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11.フラジャイル(取扱注意)

フラジャイル

(書名をクリックすると「版元ドットコム」からさまざまなウェブ書店へのリンクが開けます。Amazonだろうがオムニ7だろうがヤフーショッピングだろうがなんでもあるから好きなところで買ってくれ。なおリンクは最新14巻です)

三省堂書店池袋本店のヨンデル選書フェアでお買い上げの方に渡す特製カードに350文字のオススメ文を寄せた。以下、そのまま引用する。

フラジャイルとの出会いは、連載第一話が月刊アフタヌーンに連載される前からです。フォロワーが「来月号のアフタヌーンで病理のマンガがはじまりますよ」と教えてくれました。そこからは毎月大プッシュです。思い出は無数にありますが、単行本第6巻の冒頭、布施美玖の回をはじめて読んだ時は嘘偽りもなくガチで泣きました。この涙の意味がわかる人というのは非医療者にはおろか、病理以外の医療スタッフにもいないだろうなあ。それまで、「料理医」と聞き間違えられたり、日当たりが悪い部屋にいるんだよねとバカにされたり、とかく歪んだ認知しか受けていなかった病理が一気に知名度を得たのは間違いなく本作のおかげです。フラジャイル以後、ぼくは「病理広報アカウント」というカンバンを降ろして普通の個人アカウントになりました。


この記事を書いているころはちょうど月9で「ラジエーションハウス」というドラマをやっている。なかなかいいドラマだ、テンポもいいし考えさせられる、配役も味がある。ときおりタイムラインで「あんな放射線技師いないよ」とか「放射線科医がザコすぎる」などの空気を読まない感想を目にしたが、それもドラマの最初の数話の間だけで、今はもうほとんど見ることがなくなった。結局、ドラマを批判している人なんてのは、ドラマを見る指向性がない人なのではないか、という気持ちになる。

かつて、フラジャイルがテレビドラマになると聞いたときも、タイムラインには同じような批判が一瞬あらわれた。「こんなの実際の病理と違う」みたいな的外れな意見がいっぱいならんだ。でもぼくはそれらの火消しをしようなんて思わなかった。ドラマの見方なんて人それぞれだ。実際、誰が反論するともなく、ドラマが進むにつれて反論みたいな声は聞こえなくなっていったし、ドラマの視聴率は(これだけ低視聴率時代が叫ばれている中で)そこそこ好調だった。

ぼくは現実に病理医として働いていて、同じ病理医が、ぼくの知っている病理検査室で、ちょっとかっこいいかんじでドラマをつむいでいくことを眺めていた。ドラマはあっという間に終わってしまったけれど何の心配もしていなかった。だってぼくらには原作マンガがあるからだ。

ぼくはこのマンガの方がずっと好きだ。ドラマだけちらっと見たことがある、みたいな人には、圧倒的にマンガ版をおすすめする。マンガのほうがいい。

単に自分のはたらいている分野に近いから、おなさけで、仲間意識で、いいと言うわけじゃない。これは本当にすばらしいマンガなのだ。何がそんなにいいかって? ひとつにはストーリー。キャラ造詣。でも一番好きだったのは、あれだよ。

絵柄。

絵柄をまっすぐかっこいいと思えるマンガが結局は一番いいマンガだと思う。文体がまっすぐかっこいいからといって、その本が最高の本だとはなかなかいえないものなのだが、フラジャイルは何がいいって、絵がいい。

あの絵で、あの内容。今の時代に生きていてよかった。ぼくはぐうぜん病理医であったから、このマンガに、多くの人よりも早く気づけてよかった。ぼくはぐうぜん病理医であったけれど、病理医になる前に育てた感性が、このマンガ最高だぜ、と言っている。

(2019.5.21 11冊目)

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