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第3章 受験勉強を始める前に

3 受験勉強を始める前に

3.1. 自己分析:現在の学力レベルの把握

受験勉強を何の下準備もなく始めてみても、なかなか思うような成果を挙げられないことが多いです。

やみくもに努力しても、あらぬ方向へ努力していては、ゴールにたどり着くことが遅れに遅れてしまいます。

あなたが今、どれくらいの学力を有しているのか。そして合格までの間に、何をどれだけ勉強すればよいのか、具体的で明確な計画を立てるのは難しいことですが「方向性」だけは打ち出した方がよいでしょう。

あなたの現在の学力レベルを、あなた自身が把握すること。これがまず大事です。そしてそれは、受験勉強の期間中、折に触れて何度も見直さないといけない点でもあります。

「SWOT分析」をご存知でしょうか。

SWOT分析とは、本来は企業やチームが、自分たちの内部環境と外部環境を分析し、経営戦略を立てるためのフレームワークです。

SWOTは、以下の4つの要素の頭文字を取ったものです。

S: Strength(強み)

W: Weakness(弱み)

O: Opportunity(機会)

T: Threat(脅威)

このフレームワークを活用して、まずは自己分析してみましょう。主観で大丈夫です。

各要素の意味と分析の目的は以下の通りです。

強み(Strength):

自分が他の受験生と比較して、どちらかというと優れている点を考えます。無ければ無いで「強みにしていきたいところ」・「強みとなりそうなところ」を考えてみましょう。

弱み(Weakness):

自分が劣っている点、つまり改善すべき点や克服すべき課題のことです。例えば「英語が苦手」という、漠然としたものでも今は構いません。できれば具体的に「文法がほぼわからない」などというように分析したいです。

機会(Opportunity):

自分が活かせる外部環境の好機のことです。例えば、近所に図書館があって学習室が利用できる、予備校に通っていて、いつでも相談できる環境がある、駅前のマクドナルドで勉強するのがいちばんはかどる、などです。

脅威(Threat):

自分の受験勉強に悪影響を及ぼす可能性のある外部環境の要因のことです。例えば、きょうだいが多くて自分の勉強部屋が無い、家族の理解が得られにくい、などです。

これらの要素を分析することで、受験生としての自分の現状を客観的に把握し、強みを活かして機会を捉え、弱みを克服し、脅威に対処するための作戦を立てるのです。

では紙とペンをご用意ください。

このような表を作成します。エクセルなどの表計算ソフト・アプリが使えるなら、そちらで取り組んで頂いても構いませんが、できれば手書きを推奨します。理由は、手書きの方が脳の血流が多くなる(=脳が良く働く)ことが、数々の実験でわかっているからです。

フリーハンドでぐにゃぐにゃの表でも構いません。大丈夫。私の方が下手ですから。自分の思考が整理できればよいのです。

この第1回目のSWOT分析は、あくまでも受験勉強をこれから始める前に「自分はこう思った」という主観の分析で大丈夫です。

これから学習を続けていく中で、また違った分析結果になっていきます。

具体的には第5章でふれますが、過去問題を本番形式で取り組んでみて、今自分がどんなレベルにいるのか、正確に把握してから第2回目のSWOT分析を行います。

この順番は非常に重要です。

第1回目では、自分では〇〇と考えていたことが、第2回目では「思い違い」だったことがあきらかになることがあります。

これを「認知のゆがみ」と呼ぶことにします。

「ゆがみ」という言葉に、ネガティブな意味を感じますが、気にしないで下さい。「バイアス」と呼ばれる方が一般的ですが、ここはあえて「ゆがみ」を採用します。

この「ズレ」・・・最初は〇〇と思っていたけれど、実は××だった。このズレを自ら気づいて修正していくことこそ、上達の秘訣です。

そして月に1度は、SWOT分析を行って、これまでの努力を振り返り、これからやるべきことを確認・修正していくことが、成功率を高める大切な努力となります。

3.2. 目標設定:合格までのロードマップ作成

「PDCAサイクル」をご存知ですか?

PDCAサイクルとは、

l   Plan(計画)

l   Do(実行)

l   Check(評価)

l   Act(改善)

の頭文字を取ったもので、業務改善や品質管理など、様々な場面で活用されるフレームワークです。

各ステップの意味と具体的な行動を説明します。

Plan(計画):

l   目標を設定する

l   目標達成のための具体的な計画を立てる

l   必要な準備を行う

Do(実行):

l   計画に基づいて実行する

l   データを整理する(勉強の達成度や量などを整理)

Check(評価):

l   目標達成度を評価する

l   計画との差異を分析する

l   問題点や改善点を洗い出す

Act(改善):

l   問題点に対する対策を講じる

l   「標準化」を行う

l   次のサイクルに向けて改善点を反映させる

これは実は、仕事ができる人、勉強が得意な人は、教えてもらわなくても、何となくやっていることなのです。それを真似させてもらって、意識的に行うことで、学習効率や成果を大きくアップさせることができるのです。

