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ずっちのトレイのトイレ

以前「『ずっちのこと』のずっち」をお読みになった方は覚えていらっしゃるかもしれませんが、ずっちは自動ドアのあるマンションに勝手に出入りしたり、人が玄関を開けると同時にするりと上がりこんだりする、なかなか大胆なところがある猫です。

ずっちは人と暮らしていたのでしょうか。それとも、野良として生まれ、人と関わるうちに行動の仕方を学んだのでしょうか。ずっちがいつどこで生まれ、どうやって大きくなったのか、わたしは何も知りません。それを少し寂しく思います。猫用のごはんにはあまり食欲を示さず、コンビニ弁当の、鶏の唐揚げやウインナーを食べたがるので、人々からこの種の食べ物を貰って凌いでいたのかもしれません。出会ったときにはすでに前歯は「みそっぱ」で、どの歯の根元も赤々と炎症を起こしていました。歯肉炎という宿痾は生涯ずっちを苦しめることになるのですが……。

ずっちのためにすぐに猫のトイレを用意しました。プラスチックの小さなトレイに猫の砂を入れ、わたしのトイレの、便器の脇に置いておきました。トイレの扉を開けたままにして、いつでもずっちが使えるようにしました。そのトレイをトイレだと認識してくれるのか、認識して使ってくれるのか、祈るような気持ちでした。

翌日、わたしがトイレに入ってシャーとおしっこをしていた時でした。ずっちが慌ててトイレの中に駆けこんできて、おしっこをしているわたしの隣でトレイに座り、ずっちもまたシャーとおしっこをしたのです。

この子はすこぶる頭がいいぞ!!といたく感心した次第です。





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