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実践的ではない教科書(エッセイ 過去作品と同内容)

日本の英語の教科書は、よく実践的ではないと言われる。ネイティブはこんな事言わない、とか言い回しが古臭い、とか言われ、日々炎上している。I have a pen、なんて誰が言うの?見たいな。

しかし、海外の言語を学ぶ教科書はもっと実践的ではない。フリーダムと言っていい。

筆者が今持っているドイツ語の教科書を例にとる。登場人物紹介だけでも、濃い。カスタマーサービスで働くアンジェラ、アンジェラの元カレマーカス、アンジェラの今カレのメフメット、メフメットの財務アドバイザー、探偵、探偵の助手。

一体、人生で財務アドバイザーなんて単語を使う機会はどのくらいあるのか。教科書に載せるべき単語なのか。しかし、ストーリー展開はさらに濃い。

物語は、アンジェラとマーカスが付き合っていた頃から始まる。銀行員のマーカスは、忙しさからアンジェラの作った朝食も食べずに出て行ってしまう。それを嘆くアンジェラ。そんな中、オフィスの近くにある食品店のオーナー、メフメットと親しくなり...。

昼ドラかな?なんだこのドロドロの話は。正直、話が気になって勉強が身に入らない。マーカスの気持ちも分かるけど、メフメットも魅力的だし...。じゃないのよ。ストーリー形式で楽しく学べます、の範囲を超えてる。ネットフリックスで実写化できるだろこれ。

という訳で、別に海外の教科書も実用的ではない。財務アドバイザー、なんて単語を覚えさせられるだけだ。では何故、日本の教科書だけ叩かれがちなのか。もちろん、ここは日本だからで済む話だ。それに、日本人が英語を全く喋れないという問題もある。つまり、結果を出せていない教科書なので、叩かれている。

しかし、あえて言いたい。それは教科書だけの問題なのか?と。中身が実践的になれば、スラスラと英語を喋り出すのか?と。ネイティブが使う表現を使えばいいのか?と。多分、本質はそこではない。

結局、英語を使う機会があるか否かなのだ。使えば、表現なんて相手からいくらでも教えてもらえるから、どんどんネイティブに近づく。けど、使わない。だから、本腰なんて誰も入れない。それだけの話なのだ。

教科書がI have a penだろうが、そうで無かろうが、喋る機会なんてない。これが今の現実である。今後、英語を話す機会が日本でも増えるかもしれない。けれど、その時はI have a penでいいと思う。向こうだって、ドイツ語はアンジェラとメフメットで学んでいる。そう考えれば、別に実践的な言葉が喋れなくても、恥ずかしくはない。会話の中で学んでいけばいいのだから。会話のネタが思いつかなければ、こんな質問をすれば良い。Which is your favorite, Markus or Mehmet?(マーカスとメフメット、どっちが好き?)と。

え?向こうがドイツ語専攻じゃなかった時?食べ物の話でもすればいいじゃない。Do you like sushi?とか言っとけばなんとかなるって。

※Markusはドイツ語のスペリング。英語では、Marcusが正しいスペリングです。

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