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第6章[過去問]×[類題]こそが成功のコツ

6.1. 過去問と類題の関係性

過去問を解いていて、ある問題を正解できたからといって、その類題も正解できる保証はどこにもありません。

「類題」とは、「似たような問題」です。

例えば、次のようなものです。

問題:次のメッセージの送り手が意図したものとして最も適当なものを,それぞれ 1 ~ 4 のうちから一つ選びなさい。

Thank you for coming to the City Library. Recently, we have received some complaints about cell phone use in the library. If you need to talk on the phone, please make sure to go outside and not to disturb others. We appreciate your cooperation.

1  本の借り方を説明する。

2  マナーについて注意を促す。

3  苦情処理の方法を紹介する。

4  携帯電話の使用を勧める。

これは、令和4年度1回目の問題から引用させて頂きました。図書館で携帯電話を使わないようにして欲しいというメッセージなので、正解は2です。

次の問題はどうでしょう。

類題:次のメッセージの送り手が意図したものとして最も適当なものを,それぞれ 1 ~ 4 のうちから一つ選びなさい。

Dear Community Center visitors,

We hope you're enjoying our facilities. Recently, we've observed an increase in personal items left in common areas. For everyone's convenience and security, we kindly request that you keep your belongings with you at all times. Please note that the center cannot be held responsible for misplaced or missing items. We appreciate your cooperation in maintaining a safe and pleasant environment for all.

Thank you for your understanding.

1 施設の利用規則を説明する。

2 紛失物の取り扱い方法を案内する。

3 新しいセキュリティシステムを紹介する。

4 持ち物の管理に関する注意を促す。

この問題の正解は 4 「持ち物の管理に関する注意を促す。」です。

これを本文の意味までちゃんと読み取れて、理解できた上で正解できたならば、あなたは英文を正しく読み取る能力がちゃんとある、ということになります。

しかし同じようなパターンの問題でも、ある問題では正解できたけれど、別の類題では正解できない、ということはよくあることなのです。

ですから類題を解く、ということは、「わかったつもり」を防止するためにも、避けて通れない訓練なのです。

(ところで、これらの問題が、難しすぎて全然わからない、という場合は「後戻り学習」が急務です。どこからわからないかをチェックして、取り組む必要があります。また第8章でオススメ教材を紹介させて頂きます。)

6.2. 類題の見つけ方と作り方

では先ほどのような類題、どこで見つけてくるのでしょうか。予備校生なら、先生にお願いして、類題を用意してもらうこともできますね。

「問題集の購入」も選択肢のひとつです。詳しくは第8章で述べます。

もうひとつは「作る」という方法があります。

それは生成AIの活用です。ChatGPTが有名ですが、私がオススメするのは、複数の生成AIを組み合わせる方法です。

ただし、ご注意下さい。生成AIは【取扱厳重注意】です。まだまだ技術的には、未発達で、「それっぽい類題」を作り出すことはできても、それが本当に問題として成立するか、高卒認定試験に相応しいレベルに達しているか、判断できません。計算もよく間違えます

アイデアの参考にする程度なら、使えなくはないですけれど、悪気もなく平気で間違ったことを主張してくるので、扱いが難しいです。

次章で生成AIを用いた類題の作り方を指南しますが、あくまで「参考程度」と捉えて下さい。私もアイデアを得るためによく利用しています。でもミスが多くて、つたないので、結局自分で手直ししないと使えないです。

その取扱い方法はじゅうぶん注意をして下さい。

また、AIに頼らなくても、数学であるならば、数字を少し変えるだけで類題はできますし、社会系や理科系であれば、教科書やテキストを参考に、自分で類題を作ることは決して不可能ではありません。国語や英語だって、ある程度基礎ができていれば、語彙問題や文法問題は自作できます。

