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12.知性に圧倒されたいときにカンデル神経科学

カンデル神経科学

(書名をクリックすると「版元ドットコム」からさまざまなウェブ書店へのリンクが開けます。HMVだろうがhonyaclubだろうがヨドバシカメラだろうがなんでもあるから好きなところで買ってくれ)

三省堂書店池袋本店のヨンデル選書フェアでお買い上げの方に渡す特製カードに350文字のオススメ文を寄せた。以下、そのまま引用する。

別に洒落で並べた本じゃないんですよ。ヤンデルがヨンデル選書でカンデルをすすめてるとか言いたいわけではないんです。この厚さと内容で14000円は安くないですか? いつも思うんですけれどMEDSIって値段設定ぶっこ割れてますよね。さて、これはもう確信をもってあなたのことを言い当てますけれども、医学を志すものとして「脳神経科学の本を一冊持って、いつでも知を吸収できる」というのはこれ控えめに言っても最高だと思いませんか? まず何がいいって訳文がいい。読みやすいし情熱がある。紙質もいい。デザインも最高。内容は知性のかたまりですよ、膜電位のあたりもちょっと他に類を見ないくらいわかりやすいし、後半の実験解説なんてほれぼれします。名著そのもの。お買い上げありがとうございます。

メディカルサイエンスインターナショナルの翻訳教科書の値段設定がおかしい(安すぎる)のは、今に始まった話ではない。なぜこんな「膨大な知性」が詰まった本を「たった14000円(税抜き)」で売ることができるのだ。億を超える人々の歴史と知性が注ぎ込まれている本を出す手間を思うとめまいがする。出版社がばんばん潰れるわけがわかる。知性の高さは値段には反映できない。こういう本を届けてくれる出版社を大事にしなければいけない。

まあでも個人で14000円(税抜き)の本を買うと肛門のあたりがびりびりとしびれるのがわかる。東京で終電を逃して飲んでタクシーでホテルまで帰ったのと同じくらいの出費ではないか! ……だったらカンデルのほうが100倍マシだ、目を覚まして欲しい。

カンデルはよい。ヤンデルがいうから信じて欲しい。なおどうでもいい話をするとぼくは出身大学院の講座名が「脳科学専攻・神経病態学講座・分子細胞病理学」という。もともとは脳科学の場所にいたのだ。今はもうぜんぜん脳神経病理の仕事はしていないんだけれど。脳には、「たどりつけなかったあこがれ」みたいなイメージがある。

(2019.5.28 12冊目)

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