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15_「調査発表会」のフィードバック 【山の日本語学校物語】

これは、とある町に開校した「山の日本語学校(仮名)」の物語です。ITエンジニアの専門日本語教育、プロジェクト型のカリキュラム、地域との連携などなど、新たな言語教育の実践とその可能性について、当時の記録をもとに綴っていきます。最後までお付き合いください。

この連載を始めるに至った経緯については、「00_はじめに」をお読みください。

前回(14回)では、「ふれあいまつり」で行ったインタビューやアンケート調査の結果を報告した「調査発表会」がどのように形成され、どのような場になったのかについて書きました。当時の私は、そこで行われていた「コミュニケーション」を意味のあるものとして捉えることができず、形式的な粗雑さや不正確さばかりが気になってしまったことについて書きました。

今回は、この「調査発表会」のフィードパックをどのように行ったのかについて書きたいと思います。14回で書いたように、この「調査発表会」には、地域に暮らす方をゲストとして招きました。様々な想いが重なり合って創設された「調査発表会」は、学生と地域の方との双方の働きかけにより、コミュニケーションの場が形成されていたのですが、私はそのやりとりの意義を見逃していました。1stプロジェクトのゴールは、「IT技術を使って町の課題を解決するためのアイデアを考える」でした。地域の方からは、まさに「当事者」としての視点が持ち込まれ、「課題とは何か」にフォーカスする絶好のチャンスが生まれました。しかし、当時この点にフォーカスしたフィードバックが行えなかったのが非常に心残りです。

当時の私は、この意義に気づけなかったため、これから描くフィードバックについては、形式にフォーカスしたものであることを、初めにお断りしておきます。ただし、当時の授業記録を読むと、形式とは言いつつも、内容が正確に伝わっていないという点を憂慮しており、「内容を正確に伝えるにはどうすればよいのか」を悩みながら行ったフィードバックでもあります。

フィードバックの方法にはこれといった正解はないと思っています。そのときの状況や直感に基づいて設計されるものでもありますので、当時の私の直感で行ったフィードバックをお読みいただき、他にもどのようなフィードバックが可能だったのかを、ぜひご一緒に考えていただけたらと思います。

フィードバック1日目:非言語にフォーカスする

「調査発表会」のフィードバックは、2日間で行いました。あまりフィードバックに時間をかけることもできなかったため、前半の「アンケート調査」の報告のみにフォーカスしてフィードバックを行いました。後半の「インタビュー調査」は、各チームによって、抱えている問題に違いがありすぎたため、全体で一斉に同じようなフィードバックをするのは難しいと判断したからです。

フィードバックの1日目は、非言語に注目してフィードバックを行うことにしました。初めから言語形式に注目してしまうと、「もっと文法を勉強したほうがいい」「日本語を勉強したほうがいい」などの意見が再燃するのではないかと思ったからです。日本語が不十分であるのは、学習期間を考えれば、それは致し方ないことです。しかし、言語以外でもっと伝えられることがあるのではないかということを意識してもらおうという考えがありました。

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