問題を自作する。

いちど試しに取り組んでみて下さい。

それがたとえ、最初はレベルの低い問題だとしても、意味はあります。繰り返し作ることで、より理解や思考力が増します。真剣に問題を考えていると、脳みそがクタクタになります。それを「楽しい」と思えたら、こっちのものです。

もしも、一緒に受験を戦うライバルや仲間がいるならば、お互いに問題を出しあって、一緒に解くということは、すごくよい練習になります。

相手がいなくても大丈夫。相手を「昨日の自分」にすればいいのです。昨日作った問題を、次の日に解いてみる。

もちろん、過去問の出題傾向に合わせた類題である必要があります。何にせよ「アウトプットは最大の学び」という原則は、一生役立つのでおぼえておいてください。

6.3. 反復練習の重要性

勉強に限らず、どんな技術でも、身につけようと思ったら「反復練習」は欠かせません。これについて、様々な意見や議論があります。

たとえば、教育学者として有名な斎藤孝先生は、以前、「漢字の書き取り練習は40回やろう」という提案をされていました。

40回練習すれば、誰でも、必ずおぼえられるよ、と。

ところが、この発言、私は問題発言だと思います。「誰でも」というところです。本で読んだのか雑誌の記事だったのか、30年くらい前のことでしたので記憶がおぼつきませんが、「そんなバカな」と思った記憶があります。

そもそも、おぼえたい漢字を、全部40回ずつ書く、という作業じたいが、苦行ではないでしょうか。私は国語が専門で、漢字が大好きですけれど、同じ漢字を40回も書かされたら、気が狂いそうです。無理です。

だからきっと、集中できないまま、単なる作業として、適当に書いてしまうでしょう。8回目あたりから、字が間違っているのにも気づかないで、そのままいい加減に書くと思います。20回に到達する前に、もう無理と思って、書くのをやめているはずです。

ちなみに、こんな練習方法をするのは、世界で日本だけだそうです!

海外の方が「日本人はクレイジーだ!」と驚いていたと、ネットでも話題になったことがありました。

勉強において、反復練習が効果を発揮するのは、集中して行うときに限定されます。

無理矢理イヤイヤ書き取り練習をさせられて、途中から字が間違っているのにお構いなしに、その間違った字を何度も繰り返して書き続けて、漢字が得意になるわけがありません。

だから適切な回数というのは、誰でも同じ回数ではないと私は思います。結論をいえば、

「その人がその日のコンディションや気分で、集中して続けられる回数」

が適正回数であり、集中力が維持できなくなった時点で、ストップすべきです。

もしかすると「天才」と呼ばれる人たちは、飽きることなく集中力を発揮して、何度でも同じことを繰り返せる人たちのことをいうのかも知れません。私には無理です。

すべての漢字を40回ずつ全部、集中を維持させたまま書き取りをできる人は、私は天才と呼んでよいと思います。そりゃあ漢字得意になりますよ。

普通はそんなことできません。それに他の科目の勉強どうするんですか。

その日の自分に合った回数というものを、その日のコンディションと相談しながら、決めるべきです。

話題を変えます。一度解けた問題でも、一度理解できた公式でも、時間が経つと忘れてしまうことがあります。

それは自然なことで、誰でも「忘却」するから、新しい情報や知識を次から次へと蓄えておくことができるのです。通常は。

「エビングハウスの忘却曲線」をご存知ですか?

ヘルマン・エビングハウス(Hermann Ebbinghaus)という心理学者がいました。彼は1850年1月24日にドイツのバルメンで生まれ、1909年2月26日にブレスラウ(現在のポーランドのヴロツワフ)で亡くなった、記憶研究の先駆者です。

