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最近読んだ本など

本、特に小説について語るのは難しいと思っていてこれまで書くのを避けてきたけど少し思い立って、ここ数週間で読んだものを簡単に紹介してみようと思う。受動的な消費コンテンツ溢れる昨今の世の中で、なんか本読むことって良いなーと最近よく思ったりしています。

詳細にではなく、あくまで簡易的な紹介という感じで。あらすじはそのまま引用してます。


・『空港にて』 村上龍

コンビニ、居酒屋、公園、カラオケルーム、披露宴会場、クリスマス、駅前、空港―。日本のどこにでもある場所を舞台に、時間を凝縮させた手法を使って、他人と共有できない個別の希望を描いた短編小説集。村上龍が三十年に及ぶ作家生活で「最高の短編を書いた」という「空港にて」の他、日本文学史に刻まれるべき全八編。


まさに最高の短編集だった。とても短い時間の出来事を物語として凝縮させ、20ページ程に落とし込んで描写し意味を持たせる、という技量がすさまじい。

ユーモラスもあり、時々、声を出して笑った。心揺さぶられ、涙も流した。表題でもある「空港にて」は読み終わった後、大きなため息が出た。それほど凄かった。

古本屋にて税込110円で投げ売りされていて、何となく買ってみたが、こんな傑作と巡り会えるとは。こういう出会いって本当に嬉しく思う。


本1


・『インストール』 綿矢りさ

学校生活&受験勉強からドロップアウトすることを決めた高校生、朝子。ゴミ捨て場で出会った小学生、かずよしに誘われておんぼろコンピューターでボロもうけを企てるが!?押入れの秘密のコンピューター部屋から覗いた大人の世界を通して、二人の成長を描く第三八回文藝賞受賞作。書き下ろし短篇を併録。


当時17歳、綿矢りささんのデビュー作。文体が非常に読みやすいので短時間でするすると読める。まず設定が面白くて、コンピューターの描写に時代性を感じたり、場面のテンポ感も良かった。でも解説で高橋源一郎さんが「完璧」という言葉で大絶賛していたのは少し疑問で、そこまでかなーとは正直思った。

書き下ろし短編の「You can keep it.」の方は三人称で書かれていた。自分をよく見せようとしてついてしまう嘘と、それが故のすれ違いとか、やや過剰な設定ではあったけどティーン・エージャーな青春って感じでいい。


本2


・『一人称単数』 村上春樹

「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。しかしその切り口が増えていけばいくほど、「単眼」はきりなく絡み合った「複眼」となる。そしてそこでは、私はもう私でなくなり、僕はもう僕でなくなっていく。そして、そう、あなたはもうあなたでなくなっていく。そこで何が起こり、何が起こらなかったのか? 「一人称単数」の世界にようこそ。


昨年刊行された村上春樹の、最新の短編集。今更だがようやく読んだ。村上春樹については、特に鼠三部作(風の歌を聴け、1973年のピンボール、羊を巡る冒険)や『ノルウェイの森』など中、長編ばかり読んでいたけど、これも面白かった。

デビュー作を思い起こさせる設定や描写があったり、彼らしい要素が詰まっていて読み進めるのにワクワクした。どこかリアリズムと距離感のあるストーリーがまた彼らしいな、という感じ。でも、そこの好みは分かれると思う。4つ目の「ウィズ・ザ・ビートルズ」という話が個人的にすごく良かった。読みながら音楽を感じられる物語というのも特徴的だと思っていて、本人も確か以前、BGMが聞こえてくるような小説を書きたいと言っていた気がする。


本3


村上春樹の作品は他に『東京奇譚集』『女のいない男たち』も買ったので近いうちに読もうと思う。


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以前の僕は、小説は長い方が良いと思っていたけれど、最近は短編を好んで読んでいたりする。「新潮」6月号に載っていた、千葉雅也さんの『マジックミラー』も面白かった。千葉さんといえば『デッドライン』に続いて『オーバーヒート』が次回の芥川賞候補になっていて、個人的に以前から注目していた人だからなんか嬉しい。来月の発表を楽しみにしてる。

他に読んだものというと、町屋良平さんの『1R1分34秒』を半分ほど読み進めて止めてしまった。何だかハマれなかった。読むときの心持ちなどもあり、途中で読むのを止めてしまうことって偶にある。また時間を空けて読み直したいな。

あと遠野遥さんの『改良』を買ったので、これから読む。以前読んだ『破局』がかなり衝撃だったからデビュー作であるこちらも楽しみ。もうすぐ発表される3作目の『教育』も多分読むと思う。


岡崎京子さんの漫画、読んでなかったものを少し買い足した。これでほとんど揃ったかな。やはり岡崎さんの漫画は文学だと思う。この中では特に『カトゥーンズ』が素晴らしかった。テーマが良い。

私達はそれぞれの人生の主人公であり、他人にとってはワキ役であり、そしてそれは同時に起こり得ることです。 後書きにこうあるけどその通り、それぞれの主人公とワキ役がすれ違いながら、短い24の物語がどんどん続いていく。斬新だった。


本5

本4



また本については書こうと思います。では。


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