#071 なぜ投資のプロはサルに負けるのか(藤沢 和希)-第二章②

(本記事は2021/4/30に投稿されたものとなります())#069に引き続き、表題書籍

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の解説の続きとなる。

第二章のうち、本日は4~6について、解説したいと思う

・1.投資と投機とギャンブル

・2.リスクとリターンの意味するところ

・3.丁半博打のリスク特性

・4.無慈悲な収奪システム「競馬」  ←本日

・5.最強のビジネスモデル「宝くじ」  ←本日

・6.株式投資のリスクとリターン  ←本日

・7.「ギャンブル」ではロマンを売る

・8.リスク・プレミアムという概念

・9.株式市場全体のリスクプレミアムとは

・10.さあ、投資をしよう!

■4.無慈悲な収奪システム「競馬」

まずはギャンブルの代表として、「競馬」について解説している。

日本の競馬の期待リターンはマイナス25%と非常に悪い(ちなみに、丁半博打の期待リターンはマイナス5%と競馬に比べるとまだ可愛い)
 ・つまり、1万円かけると、平均7,500円しか返ってこない計算
・マイナス25%がどの程度か
 ・伝説の投資家ウォーレン・バフェットの過去40年間の株式投資の年平均リターンがプラス20%
 ・毎年20%を複利で回すと強烈
 ・元手を100万円ではじめても、毎年20%増やせたら20年で40倍の4,000万円になっている
 ・競馬の負のリターンは、しかも年ではなくたったの3分間のレースでマイナス25%という強烈な負のリターンを実現
とのこと。いかに競馬の分が悪いのかが分かる。

さらに追い打ちをかけるように、「胴元」の立場からも分析している

・JRAはどの馬が勝っても、集まった金額の75%が支払われるようにオッズを決めている
・オッズの仕組みは以下
 ・仮に3頭のみ出馬する、単勝のみのレースとした場合
 ・1番の馬に25億円、2番の馬に5億円、3番の馬に70億円集まったとする(合計100億円)
 ・JRAは75%(75億円)を還元するので 、以下となる
  ・1番の馬は75億円÷25億円=3倍のオッズ
  ・2番の馬は75億円÷5億円=15倍のオッズ
  ・3倍の馬は75億円÷70億円=1.1倍のオッズ
 ・JRAは集めた金額の25%を毎回無リスクで、貧乏で困っている競馬ファンから収奪できる
 ・さらに、どの馬にいくらかけられているかを見てからオッズを決める「後だしジャンケン」方式なので、絶対に損することがない、ものすごくおいしいビジネス
とのこと。なるほど、これまでなんとなしにしかオッズをみていなかったが、こういったロジックが有ったのだと知ることが出来た。

更に、金額のボリューム感について、以下のように表現している

・別の角度から見たシミュレーション
 ・100人の競馬愛好家が、各自100万円をもって、毎回のレースに全ての所持金をかけるとした場合
 ・同日は12レースある
 ・第1レースに賭けられたお金は@100万円x100人=1億円
 ・JRAは75%を配当するので、第1レース終了後の全ての人の所持金は7,500万円
 ・第2レースに賭けられたお金の合計は7,500万円
 ・JRAは75%を配当するので、第2レース終了後の全ての人の所持金は7,500万円 x 75% = 5,625万円
 ・同じことを第12レースまで繰り返すといくら残るか
  ・たったの317万円
 ・1億円あった元本の97%(9,700万円)を1日でJRAに収奪されてしまった
とのこと。本当にうまくできたビジネスモデルである。

知っているか、知らないかだけで大きな違いがある。以下のように述べている

共産主義の国では、頭のいい人は権力者の脅威になるので、色々難癖をつけて皆の前で銃殺をする
資本主義の国では、頭が悪いことは大変重い罪で、その罪を補うために「税金」を払う(=搾取される)必要がある
ギャンブルは「国家が愚か者に課した税金」と言われる
とのこと。「還元率」をきちんと把握していないと、このようなことも考えられずに、搾取されてしまうのだ。

