見出し画像

2. その日は突然に(2) <父を看取れば>

父の病状の詳細を聞くために、私は姉宅(日本在住)にも電話を入れた。父と長年の確執を抱えている姉の反応は...微妙だった。「うーん、なんかフガフガ言ってたよ」。「言語障害が起きてるってことだよね。脳出血だったの?それとも梗塞?」「とにかくフガフガしてて、言ってることわかんなかった(フフ)。」姉の皮肉っぽい薄笑いを聞き、私は頭に血が上った(人が生死の境を彷徨っている時に、その話し方は何!?)

「お義兄さんに替わって!」私の声は怒気を帯びていたと思う(反省)。義兄は理系研究者で、客観的で実行力のある人だ。彼と話すことでやっと父の現在の状態がわかってきた。脳出血ではなく脳梗塞で、間もなくICUから一般病棟に移されるという。

ほっとした私は、早速ネットでの”にわか勉強”を始めた。ネット検索で「脳幹部分の梗塞、リハビリ、介護施設、脳卒中患者、病院」等を夢中になって調べた。半日ほど経った日本時間の明け方に、母に次のようなメールを送った。

「まずは、脳幹部分と言っても、脳梗塞(血管が詰まる)であり、脳出血ではなかったとわかり少しホッとしました。前者の方がまだマシだと思います。足元がふらつき出した時点で、救急車を呼んだことは非常にいい判断だったと思います。最初の数時間が勝負だからです。ICUでは、手術で血栓を取り除くことはできなくても、血栓を溶かす薬をすぐ点滴して脳幹周辺の細胞や神経への影響を最小限に抑えたはずです(もちろん、後遺症はあるでしょうが)。

一般病棟にすぐ移されるのも、即日リハビリが始まるからでしょう。今入院している病院で1ヶ月ほどリハビリした後は、他の施設に移ることになると思います。

この転院の際、「(自宅へ帰るためのリハビリが建前上目的の)介護老人保健施設、通称 ”老健”」では、3ヶ月ごとに転院しなくてはいけなくなってしまうので、長期滞在が可能な「介護療養型医施設」に入れるよう手配するのがいいと思います。これは東京都でも数が少ないのですが、幸い実家の近くでは、XX病院にその施設があります。費用も安めです。

私もサポートするから、お母さんも脳梗塞のことについて調べてみてください(ここに幾つかの参考サイトのURLを挿入した)。しっかりとお医者さん、病院スタッフの話を聞き、ケアマネさんと話すのがいいと思います。
「覚悟はできている」などと(お母さんは)言っているけど、これからが正念場です。お父さんは、後一年から数年生きるかもしれません。」

我ながら頭でっかちで偉そうなメール(お恥ずかしい)だが、しょうがない。母も姉も実務的なことは疎く、その手のことが比較的得意なのは、家族の中で私だけだからだ。また、海外にいるので、手伝いと言ってもそれぐらいしかできない。

とにかくこの日から、約半年に渡る父の「看取り」の日々が始まった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?