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『イタリア式インボイス制度』

皆さま、いかがお過ごしでしょうか。日本に比べて暖冬であった欧州、日も随分と長くなり、日に日に春の兆しを感じております。

さて、日本では10月から『インボイス制度』が導入されるようですが、こちらイタリアも似た制度があります。
この制度が存在しているのは、そもそも日本のように巨大企業が少ないこと、フリーランスで働く人が多いからでしょうか。
少しイタリア式のフリーランスを対象とした申告制度をご紹介します。
 
イタリアでフリーランスの身で働くのであれば、最初にするのが、『P.IVA(Partita IVAパルティータ・イーヴァ)』税務番号の取得です。オンラインでもできる手続きはとても簡単です。要は、働く身分を明確にする、即ち税務申告をするためなので、この類のことだと国にもメリットがあるので手続きが簡単なのです。
所謂、マイナンバー、イタリアでは生まれたときから総ゼッケン制なので『コーディチ・フィスカーレ(Codice Fiscale個人税務番号)』が付与され、それと紐づけされるシンプルな仕組みなので、手続きが簡単なのかもしれません。そこから、自分はどの所得範囲なのか、どの仕事をするのか(3つ選べます。/国のリストがあり、コード化されています)で手続きはできてしまいます。
 
日本よりも税務ルールが煩雑なイタリアですが、国税オンラインシステムにより電子請求書システムも導入されているので、仕事の請求もある意味、筒抜け、逆に言えば確定申告もとても簡単です。要は自分が発行した請求金額が積み重なり、入金された金額に応じて収入を申告、その金額を基に年金納付金額、納税金額が算出される仕組みです。
因みに電子請求書発行に関して義務付けしている請求先、そうでない先もありますが、全体的に面倒を避けたいから電子請求書を義務付けている請求先(雇用主)がほとんどです。それに加えて、書類の不正を防ぐために、電子署名(有料システム)を求められることも多いです。それに加えて、面倒な計算等を避けたい人は会計士に委託します。以前に書いたことがあるかもしれませんが、この国では自分が苦手なことは手出ししない、専門家に託すところがあります。
 
そこで気になるのが、有料システムや委託での「経費はどうなるのか」 でしょうか。フリーランスが持つP.IVA(パルティータ・イーヴァ)には種類があり、経費申告できないタイプを選ぶと所得総額から22%を経費(材料費や仕入で費用がかさむ業種は50%)として換算し、その後の金額を総収入として年金および所得税の納付額を算出する仕組みです。おそらく、総所得で22%の経費を越えない人は定額制所得範囲(Regime forfettario)を選択します。計算が面倒な消費税、こちらではIVA(付加価値税)の計算、納付はなしです。この所得上限が65,000ユーロです。日本で言う消費税よりも、確実な所得税での歳入を国が天秤にかけた証だと思うと同時に、国側がある種の選択をしたのだと想像します。
 
一方、経費計上ができるタイプのP.IVA(パルティータ・イーヴァ)は、所謂消費税計上が生じる上、こちらは申告する上で必ず第三者、即ち会計士を雇う、申告を会計士に委託する必要もあるので、かなりの所得がなければ費用ばかりかかります。
ただし、仕事にかかる費用等も計上できるので、職種にもより、選択を考える必要があるかもしれません。
 
賛否がある制度かもしれませんが、この国は消費税(IVA付加価値税)の安定納税が進まなかったので、個人事業主から所得税の納付を必ずしてもらうために作った制度だと思います。ここで気になるフリーランスの所得税と年金納付率をご紹介します。ここでは日本の健康保険・介護保険を個別に計算するシステムはありません。
所得税は15%、年金は約26%です。また、フリーランスになったばかりの人には所得税率が5%の期間が5年与えられます。
年金の26%は、請求先に4%の費用負担を求めることができます。
ただし、細かい率や制度改正は毎年のように行われるので、注意が必要なのと同時に、追い切れないと考える人はほとんどが会計士と契約を締結し、様ざまな情報を得るようにしています。
  
この制度だと個人情報が筒抜けと感じてしまいますが、欧州どの国も似たような制度を導入しているのだと思います。(細かい調べ作業をしているわけではありませんので、その点はご理解ください。)
また、このような制度の導入が比較的早いのはやはり生まれたときからの総ゼッケン制度、戸籍制度ではない点が影響しているのでしょうか。ある意味、コロナ禍での助成金の支給が早かったのはこのフリーランスが持つP.IVA(パルティータ・イーヴァ)があったからです。
 
日本と欧米制度を色々と比較することが多いですが、制度導入に関しては有無を言わせない欧州式(少なくともイタリアはこの手の制度改正があっても、それに順応していくしかない…割とひっそり改正、笑)ある程度国民の意見に耳を傾ける日本式、いずれにしても実情に合わせた制度が取り入れられることがどこの国でも一番いいのかもしれませんね。単純にどこかのやり方をもってくるのは、しっくりいかないこともあると思います。

日本でこれから導入される『インボイス制度』とこちらの現状とは異なることがたくさんあると思いますが、イタリアでのフリーランス事情をご紹介しました。
いつの時代も誰もが少しでも光を感じて健やかに暮らせることが何よりですね。

『L'essenza della vita(レッセンツィア・デッラ・ヴィータ)~ 暮らしへのエッセンス ~』



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