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[9月第3週] DAOレポート Vol.37 | 「クリプトは新たな惑星」論 - 非連続な新たな世界で既存Web2プレイヤーがやるべきことは?

イントロ

Web3の時代とは、Web2の時代に置き換わるものではなく、Web2の時代と並行して存在し続けるものである。この「Web3パラレルワールド説」を筆者は信じている。Web3とは、Web2のプレイヤーが「Web3的な要素」を取り入れて進化するという話ではないWeb3の世界は、Web2の世界とは非連続的であり、全く新しい世界、全く新しい住民たちのストーリーだ。

Web3パラレルワールド説は、最近流行りのWeb2.5と一線を画す考えだ。Web2.5では既存のWeb2プレイヤーがWeb3的な要素を取り入れてWeb3とWeb2の中間の世界を作ることを目指しているようだが、これは的外れな気がしている。Web2のプレイヤーが目指すべきは、今の世界で自分たちが Web3的になろうとすることではなく、全く別世界であるWeb3に外部プレイヤーとして参加することだろう。Web3の世界は、ビットコイン革命を皮切りに規模は小さいが既にできつつあり、確かに存在する。「一足飛びにWeb3に行くのが難しいから、前例がないから・・・」という事実はなく、覚悟があるかないかの話だ。

(そもそもWeb3という言葉自体がビットコイナーやクリプトOGからすると違和感かもしれないが、今回は分かりやすさ重視でWeb3をクリプトと同じ意味で使う。)

上記のような概念的な話は重要だと考えている。賛成するか反対するかはさておき、そもそもの思想の違いについて理解をする必要があるのではないだろうか。「Web3」と聞けば「Web2の続き」と一般の人は思うだろう。なぜそれは間違っていると言えるのか?まずは業界内部でもっとWeb3の思想的な議論を進めるべきだろう。

先週、dYdXへの出資企業でもあるParadigmが、「The Casino on Mars」というタイトルのブログで、Web3の思想的な議論に大きな貢献を果たした。「クリプトについて、移住が始まった新たな惑星と考えると分かりやすい」という一文から始まるブログは必読だ。

出典: Paradigm「The Casino on Mars」
新しいクリプトの惑星。最初の移住者はビットコイナーだった。コインベースやバイナンスのような取引所は、惑星の出入りに使う。イーサリアムは最大の都市で、Uniswapはその最大都市で最も便利な移動手段だ・・・

新たな惑星としてのクリプト

新たな惑星は、何もない「空っぽの状態」だ。既に多くのプレイヤーがごった返している地球には、もう未開の地はなく、何か新しいことをするとすれば、既存プレイヤーとの調整が必要であろう。大概、その調整は困難でありどこかで妥協を強いられることになるのがオチというのは皆さんも経験済みなのでないだろうか。新たな惑星は白紙スタートなので、そんなことをする必要がない。まさに欧州からの米国大陸移住者が西部開拓をした時と同じ境地なのだろう。

当然、新たな惑星において、新たな金融システムや新たなインターネットのプラットフォームの構築は容易だ。多くの既存システムは、「デジタル時代以前の遺物」であり「もろく、硬直している」。中央集権化した巨大な既得権益層がのさばる地球は、もう身動きは取れない(しかし、革命や戦争による力での現状変更は、今の時代、誰も望まないだろう)。一方、クリプトによって、以前は不可能だった新しいシステムを構築することができる。

  • DeFi・・・新たな惑星の住民が使うプロダクト

  • CeFi・・・地球と新たな惑星のブリッジ

  • フィンテックが使うステーブルコイン・・・地球人による新たな惑星の技術の使用

新たな惑星におけるインフラ整備には時間がかかる。まもなく惑星への最初の移住開始から15年が経過するが、まだ道半ばであることは間違いない。上記の画像からもわかるように、いくつか「燃えている」インフラも散見される。今後の課題はParadigmも言うように、インフラの成熟化であり、地球の人々を新たな惑星に移住することを呼びかけることになるだろう。

