「ウェルビーイング」について話す前に知ってもらいたい、ハーバード大学を卒業してNGOで働く理由
こんにちは、Earth Company共同代表の濱川知宏です。
現在、私が運営するEarth Companyでは、マンスリーサポーター100人募集キャンペーンを行っていますが、その企画として、5月19日21時から私の大学院時代からの友人で予防医学博士の石川善樹とFacebookライブで対談を行うことになりました。
今日は自己紹介も兼ねて、私が国際開発の道を歩んだ背景や、石川善樹との対談に向けて一言シェアしたいと思います。
(本記事の内容は2018年3月に公開した「とますか日記」をもとに、今回のオンラインイベントに向けて一部編集・加筆しています。)
「ハーバードを卒業して、どうしてNGOで働いているんですか」
今回対談する石川善樹とは、ハーバード大学院時代からの友人ですが、私の経歴から、時折こんな質問を受けます。
自分の中では、自分のやりたいことを追い求めた結果、たどり着いた道なので全く不自然な思いはありません。
もちろん、大学時代の多くの友人がそうしたように、一流の大企業や国際機関で働く選択肢もありました。大学3年生の夏には、外資系投資銀行の東京オフィスでのインターンシップに参加したこともあります。
当時はリーマンショックが起こる前、潤い過ぎていた資本主義ど真ん中。東京とボストン往復航空券はもちろん、六本木の高級マンションにタダで住ませてもらい、その上月収55万円というあり得ない待遇は、それはもう、弱冠21歳の若者には非常に魅力的な誘惑でした。
しかし一方で、東京証券市場が開く前の朝7時、通勤途中に六本木交差点を渡る時、大学入学前に訪れたフィジー島の光景が頭をよぎると、「お金持ちをもっとお金持ちにするシステム」に浸り初めていた自分に罪悪感も感じてしまうのでした…。
フィジー島で知った「物質的には何もなくても、精神的には豊か」な生活
私がフィジー島を訪れたのは、18才のとき。コミュニティサービスが趣旨のホームステイでした。
親の転勤で小学生の時に渡米し、ボストン郊外の公立中学、私立の寮生高校を卒業し、いわゆる物静かな優等生タイプだった私は、フィジー島で初めて「発展途上国の生活」を目の当たりにしました。
先進国の生活しか知らない私に、その経験は衝撃でした。
電気はもちろん、物質的には何にもないのに、人間として優しいし、温かいし、楽しそう。
それに比べて、東京やニューヨークに住む「世界最先端」な人たちは、毎日何かに向かってがむしゃらに働き、何かに追われては鬱病に悩まされ、人生を楽しんでいるようには見えませんでした。
そんな物質的な豊かさと精神的な豊かさの反比例に、圧倒され、魅了されました。
人間は元々こんなに楽しく生きれるのに、経済的な発展を遂げると幸福度が退化するのは何故だろう。
そんな疑問が頭から離れなくなりました。これこそが、私の原体験であり、すべての始まりとなりました。
直感的に「エリートの道」を拒んで、フリーターに。そしてチベットの山奥で出会った、「本当にやりたいこと」
フィジー島での経験はずっと心に残り、大学卒業後の就職先を選ぶときも高待遇の外資系金融機関で働くことを直感的に拒んで、内定をお断りしました。
他に就職先が決まっていた訳でもないのに…。
エリートの道は拒んだものの、何がしたいかわからなかった私は、その後、卒業後、短期間の仕事をしたり、英語を教えたりしながら食いつなぎました。
結局、本当に自分が求める仕事に巡り会えたのは、卒業してから2年後。チベット高原で、教育、保健、文化、環境における課題解決に取り組むアメリカのNGOの仕事に出会ったときでした。
優秀で意識の高いチベット人の同僚と、チベットが抱える課題を解決するために奮闘する日々は非常に充実していました。標高4000mの「地球の果て」のような村に、車と馬を2日間乗り継いで、求められる支援を届ける感覚は特別でした。
給与はインターン時代の7分の1でしたが、これこそ、自分がやりたかった仕事だ、と確信しました。
「何を得たいか」「何がしたいか」ではなく、「どうありたいか」から考える
Earth Companyがバリ島で行う研修で、いつも参加者に紹介している話があります。
それは私がバリ島で出会った、一度ビジネスで大成功した後、アジア金融危機で全てを失った起業家から教えてもらった、大切なものを大事にする生き方を選ぶ「Be-Do-Have」のコンセプトです。
資本主義の現代社会では、以下のように「Do-Have-Be」の考え方をする人がほとんどです。
Do:たくさん勉強して、我慢して働いて、立派な学歴・職歴を積めば
Have :たくさんお金を手に入れることができ、家庭を築き、マイホームを買い、
Be:幸せ、豊かになれる
しかし、「Have」のための「Do」の状態、また「Have」を成し遂げた状態すら、必ずしも、本当に自分を幸せにする「Be」の状態ではないかもしれません。
私が教えてもらった「Be-Do-Have」の考え方のポイントは、順番を逆転し、自分が「ありたい自分」であること、「Be」を最初に持ってきて、そのために何をするのがいいのか、を考えるというものです。
思えば17歳の私がフィジー島で見て、そして惹かれたのも、Have(物資的豊かさ)の結果生まれるBe(ハピネス)ではなく、Haveとは無関係なBe(人間的な温かみ)でした。
そしてこの考え方で、チベットで経験した「ありたい自分であること(Be)」を大切にした結果、「Do」は「働く団体がもたらすインパクトが、肌で感じられるソーシャルベンチャーを起業すること」になり、今こうしてバリ島を拠点に社会起業家支援の団体を立ち上げ、今に至るわけです。
「人」は、英語で「human being」と言います。「human doing」ではありません。単純な話なのですが、このBe-Do-Haveの考え方に、生き方の大きなヒントが隠されていると、私は感じています。
石川善樹と対談で話したいこと
さて、今回対談する石川善樹とは、14年前、彼がハーバード公衆衛生大学院、私がハーバードケネディスクール(公共政策大学院)在学中に出会いました。
同じハーバード大学院でも、公衆衛生のキャンパスはボストン市内にあり、ケネディスクールは約30分離れているケンブリッジに位置するので、ちょっと距離はあります。
ただ、寂しがりや(?)の彼はケンブリッジ側の日本人コミュニティによく出没していた記憶があります笑 お互い80年生まれで、いわゆる「松坂世代」という共通点もあったりします。
Well-beingの研究で著名な彼は「Beingはみんなで、Doingは一人で」ということを提唱していますが、実は先月公益財団法人Well-being for Planet Earth(旧LIFULL財団)の仲間たちと一緒にバリ島を訪れて、異国で「みんなでbeing」を楽しむ計画がありました。
残念ながら、コロナでその計画は延期となってしまいましたが。。。
今回の対談では、先月バリ島でゆるく話したかったことでもある、上述の「Be-Do-Have」の考え方や、バリ人がもっとも大事にしている思想「トリヒタカラナ(神々との調和、自然との調和、人間との調和)」を始め、beforeコロナよりももっと豊かな「ニューノーマル時代」に向けてのヒントなどについて語っていきたいと思います!
多くの方のご視聴、お待ちしています!
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