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 2016年に国書刊行会より、後藤明生初の作品集「後藤明生コレクション」(以下『コレクション』)全5巻が刊行されました。父の全ての作品が収められたわけではありませんが、父と縁のある編集委員の皆様が検討を重ねて選んだ作品をカテゴリー分けし、各巻にまとめていただいた事で作品が新鮮によみがえり、新旧多くの読者に歓迎された事は喜ばしい限りです。多くの方のお力を得て刊行に至ったコレクションですが、その原動力となった粘り強い友情について、ぜひ書いておかなければと思います。
 記憶が曖昧ですが、おそらく2014年頃?の冬、日本近世文学研究者の高田衛様からご連絡いただき、立川のホテルのロビーでお会いすることになりました。高田様と父の関係について私は全く知りませんでしたが、お会いする前に母から、高田様が父の死後間もなくの頃より父の全集を世に出すべく出版社に働きかけ続けて下さっていた事を聞き大変驚きました。何度断られても『私はあきらめません』と母に言ってくださっていたそうです。
 立川のホテルのロビーには、高田様と、私と同じく高田様に呼ばれたと思われる国書刊行会の編集部の編集長が来ておられました。その時点では、『コレクション』の出版は確定していなかったのです。出版の可能性はなくもない、という空気でした。編集長を説得する傍ら、高田様は私に『お父さんには本当に世話になった。自分に仕事がない時に助けてくれた』とお話しになりました。
 後日、編集長より刊行の正式決定のお知らせをいただき、そこからは見事な段取りの良さで出版の運びとなりました。高田様はもちろん大変喜んでくださり、お会いして以来やり取りしている賀状にも、いつも一筆父について書いてくださいます。タイトル上の写真は、今年いただいた賀状の文面です。

 『コレクション』を見るたび、ここに友あり、と思います。


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