■5.最強のビジネスモデル「宝くじ」

次にギャンブルと言えるかわからないが、似たようなものとして「宝くじ」を挙げている。

以下のように(胴元にとって)素晴らしいビジネスモデルだとしている。

宝くじは最強のビジネスモデル
 ・胴元にとって最強のビジネスモデル
 ・買う人にとってはとんでもないぼったくり
・宝くじは設備投資がほぼゼロ
 ・競馬は競馬場や調教師、ジョッキーなどコストがかかる
宝くじの還元率は40%~50%(競馬は75%なのでそれよりも少ない)
 ・買う方からすれば、半分も返ってこない
宝くじの運営者は無リスクで儲けることができる
 ・売りさばく金額に応じて、還元率の分だけ配当するように当選くじが決まる
 ・胴元は絶対に損をしない仕組み
 ・全く売れなければ別だが、有名タレントを使ってテレビCMを打ちまくる
 ・宝くじは超ローリスク・ハイリターンすばらしいビジネスモデル(胴元にとって
とのこと。確かに宝くじを「ビジネス」として見たことがなかったが、ビジネスとしてみると、確かにおいしい。

ではこれだけ胴元が得をして、買う人が損をするのに、買う人が後を絶たないのか。以下説明している:

・なぜこのような商品を購入するのか
 ・行動ファイナンスという、心理学をファイナンスに応用する経済学の一つ
・人間は
 ・非常にまれな確率とてつもない利益が飛び込んでくるが、ほとんどの確率でわずかな損をする ケースと
 ・ほとんどの確率でわずかな利益を得ることができるが、非常に稀な確率でとんでもない損失を被る
・を比べた時、期待リターンが同じでも、圧倒的に前者を好む
 ・例えば
  ・0.1%の確率で100万円が貰えるけど、99.9%の確率で1,000円没収 というくじと
  ・99.9%の確率で1,100円もらえるけど、0.1%の確率で100万円没収 というくじ
・を比べた時、恐らく前者を選ぶ人が多い
たった1,100円の為に100万円失うようなリスクは取りたくないと思うはず
・しかし、期待値では後者の方が少しだけ得
・これは「宝くじ効果」(Lottery Efferct)と呼ばれ、ぼったくり保険商品の開発で積極的に応用されている(生命保険ほとんどの加入者がいくらかの保険料を損する。その代わり遺族は莫大な保険金を受け取れる
とのこと。これも、以前話に挙がった、「プロスペクト理論」と似ている

画像1

要は「利益により得られる価値」より「損失により失う価値」「多く見積もってしまう」というカーネマンとトベルスキーが提唱した行動経済学である。

期待値をきちんと計算すれば、合理的にはどちらも「同じ」であるはずなのだが、「損をしたくない」という人間心理に基づいた人の思考特性である。

だから、ぼったくりの保険商品や宝くじに手を出してしまうのだ、と理解ができた。

筆者曰く、ギャンブルに共通して言えることは

丁半博打・競馬・宝くじに共通することは、投資の場合「期待リターンがマイナスのものには絶対に手を出してはいけない」

ことだ、と述べている。

私も年金付き保険を目減りすると分かりながら、途中解約をした。本当にリターンがマイナスなんて、投資商品として「クソ」な商品であった(言葉が汚くてごめんなさい)。

しかし、それを契約前に見破れなかった、自身のファイナンシャル・リテラシーのなさが招いた結果であった。

もう二度と、年金付き保険などは買わない(であれば、自分で運用して老後に備える)。保険は掛け捨てにする。

■6.株式投資のリスクとリターン

これまでギャンブルの話であったが、ここから投資の話に入る

投資とは「期待リターンとリスクの形を考えて、賭けるかどうか、賭ける場合いくら賭けるか」を決定するプロセスのこと
・例)「株式市場全体」に1年間投資した場合、実現リターンがどのようになるか(インデックス・ファンドを購入することで誰でも簡単に購入できる)

