ポロシャツと外套
晩年の父は、遅ればせながらファッションに目覚め、大阪の船場にある店で頻繁にスーツを新調していたそうです。遺品整理の時、積み上げられたスーツ箱の数に驚きました。誰かに譲ろうかと言っても、162センチと小柄な上、独特なラインを描く背骨に合わせたスーツを着られる人などそうそういるはずもなく。果たしてあのスーツはどう始末したのだったか?
しかし、それ以前の父の服装は至って簡潔で、家ではパジャマ、外出時はポロシャツ、仕事ならその上に背広をはおり、冬は外套。それぞれの年代でほぼ同じようなスタイルである事が小気味良いほどです。
ポロシャツはタバコを入れる胸ポケットが必須でした。私が就職したての頃、奮発してブランド品のポロシャツをプレゼントしたのですが不覚にもポケットがないものを選んでしまい、着てくれませんでした。しかし、大病を経てタバコをやめた後はラコステのポロシャツがお気に召したようで何色も揃えるようになりました。そう、ラコステはポケットがありません。タバコは吸わないから要らないよ、ってな事なんですが、このヤロー。
そして外套、つまりコートですが、父が愛用していたのはまさに外套と呼ぶにふさわしい佇まいでした。ゴーゴリしかり、『挟み撃ち』しかり、父にとっての外套は特別な存在意義があったのだろうなと思います。物にこだわりを見せる人ではなかったけれど、外套だけは別だったのでしょう。
ところで珍しい写真を見つけました。タイトル部分の私と写っているものです。よく見ると父は、ヒッピーやフォークロアを思わせる刺繍付きのシャツを着ているのです。一緒に写っているにもかかわらず、この服を着ていた父を全く憶えていません。明らかに父らしくないこの服の由縁は?もしやどこかで書き残しているかもしれません。見つけた方はご一報願います。
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