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宝塚歌劇

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全組観劇派。ご贔屓は演出家の上田久美子女史です!!個々のジェンヌさんより全体のシナリオや演出について書いています。
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記事一覧

『FLYING SAPA』 演出家ウエクミの脳内を廻りたい・・・!

『FLYING SAPA』 演出家ウエクミの脳内を廻りたい・・・!

⓪はじめにご無沙汰しております。

遅筆×激務で投稿が滞りがちな私も、時間さえあればコンスタントに投稿できるものだと思っていたのだが、コロナによって普段よりお暇ができるとかえって何だか書く気が起こらず…気づけば最後の投稿から3ヶ月近く経ってしまった。
皆さま、お変わりないでしょうか?

この3ヶ月の間、せっせと作品のインプットの方に精を出して来たわけだが、遂にこれは何としても記事を1本したためなけ

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【月雲の皇子④】言葉で語らない、引き算の美学/言葉の外側の世界とつながる(演出)

【月雲の皇子④】言葉で語らない、引き算の美学/言葉の外側の世界とつながる(演出)

美しいもの、世界の不思議、深い悲しみ、誰かを愛しいと感じる想い・・・

そんなものに出会う度に、私は言葉の不完全さを認めずにはいられない。
言葉は人間が生み出した有限のツールであり、この世には言葉では言い表せないものの方が遥かに多い。言葉の外側に遥かな世界が広がっていると言ってもいい。
そんな遥かな世界と繋がるために、直接的な言葉の使用を封印した作品があらゆる芸術の世界に存在する。その中でも、こと

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ミュージカル「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」が示す“じゃない方”の生き様

ミュージカル「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」が示す“じゃない方”の生き様

漠然と「何者かになりたい」という焦燥感に襲われることがある。
それも、かなり強めの焦燥感に。
これは20代に特有の病なのか、それとも、この先更に強まっていく類のものなのか・・・?

先日、Twitterで「バブル世代の購買欲が今の若者に理解されないように、今の若者の承認欲求もいずれまったく理解されなくなるのでは?」といった内容の投稿を見た。
承認欲求なんて人類に普遍的に備わる願望だと思っていたが、

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星組公演『眩耀の谷』で浴びる謝珠栄ワールド!

星組公演『眩耀の谷』で浴びる謝珠栄ワールド!

面白いアイデアや素晴らしい作品を見つけると、私は図々しくも
自分にもこれが閃いた可能性があったか?
これは私の今後の創作活動に転用可能か?
ということを考える。

そして、昨日見た宝塚歌劇団星組公演『眩耀の谷』に関して言えば、私がどれだけ文献を引っ張り時代考証したとしても、どれだけ時間をかけて頭を捻ったとしても、絶対真似できないなと思う作品だった。

『眩耀の谷』は星組新トップスター礼真琴のお披露

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【出島小宇宙戦争】 実力派 鳳月杏のセンタースポットに思う。

【出島小宇宙戦争】 実力派 鳳月杏のセンタースポットに思う。

名脇役って一番凄い。
主役ひとりのスター性で持っている作品より、わき役の個性が引き立つ作品のほうがはるかに締まるものだ。

それを言うと、鳳月杏ほど今の宝塚の舞台を締める名脇役はいないのではないかと思う。
鳳月杏は“THE トップスター”と言うには正直華に欠け、癖が強すぎるのだが、どの組に行っても唯一無二の存在感で作品を支えている。いぶし銀のような理性的な冷たさと渋み、そして内に秘めたる情熱が共存

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【月雲の皇子①】私の1番好きな物語を語ります。

【月雲の皇子①】私の1番好きな物語を語ります。

青天に花吹雪が舞う。
この週末はまさにお花見日和だ。
にも関わらず、今年は桜の木の下にシートを広げられないのが残念でならない。

こんなご時世なので、SNSではどうやら桜の写真を見ながら自宅で飲み食いする「エア花見」というものがにわかに流行っているらしい。
でも、それってすごく味気ないのでは?
どうせデバイス上で花見をするなら、“桜”をテーマにした映画や演劇のDVDでも観ながら酒を飲んだ方が遥かに

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【月雲の皇子②】宝塚史上最もボロボロになる主役/少女漫画と少年漫画の塩梅(表テーマ)

【月雲の皇子②】宝塚史上最もボロボロになる主役/少女漫画と少年漫画の塩梅(表テーマ)

私が最も好きな物語「月雲の皇子」連載第2回。

第1回で「月雲の皇子」には衣通姫伝説を下敷きにした三兄弟の悲劇という表のテーマと、物語の中で「物語とは何たるか」を物語るという裏テーマがあると述べた。

今回はその表テーマについて。

衣通姫伝説の概要については第1回で述べたので、今回はこの物語の登場人物に即して説明したい。

主人公は大和朝廷の第一皇子である木梨軽皇子(キナシカルノミコ・珠城りょう

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【月雲の皇子③】「物語の中で『物語とは何たるか』を物語る」という試み(裏テーマ)

【月雲の皇子③】「物語の中で『物語とは何たるか』を物語る」という試み(裏テーマ)

『月雲の皇子』連載第3回。

*第1回、第2回はこちら。

本作を担当し、私が心酔している演出家、上田久美子女史。

上田先生の作品はどれも名作揃いで甲乙つけがたいのだが、私は「1番好きな物語を語ります」と銘打ってこの連載を開始した。

正直、小劇場なのでセットには限界があるし、キャストの歌唱力にも不足を感じるので、完成度の高いうえくみ作品として人に勧めることはまずない。
それでもこの作品を最も好

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