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【戦評】6回2死満塁フルカウント、選択肢はストレートしかなかった~7/31●楽天4-5ロッテ

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則本に土をつけた打率1割の8番打者

本戦の決勝打は、打率.154に低迷中の相手女房役によるセンター返しだった。

楽天のエースの高め速球が甘く入ったところを8番・田村に威勢良く叩かれた。鋭いゴイナーがショート茂木の右、2塁ベースの左を切り裂き、悠々2者が生還する。(E2-4M)

田村には1打席目も真っすぐでタイムリーにされて2安打3打点。試合後、苦しみながらも6回2失点で今季初勝利を記録した石川とともに登壇する活躍を許した。

6回は則本にとって苦しいイニングになってしまった。

先頭からの連続四死球でいきなりの無死2,1塁。
この日、則本が投じたボール球のじつに33.9%が6回に記録されるほど制球が狂い、3安打3四死球を集中された。

その後の1死3,2塁、5番・井上に左犠飛を打たれて2-2、試合は振り出しに戻る。なおも後続につながれ、田村を打席に迎えたのは6回2死満塁だった。

その7球勝負はフルカウントまでもつれる息詰まる対決に。
しかしカウントは1-0、1-1、2-1、2-2、3-2と終始ボール先行の後手後手を余儀なくされた。

使用した球種も7球中、結果球を含む5球がじつにストレート。
なぜ則本はストレートを多投したのか。

2試合連続の二桁被安打を許した直近2試合、ストレートの被打率は.407。
本戦も終わってみれば平均147.3キロと球速は出ていたものの、真っすぐ44球で空振りゼロ。当該7打数4安打と、この日浴びた被安打の大半を速球で記録していた。

そんなストレートを、打者が最も対応しやすい打撃の基本球を、なぜ投げたのか。

そこには「投げざるをえない状況」があった。

◎両軍のスタメン

楽天=1番・小深田(二)、2番・鈴木(三)、3番・茂木(遊)、4番・浅村(指)、5番・島内(左)、6番・ブラッシュ(右)、7番・内田(一)、8番・太田(捕)、9番・辰己(中)、先発・則本(右投)

ロッテ=1番・福田秀(中)、2番・岡(左)、3番・マーティン(右)、4番・安田(三)、5番・井上(一)、6番・中村(二)、7番・レアード(指)、8番・田村(捕)、9番・藤岡(遊)、先発・石川(右投)

◎試合展開

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あらゆる球種が機能不全に

球数が100球に迫った6回、あらゆる球種が機能不全に陥った。

本戦で最も有効だったのはカットボールだ。
平均138.8キロは5回まで23球を投げながら、以下の好戦果をあげていた。

空振り 7球 (空三振2含む)
見逃しストライク 2球
ストライク寄与ファウル 4球
粘られファウル 1球
ボール 3球
凡打 5球
安打 1球

左打者には内角へきっちり制球し、右打者からは面白いように空振りを奪取。その面々は岡、井上、レアード、中村、あっさり空振りするシーンが続出するほど。

しかし、対戦も3巡目に突入した6回、この球種を見きわめられてしまう。

先頭・岡への四球結果球も外角低めカットボール、続くマーティンにぶつけた死球もカットボール、田村との7球勝負で2球ボールになったのもカットボールだった。

満塁フルカウントからのカーブ使用はない

平均117.0キロのカーブも同様だった。

5回まで空振り、見逃しストライクを多数稼いだこのブレーキングボールも、6回になるとボール球が増えていく。レアード四球の結果球も、2-2と追い込みながら4番・安田に器用にすくい上げられ、右中間塀際まで飛ばされた右越安も、カーブだった。

そのため、田村とのフルカウント勝負でも使うことは難しかった。

とくに軽打応戦でバットに当てにくる打者に、追い込んでからの緩い球は禁物。絶妙なコンタクトを許すリスクがある。

それに今季フルカウントからカーブを使用した楽天投手陣の結果をみると惨憺たるもの。その結果は8打数4安打、2三振、8四球だった。

ましてや満塁である。押し出しリスクもある状況下、3-2からのカーブという選択肢は、野球のセオリーに反する。もし外れたら押し出し、150キロ超えの球もあるのに緩い球を痛打されたら悔いが残ってしまう。

実際、2017年以降、楽天投手陣が当該状況下でカーブを投げた例は、2017年8/11●E4-8Bsの2回2死満塁、T-岡田に3-2から投げた岸のカーブ(押し出し四球)、今年6/28●E4-6Fの3回1死満塁、渡邉に3-2から投げた石橋のカーブ(押し出し四球)、この2例しかなく、いずれも結果は最悪だった。

フォークなどの落ちる球も同様だった。

5回までは落差大の絶妙軌道でストライクからボールに鋭く変化し、数多くの空三振を取った。しかし6回は右打者の内角にシュート回転する軌道になってしまい、そこを井上に対応されて同点犠飛を打ち返されていた。

スライダー系もダメ。落ちる球もダメ。遅球カーブも制球不如意。
となれば、田村のフルカウント勝負、ストレートを投げざるをえなかったのだ。

押し出し四球を嫌ったため、コースいっぱいは狙いにくい。
必然甘く入ってしまった、そういうことだと僕は思っている。

球数90球以上で被OPS.854

それにしても5回までの則本と6回の姿は、まるで別人だった。

2番から中軸へといく相手好打順でいきなり四死球で始まり動揺し、投球が慎重になり、腕が振ることができなくなったという側面もある。

一方、コロナ禍による自粛が長期間に及び、開幕前の6月練習試合では43球、80球しか投げることができなかった調整不足もありそうだ。

これで今季、則本の球数90球以上の成績は、32打数12安打、1二塁打、6三振、4四球、1死球、1犠打、1犠飛、被打率.375、被OPS.854になった。

エースが要所で踏ん張れなかった楽天は、このカード2勝2敗に。

チーム成績は2位、36試合19勝16敗1分の貯金3。

各種戦績は、7月12勝13敗1分、直近10試合3勝6敗1分(得点47/失点61)、ロッテ戦7勝3敗、ビジター6勝7敗、1点差試合3勝5敗、連戦4日目以降7勝8敗、先制された試合6勝11敗、6回終了時に負けている試合1勝11敗へ。

ゲーム差は1位・ソフトバンクと1.5、3位で並ぶ西武、ロッテと1.5、5位・日本ハムと3.0、6位・オリックスと4になった。【終】

noteマガジン『Shibakawaの楽天イーグルス観戦記:2020前半戦』の読者さんへ。このマガジンは7/31までのお約束でしたが、8/11まで続行します。8/12からは下記の後継マガジンに移行します。今しばらく、こちらのマガジンでお付き合いください。よろしくお願いいたします。

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