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ずっちのこと

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伴侶であった雄猫のずっちのことを、写真と文章でここに残します。 共に過ごした時間の後半に入ったあたりまで書いてあります。 もう少ししたら続きを。
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2019年12月の記事一覧

「ずっちのこと」番外篇/本郷のロル・V・シュタイン

「ずっちのこと」番外篇/本郷のロル・V・シュタイン

台風で延期になっていた第2回『文学としての人文知』を聴きにいくにあたって、久しぶりにマルグリット・デュラスの『ロル・V・シュタインの歓喜』(平岡篤頼訳)を手にとった。精神分析の立木康介先生が「まなざしのトポロジー  メルロ=ポンティ、ラカン、デュラス」と題して本郷で講演なさるのだが、その参照テクストに『ロル・V・シュタインの歓喜』が挙がっていたからだ。2016年の立木先生のご著書『狂気の愛、狂女へ

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ずっちのまなざし

ずっちのまなざし

ずっちはよくこんな目でわたしを見ていました。

以前「ずっちが五日間戻らなかったこと」で、ずっちが家に帰りたくなくなるような状況を作ってしまっていたことを書きました。

そして大いに反省しました。あのとき軌道修正することができていたらよかったのですが。わたしの判断には、容易にまっすぐに正せない偏りがあるようです。いつでも間違った選択をして、人間と抜き差しならない関係になってしまいます。

わたしの

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ポールのずっち

ずっちがいつものポールにいるところです。2002年3月。
音楽はPatrick Bruel 'Ramona'

ずっちの空白

さて、「ずっちのこと」は2003年に差し掛かったところです。ずっちと知り合ってから、はや8年が経とうとしています。

ずっちは相変わらずひとりで外へ出かけていき、その日かその次の日か、その次の次の日に帰ってくるようになりました。

わたしのほうは、大手出版社でフリーランスとして働くことになり、常勤で校正の仕事をするようになりました。新たな場所で、新たな出会いがあり、ずっちがいつ帰ってきたかわからな

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ずっちの後をつけたこと

ずっちの後をつけたこと

2004年の夏になっていました。

その日はよく晴れていて、日差しが強かったのを覚えています。

午後のまだ早い時間でした。わたしは何か必要があって外へ出たんだと思います。とても暑かったので、自動販売機のコーラを買いに出たのかもしれません。

野原のほうに行くと、やや先をずっちが歩いていくのが見えました。声をかけようとして、ちょっとためらいました。なんだか急いでいるように見えたのです。

ずっちは

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ずっちともう一度

ずっちともう一度

ずっちの二重生活が発覚してから半年が経ちました。今は2005年1月です。

来月にはこの渋谷区の部屋を出て、練馬区の「はんの木緑地」を背にした家の2階に移ることにしました。
1995年11月にここへ越してきましたから、9年半ほど住んでいたことになります。ずっちはもうすぐ10歳、2回目の引っ越しです。

ここに住み続けていたのは、ずっちが憩っていたあのすばらしい野原があったからです。ところが、しばら

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