期待値は5%、標準偏差は20%とする

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・株式市場に1年放置すると、平均的には資産が5%増える
期待リターン±標準偏差の範囲約3分の2の確率で、実現リターンが収まる
 ・つまりマイナス15%からプラス25%の範囲約66%の確率でリターンが実現する
 ・逆に15%以上の損失を出す確率は約6分の125%以上の利益を出す確率も約6分の1
 ・6分の1と言えばサイコロを振って1が出るのと同じ確率で、投資した財産が25%増えたり、15%以上減ったりするのは、大変胃に悪い

とのこと。上記は簡素化してはいるものの、ほぼ実情を表しているとのこと。

なお、

実現リターンの「ブレ」はファイナンス用語で「ボラティリティ」という
 ・「ボラティリティ」のことを「リスク」ということもある

とのこと。これはファイナンスの授業で勉強した。確かベータ(β)というやつだったと記憶している

金融商品のベータとは、市場全体の価格変動と比較したときの金融商品の価格感応度を意味します。ベータが大きくなると、リターンも大きくなりますが、投資リスクも高くなります。ベータが1より小さい場合、より大きい市場よりも変動幅が小さくなり、1以上の場合は変動幅が大きいことを示します。」(https://www.ig.com/jp/glossary-trading-terms/beta-definition)

繰り返しとはなるが、単に「振れ幅が大きい」と言っているだけで、「得することも、損することもある」ということだ。

また、期待リターンについて、以下のように述べている

株式の期待リターンは安全資産である国債より3%~6%高い
 ・この「国債のリターンより高い部分」を「株式リスク・プレミアム」と呼ぶ

・あるプロの投資家が「リスクを考慮してもこれくらいの株価なら大丈夫だろうから買いたい」
・別のプロの投資家が「リスクを考慮すると割に合わないから売りたい」
 ・全く別のことを考えて、提示する価格が一致した時に、市場で取引が成立し株価が決まる
 ・結局株価は、プロ同士が壮絶な競争をして、割安か割高かわからないぎりぎりのちょうどいいポイントでいつも決まっている
とのこと。

株価リスク・プレミアムについて、分かり易い図が有ったので共有

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国債に比べて、株式の方がボラティリティ(リスク)が高いから、それだけリターンも期待するよ、ということだ。

これらを総合して、株式市場における初心者の位置づけについて述べている

・よく株式市場は多数のプロが参加しているから、初心者では勝てないと言うがそれは大きな間違い
 ・プロ同士が壮絶な競争をしているから、リスクに対して適切なリスク・プレミアムが乗る
 ・ちょうどいい期待リターンになるところに、株価が落ち着く
 ・だからこそ、素人が安心して参加できるし、プロと素人の成績もほとんど変わらなくなる

とのこと。これはとても興味深い。

一見、「プロが多い」と素人は「お呼びでない」と思いがちだが、「プロがしのぎを削って」いるからこそ、株価が安定していて、素人も安心して参加できる、というのは新たな視点であった。

■まとめ

・日本の競馬の期待リターンはマイナス25%と非常に悪い
・伝説の投資家ウォーレン・バフェットの過去40年間の株式投資の年平均リターンがプラス20%
・JRAはどの馬にいくらかけられているかを見てからオッズを決める「後だしジャンケン」方式なので、絶対に損することがない
宝くじは最強のビジネスモデル
設備投資が不要で、還元率は競馬より低く(40~50%)胴元は絶対に損をしない仕組み
・それでも人々が買うのは、行動ファイナンスという、心理学をファイナンスに応用する経済学で説明が出来、「宝くじ効果」(Lottery Efferct)と呼ばれる
・株式投資における実現リターンの「ブレ」を「ボラティリティ」と呼び、リスクとほぼ同等の意味で使われる
・株式投資において国債よりも高いリスクとリターンを求めることを「株式リスク・プレミアム」と呼ぶ
・株式市場は、プロ同士が壮絶な競争をしているからこそ、株価がちょうどいい期待リターンになるように落ち着いている
・その為、筆者曰く素人が参加してもプロと成績もほとんど変わりがない、とのこと

続きは次回に!

あすなろ(earth76)式:https://earth76.com/

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