ペリーが黒船に乗って浦賀沖にやってきたのが、1853年。アメリカの南北戦争が1861年。そんな時代に提唱された説が、今でも多くの人たちから支持されています。

彼が提唱した曲線を、すごくざっくりイメージすると、次のようなものです。今日100%記憶できたことも、時間の経過とともにドンドン忘れていきます。

ざっくりしたイメージです。発売される書籍ではもう少しちゃんとしたグラフを作成します。

それは直線ではなく、曲線になっているといいます。

厳密にはこの図は正確ではないのですが(忘れるスピードは個人差がありますし)、イメージは、だいたいこんな感じです。要するに、この曲線がずっと下のほうへ落ちてしまう前に「繰り返し復習しましょう」ということです。曲線の本気バージョンは、Wikipediaをご参照下さい(忘却曲線 - Wikipedia)。

更に近年ではエビングハウスの研究から更に進化して様々な「忘却に関する研究」があります。しかしここでは省きます。

復習の理想は、1日後、1週間後、1カ月後、の3回。これで「おぼえたつもり」・「わかったつもり」はかなり防ぐことができます。そのうち記憶は「短期記憶から長期記憶」へ移行しますので、ほんとうの自分の実力となります。

でも、日々の暮らしに仕事に忙しい毎日を送りながら、そんなにロボットみたいに正確にはできませんので、あくまで「理想」です。

カレンダーや手帳、テキストに直接書き込むなどして、勉強した日付をメモしておくことも「復習のタイミングを知る手段」として有効なので、ぜひ継続して下さい。これは詳しくは後述します。

ズボラな私は3日もたないですが、でも中には、日付をこまめにメモすることで、絶大な効果を発揮する方をたくさん目にしてきました。

やってみる価値はあるでしょう。

6.4. 応用力を養う学習方法

次に、応用力をどう養うか、というお話です。

実はすでにもう触れているのですが、

問題を自作する

これ、とてもオススメなのです。

うまく問題が作れなかったら、なぜ作れないかを、教科書・参考書・問題集などと見比べながら、ウンウン考えるのです。

これがとてつもなく応用力を育ててくれます。

誰かとチームで勉強できるなら、これもすでに伝えましたね。お互いに問題を出し合う。

これも、考える力を着実に育ててくれます。

相手がいなくても大丈夫です。結局「応用力」を身につけるいちばん手っ取り早い方法が、

[過去問]×[類題]の組み合わせ

を、しっかり反復することなのです。

協力し合える仲間がいればそれでいいし、いなければ、いないで、何とでもなります。

もし何とかならないときがあったなら、どうか私を思い出して下さい。大丈夫。


第7章以降は、いよいよ合格のための核心部分に触れていきます。続きはKindle書籍で。今秋発売。KindleUnlimited会員は無料で読めます。noteの有料記事にすることは需要があるのだろうか?

第7章 必要なツールを揃えていく

7.1. 基本的な参考書と問題集
7.2. デジタルツールの活用(アプリ、ウェブサービス)
7.3. 学習管理ツール(スケジュール帳、進捗管理表)
7.4. モチベーション維持のためのツール

第8章 教材コレクターにはならないで

8.1. 教材選びの基準
8.2. 必要最小限の教材で最大の効果を得る方法
8.3. 教材の使い切り方
8.4. 新しい教材に手を出したくなる心理とその対処法

第9章 強力なPDCAサイクルの回しかた

9.1. Plan(計画):具体的な学習計画の立て方
9.2. Do(実行):計画を確実に実行するコツ
9.3. Check(評価):進捗と成果の正しい測り方
9.4. Act(改善):結果を踏まえた計画の修正と最適化

第10章 先人の教え

10.1. 孫子「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」とはどういうことか
10.2. 本居宣長『うひやまぶみ』の至言
10.3. 鴨長明『方丈記』が伝える真実
10.4. 先人たちの名言が支えになってくれる

第11章 本番での心構え

11.1. 試験当日のスケジュール管理
11.2. メンタルコントロールの方法
11.3. 時間配分と解答テクニック
11.4. 不測の事態への対処法

第12章 おわりに

12.1. 高卒認定試験合格後の展望
12.2. 生涯学習の重要性
12.3. 著者からのメッセージ

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