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【1月第3週】DAOレポート Vol.2

先週、老舗DeFiのDAOで起きた投票が物議を醸している。

仮想通貨担保型ステーブルコインDAIを発行するMaker DAOが、1月20日、DAIの流動性を担保する準備資産として、取引所ジェミナイのステーブルコインであるGUSDを引き続き採用することを可決した。この投票、今後のDeFi(分散型金融)やDAO(自律分散型組織)のガバナンスをめぐる様々な要素がつまっており、議論を呼んだ。

大きく分けて3つの論点がある。

分散型の世界を目指すMaker DAOにとって中央集権型のステーブルコインであるGUSDにDAIを依存させることは問題ではないか?

ジェミナイは米国の大手仮想通貨取引所だが、実はGUSDの供給量の85%をMaker DAOが保有している。GUSDは、Maker DAOに依存しすぎではないのか?

今回の投票はかなり接戦だった。「GUSDを引き続き採用」への投票は50.85%、「GUSDの割合をゼロにする」は49.15%。しかも、投票終了直前に賛成票が一気に増えた。ジェミナイに出資するParaFi Capitalが、全ての票数の7.5%にあたる10,000 MKRトークンを、投票終了直前に賛成派の急先鋒であるGFX Labsに委任した。こうした投票行動は問題ないのか?

2022年は、FTXやBlockFiをはじめCEXやCeFiの限界が露呈された年だった。一方で、第三者に資産管理を任せないセルフカストディが基本のDeFiやDEXに対する評価は上昇した。こうした流れの中で、Chris Blecなど反対派は、分散型のステーブルコインを中央集権型のステーブルコインが支える構図を不安視しているようだ。

そして、ジェミナイは今、ブローカー事業者ジェネシスと、その親会社デジタル・カレンシー・グループ(DCG)に9億ドルの貸しがあるという立場だ。

3点目の投票行動についても是非を問う議論が続いている。現在のルール上は問題ないだろうが、投票終了直前に一気に票が動く状況というのは果たして健全なガバナンスなのか疑問が残るだろう。

一方、イーサリアムのレイヤー2のガバナンスをめぐる動きが活発だ。

今月、レイヤー2のArbitrumとOptimismの取引数がイーサリアムを上回ったが、Optimismのデリゲート(ガバナンストークン保有者から投票を委任される個人・組織)に、Uniswapや0x、Mirrorなど大手のプロトコルやプロジェクトが名乗りをあげた。巨大プロトコル同士が、エコシステムを共有するお互いのDAOガバナンスを支え合う構図は今後も増えるかもしれない。

先週はビットコインが2万ドルを回復し、弱気相場の底がついたのではという声も聞かれる。しかし、世界有数のDeFiやNFTプロジェクトであってもDAOのトレジャリーの運用見直しの流れが続いている。SushiやBalancer、IlluviumのDAOでは、弱気相場を乗り越えるため、収益分配の見直しやコスト削減、DeFiでの運用など、様々な提案・投票が実施された。

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