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31.それは絵じゃなきゃいかんの?という問いに勝てるかどうか

心臓外科医が描いた正しい心臓解剖図

(リンク先はメディカ出版のページ。注文可能、またネット書店へのリンクがあります。)

三省堂書店池袋本店のヨンデル選書フェアでお買い上げの方に渡す特製カードに350文字のオススメ文を寄せた。以下、そのまま引用する。

個人がひたすら撮った写真というのも味があるのですが、個人がこつこつ描いてきたイラストレーション集というのもこれまたぐっときます。多くの先達達の厳しい監査を受けながら正しい解剖構造が描けるように計算されたイラストレーション集というのは本来、ネッター解剖学アトラスのような「成書」として世に問われるものですが、本書は個人の作にもかかわらずめちゃくちゃ奥行きのある緻密な心臓解剖書でして、なんというかコストパフォーマンスがやばいですよね。ぼく絵心があんまりなくて自分でうさぎを描くだけでも毎回耳の太さや方向がぶれちゃうので、絵が描ける人のことを心底尊敬しており、ひそかにこういうタイプの本を買いそろえています。心エコーをすることがある医療者にとっては垂涎の書かと。

いうてワシ心エコーとかまったくやらんしやる機会もないんやけどな! ワハハハ! みたいにうさんくさい関西のおっちゃんが心の中で笑い声をあげてしまうが、この本はなんか手間がきちんとかかってていい本である。安易にマンガに逃げたタイプの教科書ではなくて、絵でしかできないことを努力の末に成し遂げた教科書ってかんじ。

ぼくも含めて、たいていの人は「マンガ系の表現」にはすごくうるさい。だって親しんできた時間がとても長いからね。ふつうに活字でつくるよりたぶん読者は辛辣な目で見てる。がんばったからえらい、えらいから買おう、みたいな視点はそもそもマンガにはありえない。

けれどねえ、マンガ的表現やイラストレーションが必然性をもって語りかけてくるときにはやっぱスタンディングオベーションするよね。

(2019.10.8 31冊目)

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