小説家になろうよ

 子供の頃から沢山の本を読んでいた。写真やイラストがふんだんに載った鉄道図鑑や、幼稚園で買った子供向けの図鑑に始まり、ウルトラマンやゴジラの怪獣図鑑、プロレス雑誌、そこからプロレスラーや関係者の単行本を読み漁った。同時期に母が沢山持っていた文庫本の中に揃っていた椎名誠の小説やエッセイ、ルポルタージュにハマることになった。きっかけは、私のプロレス好きを知った母の

「この人、プロレス好きなんだよ」
 というひと言を添えて手渡された、あやしい探検隊海で笑う、という本だった

 そこから椎名さんの著作は勿論のこと色んな人の小説やエッセイを読みふけっていった。そして自分でも文章を書いて、それを誰かに読んで欲しいと思うようになった
 始めはルーズリーフのノートにボールペンで書き連ねたものを、同級生の友達に読んでもらっていた。当時、好きだった女の子がそれを読んで
「これ面白いね!」
 といってくれたから、ちょうど20年経った今でも書き続けることが出来ている

 紆余曲折あって、私はホラー小説を書き始めていた。初めはmixiに載せていた。それに手直しを重ね、何度もいろんなサイトに載せては消していた。そして某サイトに掲載したその怪談シリーズが、某社の編集者さんに発見して頂きホラー小説アンソロジーに収録されることになった。思わぬ形でデビューを飾ることが出来たけれど、それ以来音沙汰なし。売れ行きが悪かったのか面白くなかったのか、あるいは両方か……チャンスをものにすることが出来ず、私はまた読む人も知れないようなお話をコツコツと書き続ける日々に戻った。自分の原稿に期待し、待っていてくれる人が居る──こんなに嬉しく、また緊張する感覚は中々味わえないだろう
 自分のアタマのなかで生み出された物語、これまでの人生を紡いだストーリーが具現化し目の前に現れるなんて。まるで夢のような瞬間だったが、夢のままで終わらせたくない
 いつ、誰が、どこで読んでくれるかわからない。希望に満ち溢れているようで、呆れるほど茫洋とした期待を込めて。まるで大海原に託した瓶詰の手紙を誰かに拾ってもらうかのような、砂に書いた手紙が消えないように浜辺に立ち続けているような
 それでも僕は続きを書くし、新しいお話も考えている
 いつかもっと沢山の人に読まれるように
 いつかもっと沢山の物語の中で生きられるように
 これまでの人生も、これからの人生も、情緒豊かで面白い物語であるように。僕も君もあなたも其方も、おとなもこどももおねーさんも
 小説家になろうよ

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