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100-大建中湯より愛をこめて-山椒編①

EBM世代にとっての漢方

ツムラ細粒(100),コタロー細粒(N100)
カンキョウ5.0 サンショウ2.0 ニンジン3.0 粉末飴10.0
〔ツムラ 15g,コタロー27g〕

()は組成・1日容量(g) 南江堂,今日の治療薬2023,p1171を引用

 漢方処方については様々な見解がある。中医学か日本漢方か、それぞれの中でも流派は数えきれぬほど、何の古典を重んじているか?、師匠は?、日々、津々浦々で様々な漢方勉強会が開催されている。
 そもそも同じ名前の方剤でも販売元で1日量が異なるのがややこしい。ツムラ100番を処方すれば1日量6包(15g)なのに対し、コタロー100番は1日量9包(27g)なのだ。
 それでも私は漢方に惹かれている。

 医療者側でも患者側でも、漢方については好き派と嫌い派はくっきりはっきり。現代医学においてEBMなしの治療方針・投薬は悪であると私は教えを受けた世代だ。漢方製剤には臨床試験結果・統計データを併記せず、まことしやかに昔から使われてきたからとの理由でかどうかは明らかではないが、保険診療薬として承認されているものがほとんどだ。EBM世代の医者にとって漢方製剤はほらね、と何かモヤっとしたものがあるのは想像できる。
 でも、惹かれるのだ。

あの子が好きだけど声をかける勇気が無くて困っている。

 大建中湯には『ツムラ大建中湯 エキス顆粒(医療用)に関する 副作用発現頻度調査(Prog Med. 2012, 32(9), p.1973-1982.)』なるものがあるが、例えばツムラの添付文書(2023年12月改定版)には防風通聖散による間質性肺炎の頻度は不明と記されている。
 私は防風通聖散による薬剤性肺障害患者を担当したことがあり、その経験を通じて漢方は恐ろしいと怯えるようになった。漢方が大好きなのに実際に処方するのは躊躇してしまう弱腰だ。
 患者は太り気味なのが気になってかかりつけの医者に相談したところ、この薬が処方されたというのだ。患者はいかにもな証で、わたしもそう相談されたら62番を処方するだろう。ごくありふれたエピソードだ。でも私の患者はこの薬のせいで死にかかったのだ。かかりつけ医から処方されなくとも、この62番はドラックストアで容易に手に入る。
 そういう漢方の恐ろしさを感じつつも、漢方の魅力を感じている身にとって、100番大建中湯はとっかかりやすい方剤だと私は思う。

大建中湯からの再出発

 大建中湯の原材料はオタネニンジン+生姜+山椒+飴ちゃん。まったく副作用がないとは言えない。しかし、朝鮮人参を日常的にとっている人は少ないかもしれないが、生姜や山椒は食べる人は多いんではなかろうか。

漢方は「医学⊂芸術」ってことを教えてくれる

 漢方が面白い点は、効く人には効く、効かない人には全く効かない、水と油の性質のようだ。漢方の診断過程・処方の仕方はまさに芸術だと思う。
 芸術は実践あるのみ。そこで私は、今回、山椒について私の体を使って学習することにした。まずは山椒を使った身近な料理から試していきたい。

 次回につづく。

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