”僕”の起業の物語  V字回復!でも・・

前回は↓

開業初月は大赤字だった。ほぼ半月漫画喫茶ですごした。
(500万円借りといてよかった…)

次の月は20日程仕事があった。まずまず。

しかし次の月は激減。漫画喫茶が職場になってしまっている・・

何度も、業界仲間に使ってくれないかと依頼しそうになる。
しかし、ぐっとこらえる。

(ここでそれをやったら、独立した意味がない)

日銭は稼げるが、一日拘束される。
気が付くとそこの会社の専属下請けのようになり
自分の仕事は永遠に取れない。何人もそのパターンに
はまっているのを見てきた。資金があるうちは我慢だ。

しかし思った以上に金がかかる。
道具代、車両関係費、パソコンやプリンターなどの事務用品費、高速料金、
日々の駐車場代・・・
積み重なるとけっこう大きい。

しかも大金が入ったことで気も大きくなって
スーツを新調したり、出張なんぞないのにスーツケース買ったり・・・

一月何十万の単位でお金が減っていく。

契約もまずかった。
開業したてで自信のなさがでてしまった。
今考えるとかなり安い金額で契約してしまっていた。

企業は利益をだしてなんぼの世界だ。
利益は善なのだ。

経営者は自信をもって商品に利益を上乗せしなければ
生き残っていけないのだ。

利益=キャッシュが手元に残る。
そして、それをまた投下して
さらなる利益を生み出す。

このフロー、キャシュフローが上手くいけば会社は発展する。

経営者の最も大事な仕事の一つだ。

今はわかっているので、躊躇なく、かなりの金額を提示し、
契約している。
だがその時はまだ半分サラリーマンだった。
(こんだけもらえればいいか)という感覚だったのだ。

(あとどのくらいもつのか?)

一年はもたない。もってあと半年・・・

仕事はまだ、ぼちぼちといった感じ。

(またサラリーマンにもどるのか・・)

ぞっとする。もう絶対戻りたくない。

どうすればいいのか?

本屋さんに行く回数が増える。
手当たり次第、本を読む。

僕はかなり本を選ぶセンスがあると思っていたが
この時期読んだ本はあまり記憶に残っていない。

家に帰り子供を抱っこしていると
泣きそうになる。

(この子が路頭に迷ってしまう。)

過去に学んだ成功法則の名著を読み直す。
徐々に恐怖が消えていく。エネルギーが少しずつ湧いてくる。

(まずは、これだ)

何かを立て直したい、または何か新しい事を
始めたいと思ったら、まず、

捨てる

ことだ。

これは鉄板で、真実で、超効果的だ。

なにかがなくなると、その穴を埋めようとする力が
必ず働く。もったいないなと思うものほど捨てると
いい。まずはここからはじまる。

僕はまず、経費を見直した。

保険関係をばっさり。
スマホも格安携帯に。
給料もさげた。奥さんにはかなり怒られたが
渋々協力してもらえた。
その他もろもろコストカットしていく。断捨離だ。

そして漫画喫茶には一切行かないことにした。
あのブースに一日中いたってなんの発展もない。

だいぶすっきりした。
利益が残る体制が整った。収入が増えればかなり
うるおう。

不思議とそんな時、電話が鳴る。

「ちょっとこの案件できる?」

東証一部上場企業からのオファーだった!

口座のお金はあと10万をきっていた・・・

ついに底を打った。
V字回復。
一部上場企業からの依頼を受けた僕はかなり忙しくなった。

その仕事が毎日ありつつ、既存の取引先からの依頼が
なぜか一斉に入り始める。

売り上げは3倍に。
底をついた資金も回復しつつあった。
コストカットが功を奏して利益が出始める。

その頃、僕の部屋は書類、図面などで溢れかえってきた。
奥さんの機嫌も悪くなってくる。

「いい加減にしなよ。物置じゃないんだから!」

少し余裕もでてきたので、事務所を借りることにした。
せっかく経費を切り詰めたので、固定費を増やしたくなかった
が、致し方ない。このままだと、奥さんの怒りが爆発
しそうだ。

