見出し画像

「具体⇔抽象」思考のススメ

皆さんこんにちは。
良く「具体と抽象を使い分けて考えて」という話を聞きますが、それって実際どういうこと?と思った経験はありませんか?
具体的、抽象的という言葉自体は聞いたことがあっても、考える上でそれを使い分けるというのはピンとこないかもしれません。
私も以前同じようなことを言われましたが良くわからず苦労しました。

その後自分なりに書籍や人の話から情報を得ながら、またビジネススクールの授業でロジカルシンキングを学びながら、今はある程度「具体と抽象の使い分け」ができるようになりました。
今回は自分のそんな経験から、「具体と抽象を使い分け」て、もっと言うと、「具体と抽象を行き来」して、日常のあらゆる物事からヒントを得られるような思考法について紹介したいと思います。

「具体⇔抽象」の行き来ができるメリット

実際具体と抽象の行き来ができると、何が良いのでしょうか。
簡単に言うと、今まで学んだ事を他の分野にも活かせるようになる点です。

たとえばあなたが文房具を売る営業マンだとします。A社で10年間営業をしてきて、A社の製品を売る技術には優れていると考えます。
仮に「具体⇔抽象」ができないと、この人の持っている能力は「A社の文房具を売る」ことに限定されたものになってしまいます。
しかし「具体⇔抽象」の方法を駆使できると、「ソフトウェアを売るB社」でも営業として活躍する力を身に付けられます。
異動や転職でも有効な「ポータブルな能力」を身に付けられるというわけです。
一つ一つの知識やスキルを個別に学ばなくても良い、というのが最大のメリットです。

ではどのようにすれば「具体⇔抽象」ができるようになるのか。順にみていきましょう。

「具体と抽象」は、相対的

そもそも何が「具体的」で何が「抽象的」なのか?これを私は最初に疑問に思いました。
具体的と抽象的という言葉に対しては、


抽象的⇒ふわっとしていて良く分からない、大きな括り・・
具体的⇒言葉で明確に表せ、手が届きそうな距離感・・

のようなイメージがありました。

このイメージ自体は間違いではありません。
しかし実際の所、具体的な表現と抽象的な表現の間に線引きをするのは難しいです。なぜなら、具体と抽象というのは、常に相対的な概念だからです。

例えば・・「Cさんの通勤方法は何ですか?」という質問に対して、
「電車です」と答えたとします。これは具体的でしょうか、それとも抽象的?

何となく、抽象的っぽく聞こえる人が多いのではないでしょうか?なぜならこの質問の前提に、「電車で通っている人が多いよね」というイメージがあるからです。
では「JR線を使っています」と答えたらどうでしょうか。先ほどより大分具体的になりましたよね?
では、「電車」は抽象的で、「JR線」は具体的なのでしょうか。

この2つを比べた際には、正しいです。しかしここに更に、「公共交通機関です」「8:12分品川発の山手線」という答えが加わった場合はどうでしょうか。一番抽象的なのは「公共交通機関」で、一番具体的なのは「8:12分品川発の山手線」ですよね?

つまり何と何を比べるかによって、具体的なのか抽象的なのかが変わるのです。

「具体と抽象を使い分ける」と考えたとき、まずこれは常に一定の決まりがあるわけではなく、あくまでも相対的な話なのだと意識する必要があります。

層別に考える

ではどのように考えればよいのか?
先ほどの電車の例ですが、それを図にすると下記のようになります。

具体抽象マップ

図にしてみると、それぞれの関係性が分かりやすくなりますね。
つまり、上に行けば行くほど「抽象的」になり、逆に下に行くと「具体的」になるというイメージです。
ここで重要なのが、「層別(レイヤー別)思考」です。それぞれの言葉を、上記のような図を頭の中に思い浮かべながら、「一体どの層の話をしているのか?」を意識するのです。

これは会社員にも非常に有効な思考法です。
会社の経営ビジョンや目標というのは、現場の営業目標に比べるとかなり抽象的ですよね?会社のビジョンや経営目標は毎日聞かされているけど、一営業マンでしかない自分はどうすれば良いのだろうか・・
そんな事を悩んだ若手ビジネスマンの方もいるかもしれません。

会社組織における目標も、上記の構造とほとんど一緒です。役職のピラミッドが上に行くほど目標は抽象的になり、現場レベルまで落とし込むほど具体的になります。具体的な目標を積み重ねて全社目標を達成する・・という目的があるからこそ、各階層でKPIが設定されるのです。

