現状維持をナメたらアカン
3月19日、所属しているライターコミュニティ「大阪ものかき隊」のオープン交流会が開催され、メンバーとしてお話しする機会をいただきました。
私が担当したテーマは、クラウドソーシング。持ち時間は7分、司会なしのフリートーク。
事前に聞いた情報はそれだけです。
2018年10月にランサーズデビューして以来、一時期は執筆案件のほとんどをクラウドソーシングで受注していましたが、現在はその割合はずいぶん少なくなりました。継続やご紹介でいただく案件が大半のため、新規営業そのものをほぼしていません。
ノウハウや裏話的なことは隊の中で折に触れて情報シェアをしているし、自分が大事だと思うことは口酸っぱく繰り返してきたつもりです。
今さら目新しい話もないし、ここ数ヶ月は新しく入隊されたメンバーにスキルも執筆文字数もどんどん追い越されて、古くからいるだけの“局ーズ”化してしまっている私。
過去の栄光?を、昔話や武勇伝的に話すしかできない古参メンバーなんて最悪やん!
今でも通用する有益な話って、果たしてどこまであるんやろう?
正直なところ、そんなことを考えながら、交流会で話すポイントのリストを作っていたんです。私の順番が回ってきて、PCの左横にストップウォッチを置き、持ち時間内に話をまとめることに集中、最低限お伝えしたいポイントをどうにかこうにかお話しました。
重複する部分もありますが、新たにいくつかのポイントを追加して、改めてまとめておきたいと思った内容を綴ります。
「定点観測」の重要性
20歳の頃から、求人情報を見るのが大好きで、仕事を探していないときでも趣味としてチェックし続けてきました。そのお蔭で、めったに出ない掘り出し物のような好条件の求人か、一見すると良さそうに見えるけれどしょっちゅう求人が出ているワケあり求人か、を見抜く眼力と嗅覚が自然に養われています。
クラウドソーシングにおいても、この眼力と嗅覚がとても重要で、「おいしい案件」を見分けるには、「定点観測」が必須です。気まぐれに、たまに覗いている程度では見つけられません。
私の経験上、特に念入りにチェックするのにおすすめの曜日・時間帯は、月曜の深夜~火曜・水曜の昼間です。「月曜から夜ふかし」「深夜のお宝さがし」がポイント。
年間を通して火曜・水曜は案件が豊富です。中でも、3月~5月は好条件の継続案件が豊富に出回るので、大型案件をゲットしたい人は時間をかけてチェックする価値ありです。
クラウドソーシングに本腰を入れて取り組む期間を決めて、できれば半年くらいの間に固定客を獲得したいですね。
書く力はもちろん大切ですが、それ以上にコミュニケーションスキルが重要です。クライアントと良好なコミュニケーションが取れていれば、納期コントロールがしやすくなります。
継続で気持ちよく仕事できる安定したクライアントを複数もち、自身の興味関心や文字・記事単価との兼ね合いで入れ替え戦を行いながら、ちょうど良い受注ペースを掴むのが理想的。
私は1ヶ月納期でまとまった数を受注するスタイルを基本としていて、昨年夏頃までは月平均40~50記事でした。納期がゆったりした案件を中心にスケジューリングし、ライター以外にも複数の仕事を組み合わせて、月によって収入が大きく変動しないようコントロールしています。
最初の1年間は法人・個人問わずお受けしていましたが、2019年春頃からは法人案件に絞っていくよう意識を変え、2020年からは原則として法人案件のみお受けしています。
案件募集の定点観測をして眼力を鍛えているのは、良案件を高確率で受注するタイミングを逸さないため でもあります。1本の記事を受注するために書く提案文も、数十本の記事を受注するために書く提案文も、手間はほとんど同じです。
新規営業ばかりしていては、時間をとられて疲れる割には収入になりません。募集条件の詳細をよく読み、まずは1本 の後ろにほぼ確実に見えている継続案件が月間どのくらいの本数あるか見極め、できるだけ「おいしい」かつ「勝ち戦」になる案件に絞ってアプローチするのです。
【私がクラウドソーシングの案件受注で気をつけていることの一例】