でも、いざ借りるとなるとウキウキしてくる。
綺麗なオフィスに綺麗な女性秘書。社長ならだれでも
一度は夢見るものだ。

だけど実際は築三十年のボロマンションの一室を
借りた。家賃4万の掘り出しものだった。ここは夢より
コストを抑える事を優先した。

そんな、ボロでも初めての事務所だ。
ようやくなにか一国一城の主という気分になってきた。
つい数ヶ月前までは漫画喫茶でふさぎ込んでいたのに・・・

ここで現在の懸念を払しょくすべく動き出した。

現在の懸念・・それは人手不足だ。
とてもとても、僕と初期メンバーのヒロとだけでは
まわしていけなかったのだ。

求人広告をバンバン打つ。
求人広告は・・・高い!名刺サイズの掲載スペースで二週間で6万円。
電話が鳴れば我慢できるのだが、電話はほとんどならない。
総額100万円くらい求人に費やした。

身になればいい。
だがまったく、従業員が増えていかないのだ。

ようやく応募が来て、喜んで採用する。
でも初日にこない・・・
また広告を打ち、応募がきて、即採用。
3日後連絡がつかなくなる・・・

「あんた、人を見る目がないね~」

奥さんに嫌味を言われる。

「見る目もなにもないんだよ。応募が少ないんだから、
来た人全員採用だよ。選ぶ余裕がある企業じゃないんだから。」

「ちょっと給料上げてみたら」

素直に奥さんの言うことを聞いてみる。
給料を一割増ぐらいの設定で広告を打つ。

結構応募がきた!

少し選べる余裕もあるくらいだ。
ただ明らかに変な人を採用しないといった程度だが・・

5~6人採用しただろうか。
だれも残らなかった・・・

給料は普通よりやや高い。
交通費はもちろん全額支給だし、保険も完備。
初月から有給も付けた。
残業はほとんどないし、条件は悪くないはず。

しかも僕は結構温厚な性格なのでほとんど怒らない。
今はやりのパワハラなどが原因で辞めるのではない。

退職理由はそれぞれバラバラで対策のしようがない。

(うーん・・・なんでだろう。)

考えてもわからない。
金があるうちはどんどん投下だ。毎週新聞広告と
フリーペーパー、ネット媒体に広告を出す。

ようやく一人定着する。
ただ・・・60歳のおばさんだ。事務ではない。
作業員として雇った。
仕事は全くできないが、根性だけはあった。

前職で大けがをして、最近、ようやく完治したそうだ。
シングルマザーで子供を育ててきた人だった。
当然のように貧困に苦しんでいた。わらにもすがる思いで
応募してきたらしい。

僕も正直言うとだれでもいいから手伝ってほしかったのだ。
忙しすぎて、仕事以外なにもできない状態だった。

ここに中小企業が発展しない落とし穴がある。

社長は現場に出てはいけないのだ!

異論はあるかもしれないが、高確率でこの考えは当たっている。

企業は変化し続けなければやがて廃れていく。
特に最近は変化のスピードが速いのでなおさらだ。

そんな時社長が作業にどっぷり浸かっていたらだれが変化を
起こすのだ?

以前の記事でホメオスタシスのことを書いた。
人間は変化を嫌う性質をもっている。
変化しようとすると引き戻しの力が働くのだ。

なので従業員は基本変化を好まない。
このままなにもおこらずに、毎月給料をもらいたい。
従業員のベースにはこの考えがある。だからほっとくと
企業は何も変化はしないのだ。

だから変化を起こすのは社長なのだ。
そんな社長が外で何もインプットできないような状況は
会社の危機なのである。

経営者は会社の外で色々な人と出会ったり、セミナーに
出てみたり、本を何冊もよんだり、はたからみると
遊んでいるようにしか見えなかったりもすることが
大事な事なのだ。

でもある時ひょっこり会社に戻ってくる。アイディアを
持ってくるのだ。そしてそれを従業員に押し付けて
また外へ旅立つ。

僕はこの状態を目指している。

でも忙しすぎてそんな余裕がないのが歯がゆい。

(このままではまずい)

仕事が山ほどあるのに僕は危機感を募らせていった・・・

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