具体と抽象2

例えば①の層で掲げられることは「人々の生活を豊かにする!」のような、大きな括りのイメージであることが多いです。
一方で営業マンが関係してくるのは④の層で、「当月の販売目標〇〇本!」という形でKPIが設定されることもありますよね。
一見すると全く関連性の見えない上記の二つですが、具体と抽象の概念を理解すると、全体観をイメージすることができます。

日常生活の中でも同様です。
人と話をする際にも、今自分が話している内容はどのレイヤーの話なのかを常に意識してみましょう。

具体と抽象4

「具体⇒抽象」は、エッセンスの抽出

「具体から抽象への変換」は、まさに「エッセンスの抽出」です。
「A社で文房具を売るスキル」「B社でソフトウェアを売るスキル」をもっと抽象的にすると、「営業スキル」となりますよね。つまり、A社で身に付けた個別のスキルや経験を「一般化」して表現するということです。
それを一般化できれば、B社でソフトウェアを売る際にも適用できます。もっと言えば、不動産業界のC社にも適用できます。

エッセンスの抽出方法としては、まず個別の経験やスキルを書き出してみましょう
最初は凄く具体的なポイントでも良いです。例えば「付き合いの長い顧客Dに対して、毎日足しげく訪問して追加発注をとれた」でも良いんです。
これを、「層別思考」を意識して、一つ上の層(レイヤー)に上げてみましょう。

例えば上記の例で「付き合いの長い顧客Dに対して、毎日足しげく訪問して追加発注」からエッセンスを抜き取ると、


・「既存顧客への継続フォローの中で、新たな課題発見をすることができる」や、
・「発見した課題に対して適切なタイミングで適切な提案ができる」


という言い方ができますね。
最初の一文と比べると、抽象的になりました。
続いてこれをB社のケースに当てはまるように具体化する

具体と抽象3

この一連の流れが、「具体⇔抽象」です。

たとえ話を使った練習法

もちろん、いきなり仕事のスキルを抽象化する訓練をしてみても良いです。
もしそれが難しいと感じる人は、「たとえ話」で練習してみると良いでしょう。

たとえ話をする時の論理構造も、上の図の「具体⇔抽象」と全く一緒です。気づきましたか?
ちなみに私は高校生の時に、「あまり強くないうちの学校のテニス部の、同期の一人が市民大会で勝ち上がり、更に大きなトーナメントに出れることになった。しかもその1回戦の相手はプロらしい」という話を教室でしていたら、当時の教師から「テニスの事よく分からないんだけど・・なんか他の例で例えて?」と言われました。正直、全く上手いたとえ話ができませんでした笑

当時私が言った(と記憶している)、赤面もののダメ例は

「例えば、あまり強くない卓球部のエースが試合で勝ち進んで、プロも出る大会に出れるようになった・・・みたいな感じです。」

もう最悪ですね笑
単にテニス⇒卓球に変換して、コンパクトにまとめただけです・・。
短くはまとまっていますが、他の例にはなっていません。

ここで求められたことは、

1.テニスの話を抽象化(一般論化)
2.その教師にも分かる分野の話に再度具体化(落とし込み)

でした。上の例は、これらができていませんね。

仮にまず抽象化してエッセンスを抽出するならば、キーワードになるのは

・全然実績もない組織から、一人ポツンと結果を出した人間がいる
・普段よりも一段高いレベルの環境にいけることになった
・そこにはその道のプロもいる

といった形でしょうか(そもそもこのテニスの例がちょっと難しかったかもしれません・・)
相手が教師だったことを踏まえ、そちらに寄せてみると・・例えば、

「偏差値50位の高校から現役で東大に入った」

という感じで答えられれば、もっとイメージしやすいたとえ話になったと思います。(これが上手い例かどうかは置いておいて・・・)

このように、「具体⇔抽象」の思考は日常にある話題を使っても練習することができます。


まとめ

いかがでしたか。
ここまで、「具体と抽象を行き来」することのメリットや、実践する方法などを見てきました。

もう一度簡単にまとめます。

・「具体⇔抽象」のメリットはポータブルな能力を身に付けられる点
・レイヤーを意識して考えることが重要
・日常の中にあるたとえ話で練習できる

癖がついてくると、頭の中に図が浮かんできて、今自分がどこのレイヤーの話をしているのかが分かるようになります。
習慣になるまで繰り返し練習し、身に付けていきましょう!




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?