PDCAサイクルのメリットは、以下の通りです。

l   継続的な改善: 同じサイクルを繰り返し行うことで、常に改善を追求することができます。

l   客観的な評価: データに基づいて評価を行うため、主観的な判断を減らすことができます。

l   問題解決能力の向上: 問題が発生した際に、迅速かつ的確に対処できるようになります。

PDCAサイクルを成功させるポイント、強力なサイクルの回し方は、第9章でたっぷりご紹介します。

重要なのは、受験勉強はPDCAをしっかり回していくことが基本中の基本で、更にその中でもP(計画)がちゃんとしていないと始まらない点です。

まずは、あなた自身の思いつきとアイデアで構いません。だいたいの、大まかな、「ロードマップ」を作成してみましょう。この計画通りにいかなくても大丈夫です。「おおまかな見通しを立てる」ことが目的で、計画倒れで構いません。それでも「見通しを立てる」ことは大事なのです。

作成したロードマップを「たたき台」として、具体的なPDCAサイクルを第9章で学んで、効率を最大化し、成果を最大化する受験勉強をしていきます。

では、再び紙とペンをご用意ください。用紙はA4サイズ以上の大きな紙が望ましいです。大きな方眼紙があれば最高です。カレンダーの裏でも構いません。

次のような図を描いて下さい。下手で大丈夫。私はもっと下手なのでご安心下さい。

赤文字は私の解説。書き込まなくてOKです。紙に書き込んで頂きたいのは黒字のところです。

まずは、これだけ記入します。

そこから、左端には日付(=デッドライン)、科目の下には「終わらせること」を書いて、達成出来たら、文字の上から色ペンで日付を書き込みますが、ちょっと待って下さい。

これは、あくまで「参考例」であって、この通りでなくて構いません。「速単」とは、私がオススメしている単語帳の略称です。しつこいですが「参考例」ですからね。

デザインやレイアウトをもっと工夫して、あなただけのロードマップを楽しみながら作ることは、とても素敵なことです。たとえば「日付」や「終わらせること」を、全部「ふせん紙(ポストイット等)」で作れば、あとからいくらでも修正できますね!

好きなキャラクターのシールとか、マスキングテープ等でデコるのも、あなた次第。うまくできたら写真に撮って、デザインセンスの無い私にも見せて下さい。コンテストはありませんが(*´▽`*)💦

重要なのは、次の2点。

l   何を(やること)、いつまでに(〆切)、終わらせるか。

l   そこから逆算して、今どんな目標を立てて、どんなペースで勉強していくか。

これです。

もちろん計画通りに、最初に考えた〆切通りに、全部うまくいくなんて、そんなワケはありません。もし、最初に描いたロードマップ通りに全部こなせたのなら、もはや、あなたは、高卒認定試験なんてとっとと終わらせて、東大、京大、いやハーバード大?更に上を目指して欲しいです。

いいですか。まずは「見通し」。「道筋」と言い換えてもいいです。それを立てて、〆切を設定し、そこから逆算して努力していく姿勢を大切にして下さい。

「夏休みの計画」をしっかり立てて、夏休みが終わるころにはほとんどできていない、なんてことは「あたりまえ」のことです。予想した未来が完璧に合っているなら超能力者の仲間入りです。

それくらい難しいことですが、それでも、計画を立てることは重要です。

「〆切日から逆算して努力していく姿勢(逆算思考)」

これを自分のものにするためです。そして後で学ぶ「PDCAサイクル」を強力に回していくためでもあります。

3.3. 学習環境の整備

かつての教え子で、勉強は「家だとベッドの中でやる」という生徒がいました。この生徒は、きょうだいが3人いましたが、2Kのアパートで、家族5人で暮らしていました。

いちばん下の子はまだ幼稚園だったので、両親と1つの部屋で過ごし、この生徒は弟と一緒に同じ部屋で過ごしていました。ところがその部屋は6畳間で、二段ベッドが置いてあるため、勉強机を置くスペースがありませんでした。置くと押し入れが使えないからと。

そんな環境下でも、彼は利用できる時間帯は図書館の自習室を利用し、徒歩圏内にマクドナルドがあって、そこでマックシェイク(小)を注文して何時間も粘り、そして夜中、弟が寝ているからと懐中電灯を照らしてベッドの中で勉強するといいます。

彼は今、地元の有力企業(全国のほとんどの人が知っているお菓子の会社)で正社員として働いています。

こんな努力ができる人は、なかなかいないと思います。私なら無理です。

私の家も、びっくりするほど貧しかったです。狭い借家にぎゅうぎゅう詰めで暮らしていました。しかし小学5年生のときに初めて自分の勉強部屋を与えられました。祖父の退職金を頭金に、新築の家を建てることができたからです。祖父は戦国武将・長曾我部元親の幼名と同じ「弥三郎」といいます。どうでもいいか。私にとっては偉大で尊敬する祖父でした。

やはり「勉強するための環境整備」というのは、本当に大切で、自分の勉強部屋を与えられた、というその出来事が、私にとっては大きな転機でした。宿題を終わらせるスピードが格段にアップしたのです。その分、読みたい本を読み、趣味に時間を使うことができるようになりました。

