2024年9月8日、川添象郎氏が永眠されました。川添氏は80年代、YMOで世界を巻き込んだ社会現象を巻き起こし、アルファレコードにて、いまなお世界でシティポップとして評価される数々の音楽作品をプロデュースされてきました。
自分の信じた若き才能に惜しみなく、予算とご自身の人脈(国際文化事業に尽力されたご尊父、川添浩史氏の人脈も)と若き日々に学んだ舞台芸術とミュージシャンとしての海外興行の経験を注ぎ込んできた川添氏の功績をたたえ、『象の記憶』に寄せられたコメントとプロローグを掲載いたします。
本が完成したとき、まるで子どものように大喜びで、はしゃいでいた、キュートな川添さん。その場でたくさんのお知り合いに「おひさしぶり。ボクの本を買ってね」と電話されていた元気でパワフルな川添さんのお姿が忘れられません。(編集部 稲葉)
※タイトル上の写真は友人でもあったデヴィッド・ベイリーによるスナップ(『象の記憶』より)
プロローグ
象はすべての動物のなかで最も記憶力が優れているそうだ。なんでも、二十年前のこともおぼえているらしい。自分の群れの仲間や、大切な水場の位置など忘れない。西洋では、象と言えば素晴らしい記憶力の象徴である。その象にあやかって、記憶をたどりながら自分の人生の物語を書き綴ってみることにする。
僕はプロデューサーである。音楽、演劇ほか、空間プロデュース等、自分が興味をもった分野のプロデュースをしてきた。人は、僕のことを破天荒なプロデューサーであるという。人間が自身の体臭を自覚できないように、僕は自分のしてきたことが人の興味を引くほどのことか、またどこが破天荒なのかわからない。
しかし、自分のしてきたことを書き始めてみないとそれこそわからないので、ともかく
書き始めてみることにする。
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続きはぜひ、本書で読みいただければ幸いです。