・提案文はラブレター
・発注率の低いクライアントに要注意 70%未満は警戒
・競争率が低い案件、過去の経歴が活かせる案件を狙う
このあたりは隊の中で繰り返しシェアしてきたので、聞き飽きたお仲間さんもきっと多いはず。
「案件受注の構成割合」について
継続案件をコンスタントに受注できるようになってきた段階で、私は自分にとって最適な基本の受注割合を意識しました。
まずは、平常時の平均的な自分の実力をベースに、最高の自分と最低の自分が書ける量や難易度を把握します。最高の自分or最低の自分の二者択一で、どちらか一方を基準にスケジューリングするのではなく、案件受注の割合を現状の自分に合わせて微調整しながら、常に最適化するのが重要なポイントです。
伸び盛りでイケイケどんどんなときと、体調その他さまざまな事情で仕事をセーブせざるを得ないときとでは、無理なくこなせる仕事量が違って当然ですよね。
万人に共通の割合というわけではありませんが、私は、
メイン: 8割の力で満足してもらえる案件(6割程度)
サブ①: 少し背伸びして取り組む案件(2割程度)
サブ②: しんどいときでもこなせる、難易度低め案件(2割程度)
この割合を基本としています。
煮詰まってきたときや自信を失いそうなときにも、サブ②の案件があることで気分転換がしやすく、仕事をしながらセルフチューニングが可能です。
せっかくスキルアップ、単価アップできたのに、難易度の低い案件に時間を費やすのはもったいない、と感じる人がいるかもしれません。確かに、自分にとって簡単すぎる案件ばかり受注していたら、成長がありません。ただ、人は誰しも自分ではコントロール不能な様々な要因で、日々いろいろなことが起こるものです。
ましてや、年齢を重ねるにつれて、一年前には当たり前のようにできていたことができなくなってくることも珍しくなく、頭・心・身体の状態がベストな日なんて数えるほどかもしれません。
私は婦人科系、脳血管系に持病があり、さらにはいわゆる「ゆらぎ世代」と呼ばれる年代まっただ中。自己肯定感を下げたくないという気持ちとは裏腹に、思うようにできない自分を認めざるを得ない、受け入れて上手に付き合うしかない毎日です。
納期が迫っていたら、深夜・早朝にちょっとがんばれば何とかなっていたのに、そのちょっとがままならないのはもどかしいですが、現実を直視したスケジューリングをしないと後で泣くことになります。
スケジュールには「2割の余白」
さらに、毎月のスケジュールには、常に「2割の余白」を残しておくよう心がけています。
(そうはいっても、現実にはなかなかそうはいかず結構パツパツになりがちですが)
2割の余白があると、見込みよりも時間を要してしまった、思わぬアクシデントで稼働日が減った、といった場合の予備日に充てられるので安心です。(少々のことで納期遅れになりません)
また、興味関心の強いジャンルや今後の成長のためにぜひ関わりたい案件など、チャンスがあったときに名乗りを上げるためには、ある程度のスケジュールの空きがないと無理です。
かといって、あてもなく余白だらけにしていると、経済と精神が不安定になってしまいます。逆に余白がなさすぎると、健康面が不調になりがちです。
短納期の案件ばかりで日々のスケジュールが埋まっていると、何か少しの想定外が発生しただけで、たちまち行き詰まってしまいます。
仕事をこなすだけでなく、スキルアップのための学びや感性を磨くための時間、心身のリフレッシュと休息のための時間も、事前に計画的に入れておくのがライター業を長続きさせるコツです。
私は好不調の波が大きめで、短納期案件は不向きだと自覚しているため、「1ヶ月に●本」など、まとまった数を自分のペースで納品できる案件が合っています。安定収入を確保しつつ、日々の定点観測やご紹介でここぞと感じたタイミング・これぞと思った案件には、迷わず名乗りを上げます。
兼業に都合の良い仕事も見逃さない
フリーランスのライターで生活していくには、安定した仕事量の確保が大きな課題です。