Web2がやってはいけないこと

Paradigmは、上記のクリプト惑星論を理解せずに失敗する例として以下のように述べている。

新たな惑星に固有の特徴を理解できずに失敗する例として、一時期、複数の銀行の間で「ビットコインではなくブロックチェーン」というフレーズが流行ったことが挙げられる。これは、銀行に壁紙を貼り付けて新たな惑星のように見せかけたに等しい行為だ。あくまで自分たちは地球にある銀行に過ぎないことに気づかず、完全に本質を外している。

出典: Paradigm「The Casino on Mars」

上記の失敗例を踏まえ、Web2プレイヤーがやってはいけないことは、新たな惑星のプロダクトを無理やり地球でプロデュースすることと言えるだろう。既存プレイヤーが地球という制約の中でDeFiやDAOをやることは難しく、何かしらの重要な要素が欠けた中途半端な形になってしまう可能性が高い。そうではなく、Web2プレイヤーは、新たな惑星への移住を目指すべきであろう。

例えば、dYdXのDAOには、Wintermuteなど地球でバリバリ活躍する企業が参画している。彼らは地球人向けのWintermuteのプロダクトとして分散型取引所(DEX)の開発をしようとしているわけではない。新たな惑星においてdYdXをどう大きくしていくかという議論に一つのプレイヤーとして参加しているのだ。他にも新たな惑星には、サービスプロバイダーとしての参画やバリデーターとしての参画、惑星と地球のブリッジとしての参画など色々と方法があるだろう。

Pradigmのブログを通して、新たな惑星のプロダクト作りを地球に居座り続けながら行うことがなぜ間違いなのかが分かる(新たな惑星で開発されたプロダクトを地球に持ってきて使うというならまだ分かる)。少なくとも近い将来、新たな惑星は地球を侵略しないだろう(つまり、今の地球人が全ての生活を捨てて新たな惑星に住まなければいけない時代はしばらく来ないだろうし、永遠に来ないのかもしれない。だからこそのパラレルワールド説だ)。なので、地球に固執したいのであれば、これまで通りの制約の中で、地球の便利な生活の向上のために貢献すれば良いだろう。しかし、これはクリプトの話とは本質的に別であることを理解すべきだ。

今後も、クリプト惑星論の成熟化に向けた議論が重要になるだろう。

注目のDAOトピック

  •  💬 Cosmos Hub ATOMのインフレ率変更を提案

    • Blockworksは、Cosmos HubのネイティブトークンであるATOMの通貨政策の変更を提案するフォーラムポストを公開。

    • 提案された変更は、時折論争の的となるCosmos Hubのトークノミクスを近代化し、強化することを目指す。

    • Blockworksチームは、現行のダイナミックインフレーションモデルから静的供給スケジュールへの移行を含む。修正されたインフレーションスケジュールでは、ATOMの将来の供給量が約600百万から約500百万に徐々に減少することが示唆されている。

    • 現在、Cosmos Hubは、ATOMボンド比率に基づくダイナミックインフレーションモデルを採用。ボンド比率が66%を超えるとインフレーションは減少し、66%未満になると増加。

    • しかし、リキッド・ステーキングの出現に伴い、このメカニズムは現在、時代遅れと見なされている。

  • 🔥Optimism Optimism開発と普及への貢献者に3000万OPトークン付与へ

    • RetroPGF 3は、Optimismの開発と採用を支援した貢献者に報いるために3000万OPトークンを割り当てる予定。

    • RetroPGFへの適格性は、Optimism Collectiveにすでに影響を与えているすべての開発者と貢献者であり、未来の約束よりも過去の貢献に焦点を当ててる。

    • 申請プロセスは、貢献の説明、貢献リンクの提供、影響カテゴリの選択、影響の説明、および貢献に関連する助成金と資金の開示を含みます。

話題のTweet

来年の大統領選と議会選に向けてコインベースは動き出しています。

トレジャリーデータ

DeepDAOによると、9月25日時点でDAOトレジャリーの総額は175億ドルと前週比で3.85%減少した。内訳は、流動性のある資産(Liquid)が155億ドル、権利が確定していない資産(Vesting)が23億ドルだった。
ガバナンストークン保有者は760万人で、アクティブDAOユーザーは270万人だった。

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