もうコロナの前には戻れないのだなと実感。

清元、竹本連中の方や附け打ちの方は特製マスクを着けて舞台に上がっている。

演じている間も、すべてのドアが開け放たれ空気を入れ替えている。

スタッフの方も声を出さずに文字で案内を行なっている。

劇場を出る時も後ろの方から順番に密を回避して。

各部の間も劇場消毒のために十分な時間が取られていて、完全入れ替え。

今回、恐らく多くの方が、劇場に足を運びたくても諦めたことでしょう。

その思いも胸に、劇場に足を運ぶ観客はやはり万全の体制で

臨む必要があるでしょう。

まったく望んでいない世界になってしまった以上、

しばらくは全員がこの責任を背負わなくてはならない。

寂しい世界になってしまったけど、あらためて、

何が好きなのか、何を大事にしたいのか、気付かされた期間だったと思いました。


1日、2日、3日・・・の積み重ね。

1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月・・・の積み重ね。

ひとり・ふたり・3人・・・の積み重ね。

無事に歌舞伎座の幕が毎日上がることを祈りながら日々過ごしたいと思います。


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