見出し画像

理想の営業像は製品成熟度によって変わるんだ、と知った

わたしたちカイロスマーケティングでは、マーケティングオートメーション「Kairos3」を自社開発と販売をしています。創業から7年以上もこの仕事をしています。マーケティングオートメーションはおよそ法人(BtoB)向けのSaaS(クラウドサービス)です。

法人向けの製品では、一般的に、営業担当者が商談のクロージングをして成約にいたります。製品の契約数を増やすためには、経験豊富な法人営業担当者を多数採用し、一気に営業活動を展開することが一般的です。SaaSは先行投資を伴うビジネスモデルであるため、一気に売れるまでの時間が短ければ短いほど、事業リスクが低くなります。

当社の場合、創業時、経験豊富な営業担当がいませんでした(少なくともわたしは、経験が豊富な法人営業ではありませんでした)。製品を新規に市場に投入する段階では、これまでたくさん売ってきたという経験が邪魔をするかもしれないと感じたからです。


新規事業立ち上げ時にはベテラン法人営業は不要かもしれない

一般的に、新規の事業を立ち上げ時には、まだ製品は市場やお客さまの要望(ニーズ)を十分に満たしきれていません。製品の機能開発は、製品ロードマップ上のまだ最初の開発段階にあります。この段階では、お客さまがどのように自社の製品を使っていただけるかをじっくりと学ぶ必要があります。

製品を市場に投入した段階では、できるだけ多くのお客さまと会ってお話を聞くことが大切です。お客さまのニーズと製品仕様のギャップをみつけて会社に持ち帰り、自社製品の機能開発に活かします。それだけでなく、自社の営業プロセスの問題点も見つかるため、営業プロセスの改良を繰り返す必要があります。新規事業立ち上げ時から、完璧な製品や売り方であるはずもなく、こうしたPDCAによるトライ&エラーが欠かせません。

お客さまに製品の販売を目的として接触する仕事を営業というならば、営業は単に販売以上の仕事をしなくてはなりません。つまり、「売る」というよりも「学習する」というニュアンスの強い営業という活動になると思っています。

わたしたちも経験からすると、自社の製品があるターゲット層にある価値を提供すると思っていても、それは実際には全く異なることがありました。自分たちの想定を超える現実をいろいろと見ることになります。こうした現実を自社に持ち帰り、そして、PDCAを繰り返しながらGTM(Go-To-Market)戦略を調整します。

当社を創業して間もない頃は、1日に数件のお客さまと会うこともありました。いろいろ意見をいただいたり、自分たちが考えていた製品戦略が間違いかもしれないと感じたりと、ほんとうに心が折れそうになる営業活動だったことを思い出します。

今でも当社が存続できているのは、自分がバリバリの営業経験を持っておらず、お客さまの意見やお客さまとの会話を通じて得た洞察をうまく製品にフィードバックすることができたからだと思っています。

だからこそ、事業立上げ期には、営業は法人営業のバリバリの経験者ではなく、多才であり気配りの効く人が良いと思っています。お客さまのニーズをメールや打ち合わせの文脈から理解し、それを社内に適切に持ち帰る。十分に成熟した製品を売って多くの数字を稼ぐ法人営業に慣れてしまっていると、経験が邪魔することがあるからです。



製品が売れ始めるとプロセスの構築・改善に強い営業が役立つ

製品が売れ始めると、ユニットエコノミーにおいて損益分解点が近くなります(SaaSの場合は、CACがLTVよりも小さくなる時)。損益分解点に到達するくらいになると、いよいよ営業パフォーマンスの計測を始めます。

ユニットエコノミーの成立が見えてきたら、営業のプロセスを社内で標準化し、営業組織を段階的に拡大していきます。

営業プロセスを標準化すると、営業活動がおおよそ数字で評価できるようになります。訪問件数、荷電数、交換名刺枚数、クロージングまでの時間とか、成約率とか。こうした数字を計測することは間違っていないと思っています。

ただ、営業活動を数値に落とし込むことができるようになると、たいていの場合は、分析に走ります。特にアーリーステージのスタートアップで働くひとは数字がとにかく大好きです。「分析する」という名目で2~3日の時間を使っても、すぐに実行可能な効果の有りそうなアクションが見えてこないことなんてよくある話です。

この時期においては、分析をするなら1つの仮説を設定すべきです。通常は分析よりも「検証」というニュアンスが近くなります。

ここで設定する1つの仮説は、その仮説通りの結果が見えたときに、改善アクションを取ることができる必要があります。営業活動でのクロージングにかかる日数が増えている。その主たる理由は、お客さま側にある。という仮説があり検証したとしても、お客さま側にある理由を自社でコントロールすることは極めて難しい。これは、改善のアクションをほとんど取れないことになります。ですので、この仮設は検証すべきではありません。

ここでもPDCAを繰り返しながら、営業プロセスを調整していきましょう。



いよいよ拡販するときに、たくさんの法人営業経験者が必要になる

いわゆるティッピング・ポイントを超えて、製品が一気に売れだす時に始めて、従来の法人営業スタイルが必要になります。販売計画に従って、担当地域をアサインされ、パンフレット・カタログ、価格表を持ち歩きながら、多数の受注を獲得します。

この段階では、法人営業経験者が多数必要です。また、一般的に「法人営業経験者」とは、ティッピング・ポイントを超えたあとの法人営業経験をしている方が多いように感じます。

一概に法人営業経験と言っても、製品成熟度のどの段階で経験しているかによって、法人営業経験は大きく変わってきます。比較的大手企業で法人営業を経験している場合には、拡販時のスキルを持ち合わせる営業担当者が多いでしょう。拡販時の法人営業経験だけでは、新規事業立ち上げ時の営業活動に必要なスキルを持ち合わせているかどうかは、いささか疑問です。

スタートアップや新規事業の立ち上げのときは、ベテランの法人営業経験者の募集をするかどうかは、かなり慎重に考えたほうが良いと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?