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2拠点生活のススメ|第238回|静けさを破るモノ

川西の家に帰ってくると、ナナメ裏の家の解体工事が始まっていた。

朝8時頃から、夕方5時まで、鋏のようなものを付けたユンボが壁や天井を挟んではすこしづつ壊していく。ちょうど、裏の家に近い角に仕事部屋があるので、ずっとガラガラと壊されていく音を聞きながら、パソコンに向かうことになる。

まあお互い様なので、怒りの感情が出てくるわけでは無いのだが、ずっとその音を聞き続けていると頭がへんになりそうで、ときどき机を離れるのだけれど、そんな時に限って向こうも休憩で静かになったりと、なかなか上手くいかないモノだ。


私が住んでいる住宅街は、今から50年ほど前に、山を崩して造成され、大阪市内への通勤も便利で環境もよいベッドタウンとして、同じような年収の、同じような勤め人の支持を得て、あちこちからたくさんのファミリーが集まってきた。

父がここに家を建て、私がここに引っ越してきたのは、10歳の時。1学年に8組ぐらいクラスがあり、住宅街には子どもの声が響き渡り、通りにはキャッチボールやサッカーボールを蹴る子どもたちが溢れていた。

時代は流れて・・・

その当時に家を建てた人々は、今や後期高齢者と成り、亡くなっていく人が後を絶たない。残された家は主を亡くし、更地にして転売されることに。確かに、このところ解体工事をよく見かけるようになった。

この辺りには、すっかり子どもの姿が減ってしまって、車通りも少なくなったので、ビックリするほど静かになった。足音で向かいの家のご主人が帰ってくるのが分かるし、くしゃみやあくびの声が響き、ご近所の体調も何となく分かるほど。

そんな静かな住宅街に響く解体の騒音が、皮肉なモノでかつての賑わいを取り戻したようにも思えてくるから不思議だ。夕方工事が終わると、突然深い静けさに包まれ、まるで世界の終わりがやってきたような気分にもなる。

寂しくもあるが、こうして時代は移り変わっていくんだな。

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