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それなりマガジン『買うまでが読書』

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本のまわりにいるふたりの公開交換日記です。ひとりは書店員。ひとりは書買人。
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記事一覧

誤読の正体

誤読の正体

マエダさん

いただいたお手紙を読みながら1か月ほど考えていました。

まず思ったのは、以下のようなことです。

(すべての文章にお返事が書けるなあ……。)

アガンベンの偶然性についての話を、『急に具合が悪くなる』(宮野真生子、磯野真穂)や、カトリーヌ・マラブーのこれから読もうと思っている本と照らし合わせながら、広げていくのはおもしろいだろうなあ、とか。

「再読でも難しい」と「二度目でも良い味

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ないものがあるということ/ひとりでも集まれるところ

ないものがあるということ/ひとりでも集まれるところ

ヤンデルさん

読む言葉にピチパチ刺激を感じながら、ああやっぱり久しぶりだったな、ヤンデルさんのお手紙。なんて、数ヶ月の空白と、改めて有り難さを感覚で知りました。

お返事をいただいて、無性に読み返したくなった本がありました。
『バートルビー 偶然性について』ジョルジョ・アガンベン(月曜社/ISBN9784901477185)という本です。ある法律家のもとに訪れたバートルビーという筆生(書記みたい

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「最初の読者」であるばかり

「最初の読者」であるばかり

マエダさん

ジャン=リュック・ナンシーの『思考の取引 書物と書店と』を読みました。5か月前に。いい本でした。そこからいろいろと連想をつなげて、さまざまな本を読みました。よい本を読むと、次に読む本の手触りみたいなものを、先に知覚することがあります。その後、書店ではじめて目にしたはずの本に、「ああ、これちょっと触ったことがあるな、読もう」となる。そういう感じの本でした。

「連れてくる本」ですね。

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川と独房、記憶と比喩

川と独房、記憶と比喩

ヤンデルさん、

僕はいま「本を売る人」ではなくなってしまいました。

前回のお手紙にあった引用に、
「思考というのは順調な時にははじまらず、何かに衝突したときにはじまるものである」
「人は何か困難に衝突すると、それをどう解釈してどう乗り切るかと思考を始める」
という言葉がありましたけれど、はっきり申し上げるといまは思考停止の状態に近い。またその状態もイヤで、考えようとするけれど、どこへも行き着い

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はじけて混ざると月が出る

はじけて混ざると月が出る

マエダさん

世の中がざわついたまま3月も終わろうとしています。

うーん、「世の中がざわついたまま」なんて書いてしまった。陳腐なフレーズですね! すみません。

ここぞというときに定例となるフレーズというか、お決まりの表現みたいなものに対して、警察官のように目を光らせてしまうぼくの「分人」が、たった今顔を出しました。「いかんぞそんな表現では」。おいかりです。ぼくはぼくにペコペコ謝っています。もう

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連なる空想と連なる本たち

連なる空想と連なる本たち

ヤンデル氏

3月に入ってしまいました。
今月の北海道行きは伸びてしまいましたけれど、お楽しみの先延ばしは嫌いじゃないです。またいずれお会いできる場面をふわふわと空想してます。

ところで、ヤンデル氏の古い記憶……

「脳の「母屋」を出て、離れの先にあるボットン便所のさらに向こう、さびれてたたずんでいる古い蔵の南京錠をガタコトと開け、明かり取りから差し込む光線にほこりが舞い上がる中、木と鉄で組まれ

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教師が太公望

教師が太公望

マエダ氏

「ヤンデル氏」に慣れてきました。お察しの通り、『映像研には手を出すな!』に感動するあまり、親しんだ「ヤンデルさん」をやめて「ヤンデル氏」を名乗るようになりました。思いのほか快適です。アニメにならえば読み方は「やんでるし」です。