いま、あなたはどんな状況ですか?落ち着いて勉強できる環境が整っていますか?もしそれが難しい場合は、以下の事を試してみて下さい。

l   時間を変える

思い切って、早起きをして、みんなが寝ている早朝の時間を活用する。最初はかなりキツイと思いますが、習慣化することで身体は慣れていきます。私?朝弱いから無理です😢でも経験者が口を揃えて言う「2週間続けてみる」ということは重要なアドバイスです。

私の場合は断然「深夜」です。日が昇っているときは、何故か知りませんが、あまり元気が出ません。でも日が暮れると共に、段々元気が出てきて、完全に日が暮れると、ピークを迎えます。塾の先生あるあるで「完全に夜型」です。でもこれは真似しないで下さい。理由は、朝起きられないからです。受験に遅刻できませんから。受験生は朝型に生活スタイルを合わせて下さい。

l   場所を変える

先にマクドナルドを例に出しましたが、図書館の自習室の活用や、ネットカフェ、コワーキングスペース、また学習スペースを提供するサービスもありますので、検討してみることをオススメします。

何なら、気候が良ければ、公園でも。

いろいろ場所を変えて「集中できる環境」を自ら作り出す。これは私も実は現在進行形で取り組んでいることです。

私は、電車に対して深い愛があるわけではありませんし、詳しくありませんが、しかし、集中して読みたい本があるとき、乗ります。目的地はそこまで重要ではありません。自宅のすぐ近所に、近鉄松阪駅があります。

そこの「急行」が、いいのです。座席のつくりが良いので、集中できるのです。電車を待っている時間もなかなか集中できます。集中しすぎて乗り忘れたこともある位です(何をしている)。

それで、例えば鳥羽駅(鳥羽水族館は世界的に有名)まで移動します。片道1時間20分くらいでしょうか。鳥羽駅に着いたら、必ず海辺を散歩します。潮の香りと波の音で、リフレッシュ。そうして往復している間に、読みたかった本は、しっかり読み終わっています。

津新町駅(三重県の県庁所在地)に行くこともあります。駅近くに「マチカド」という雑貨屋兼喫茶店があって、そこのコーヒーとプリンアラモードが最高なのです。雑貨も見ているだけで楽しくて、素敵な空間です。

ただ、私は「マチカド」でもそうですが、フードメニューに夢中になっちゃって。落ち着いて勉強することができません。マクドナルドもスタバもコメダもそう。食欲が勝ってしまって、あれも食べたい、これも食べてみたいと集中できないのです。

それよりは、電車の中で揺られている方が私の場合は集中できます。デスクワークはカバンをひざに置いて、その上でやれます。揺れますが。

そしてもうひとつ、とっておきの場所があります。それが「松阪城」です。歴史ある美しい石垣を眺めながら登って、本丸跡のすぐそばにちょうど良い所があるので、特に桜や藤の見ごろの季節などは、そこで勉強します。戦国武将・蒲生氏郷による名城で、観光客も多く、じろじろ見られますが、気にしません。眺めも最高で、目が疲れたら、遠くの水平線や反対側の美しい山々を眺めます。お殿様気分です。

そして敷地内に「本居宣長旧宅」と「本居宣長記念館」があり、立ち寄ります。尊敬し、敬愛する宣長さんのご自宅と、直筆の記録などがいっぱい展示されている資料館があるのです。そこにも宣長関連の本がいっぱいあって、本に囲まれるのが大好きな私は、元気とやる気をもらいます。

「松阪市立図書館」も利用しますが、一部マナーの悪い人たちがいて、それからはあまり足が向かなくなりました。ちょっとした調べものには行きます。

この「場所を変える」という事が、私には学習環境を整える最も効果的な方法でした。ところが「移動コスト」と「利用コスト」が問題となります。松阪城は歩いて行けますし入場料もありませんが、記念館は入場料が必要です。電車代も積み重なればバカになりません。

だから「移動コスト」と「利用コスト」で無理のない範囲を探す必要があります。

ここまで読んで頂いて、実は筆者は暇なんじゃないかと考え始めた読者もいらっしゃるかも知れません。しかし実はこういう事ができる時間は本当に貴重で、どれだけ忙しく働いていても、無理やりこういう日を作るようにしています。自分と向き合う時間でもあります。

子育てしながらでは、こんなことは難しいですが、しかし1日だけ、いや半日だけでも、お子さんを預けて頂いて、自分の勉強時間を作る、場所を移動して集中できる環境を作る、ということは、勉強を一気にはかどらせる、有効な方法です。半日でも預けるのが難しいなら、また別の手段を考えましょう。私も一緒に考えますので、いつでもご連絡下さい。

あとは文房具です。これ語り出すと、この項目だけで100ページを超える可能性がありますので、本当に大切な要点だけを言います。

文房具は、こだわりましょう。

以上です。どうかお気に入りの文房具たちに囲まれて、素敵な学習環境をつくり上げて下さい。


大丈夫です。詳しくは第7章でまとめます。愛が溢れすぎて膨大なページにならないよう気を付けます。


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