私は執筆案件が減った月にも困らなくて済むよう、エネルギーを大量消費せずに都合良く働ける仕事(固定収入の補填)を、他ジャンルで複数持っています。
ライターとしての稼働時間や体力を消費してしまう面はあるものの、ライター案件だけでどうにかしようと焦らずにいられるので、地雷案件に引っかかりにくくなるのが大きなメリットです。
クラウドソーシングを始めた初期の頃(2018年10月~2020年4月)は、不動産業界のグループ企業(インターネットの2次プロバイダ)にてコールセンターのオペレーターを週3日、地元のコミュニティFM局でラジオパーソナリティーを週1日、中規模医療機関の救急外来で事務当直を月数回こなしながら、それ以外の時間にライティングをしていました。
2020年5月以降は、コールセンターの仕事を辞め、代わりに私立大学の自習施設で夜間受付業務を始めるも、半年間はコロナ禍で休業手当をもらいながら、自宅でライティング三昧。ラジオと救急外来の仕事は継続していました。
2021年11月には、母が病に倒れ長期入院生活を余儀なくされ、自身の持病も再発し、生活が一変。各種手続きや母の世話、目の前の生活に精一杯の日々で、大学と救急外来の仕事を最小限にセーブし、ライティングの継続案件の本数を減らしてもらいながら、無理のない範囲で細々と執筆を続けてきました。
今後の母との生活を考え、2022年1月からはライフスタイルの見直し。2022年3月で救急外来の仕事が契約満了となるのが決まっていたこともあり、現在は某老舗メーカーにて週3回午前中のみ、経営企画アシスタントとしての仕事もさせてもらっています。
朝・昼・夜のどの時間帯にも短時間働ける環境を確保し、それぞれの仕事を状況に応じて増減しながら調整可能です。一気に全てがなくなることはなく、経済的・精神的な最低ラインが自前で維持できます。私はこれを「セルフ・セーフティーネット」と呼んでいます。
現状維持にも努力が必要
私はもともと、コツコツ努力するのが苦手な性分。好奇心旺盛で積極的にチャレンジするけれど、ちょっとかじってはすぐにやめてしまい、何事もなかなか続きません。
一つのことを極めるのはとても苦手。最小限の努力で最大限の結果を得ようとする、ド厚かましい怠け者です。
そんな私が、曲がりなりにもライターとしてお仕事を継続してご依頼いただき、ものかき隊で学び続けられているのは、私の人生の中でかなり珍しい成功事例だと自信をもって言えます。そのくらい、過去の私は続かずに結果を出せないことが多すぎる人生でした。
無理なく続けられる仕事の質と量を見極め、確実にモノにする嗅覚をクラウドソーシングで養い、ものかき隊では積極的に情報交換をしながら切磋琢磨し、少々背伸びをした案件にも関わらせてもらい、今の私があります。
現状維持は退化だという人もいますが、果たして本当にそうなのでしょうか。参入障壁の比較的低いライター業界で、コンスタントに案件受注をし続けるのは容易なことではありません。続けられずに辞めていく人が多いのも現実です。
新たな学びやチャレンジを一切しようとせず、負荷のかからないぬるま湯の中で過ごしたい、ラクをしたいと願うのは退化かもしれません。でも、短期的な成果に惑わされて一喜一憂せず、不調なときでも細く長く継続していく過程において、一定の努力なしには現状を維持することすら困難です。
現状維持で良しと甘んじるのではなく、努力を重ねた結果の現状維持(に見える状態)は成長のひとつの形なのではないかと、私は思います。
大阪ものかき隊の魅力
一人で孤独な努力を続けるのが辛いときにも、励まし合い、情報交換し合える仲間がいると心強いものです。
決してズルやラクをするのではなく、かといって厳しすぎるわけでもない。お互いを尊重し合い、無理なく楽しく続けられる大人の学び場。
言葉で言うのは簡単ですが、そんなありそうでなかなかない絶妙な温度感と距離感を、執行部とメンバーのたゆまぬ努力で維持しつつ、進化し続けている。
大阪ものかき隊は、そういう素敵なコミュニティだと私は思っています。
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