しかし、古参のオタクたちがくちぐちに「ヤンデルうじ~」「ヤンデルうじ~」と呼んでくるのには辟易しています。なんだかウジ虫みたいですね。ちなみにウジ虫は法医学と

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あちこちの海図に潜む魚たち

あちこちの海図に潜む魚たち

ヤンデル氏

僕の首の角度、なんだろうって考えてます。読書型の首の角度。『映像研には手を出すな!』のアニメのエンディングで三人が歩いてるじゃないですか。あの浅草氏の首の角度、あれ良いですね。金森氏も微妙な角度を持ってる(背が高いから?)。水崎氏はさすがバランスが良い気がする。彼女らは何型なんだろう。そんなこと考えながら日曜の夜を過ごしてます。

2020年も良いアニメや漫画、たくさんの本たちに出会

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浅く広く読むこと

浅く広く読むこと

マエダさん:

新年あけましておめでとうございます。

昨年はおしまいのほうでとうとうお目にかかれましたね。想像のとおりの大変やさしそうな方でした。そうそう、それと、「読書型の首の角度」をされていらっしゃるなあ、と瞬間的に感じました。

「読書型の首の角度」というのは今つくった言葉です。あまりお気になさらず。

でも、わかる人にはわかるかもしれません。具体的にどういう角度であると言語化することはで

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もぐる ひろがる

もぐる ひろがる

わあ。ヤンデルさん。
2019が過ぎてしまいます。これを目にするヤンデルさんは、もう2020のひとかも知れません。

じつはずっと書いてたお返事がぜんぜん終わりませんでした。
ああ、年を越すまえに、といまギリギリな別のお返事を書いています。

2019はヤンデルさんはじめ鴨さんや燃え殻さんとお話しさせていただく機会が増えて、あきらかに変わった年でした(へん、ではなくて、へんかです)。

本について

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乱文乱筆乱タッチ

乱文乱筆乱タッチ

マエダさん:

マエダさんが前回のお手紙に書かれた、

「読んでみてほしい」、って『猫に時間の流れる』を貸してくれた元同僚のこと(あとでもう自分で買いました。文庫にもなってたかもですけれど、貸してくれたのと同じ単行本を探しました)、読み返すたび、なんならそのあと保坂和志さんの新刊出るたびに、思い出してるし、中上健次や丸山健二を教えてくれた大学のときの先輩の気配は、その本と一緒に棚に並んでる。

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よんどく つんどく

よんどく つんどく

前に「気楽にまた新たに書きます」ってふうに書きましたけれど、ヤンデルさんのお返事読んで、もっと気楽になりました。気楽になったらすごく書きたくなったので、これ、もう、すぐ書き始めてます。(書き終わるのはすぐじゃないかもしれません。←追加:ぜんぜんすぐじゃなくなりました)

本と出会うことって本屋込み。
読まなくても読書。
積んでても読書。
ってすごくいいです。

「本って、読む以前に、どこで手に入れ

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本を拾う場所

前田さん

お返事ありがとうございます。

昔は雑誌の後ろ側に「文通欄」があって、文通相手をそこで探して、雑誌にのってる本人の住所(!)に直接お手紙を送るという文化があったんですよね。あれ今やったら大変だろうな。

ぼく自身は文通やらなかったんですけれど、たとえば祖父母とかから手紙が届くことはあったわけです。あるいは遠方に住む親戚から。

ぼくはそれにお返事ぜんぜん書けなくて困ったものです。手紙と

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全自動書店 と 手で動かす本

全自動書店 と 手で動かす本

ヤンデルさん、とても遅くなってすみません。
と、今そう書いてるので、もっと遅くなるかもしれません。

もともと諸々遅いですけれど、とくに今回なかなか書けなくなりました。なぜだか、と書きかけて、だいたい思い当たるところがありました。たぶん、ちゃんとしたものを書こうって思ってしまったからです。ちゃんと書こうとは、今までも思ってたんですけれど。

なんていうか、ちょっと気負いました。

ヤンデルさんは書

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