見出し画像

わずかなアルコール(飲酒)でも運転操作(認知・判断・操作)に必ず影響する

2021年6月28日、千葉県八街市で大型貨物車が小学生5人に衝突。2人が死亡、3人が負傷するという痛ましい事故がおきました。車を運転していたのは、自称トラック運転手の60歳の男性で現行犯逮捕。そして、逮捕された男性の呼気から基準値を上回るアルコールが検出されました。

アルコール(飲酒)は危険を感じてから反応するまでの時間を伸ばす

飲酒運転は、悲惨な事故を起こす確率を高めます。

科学警察研究所交通安全研究室「低濃度のアルコールが運転操作等に与える影響に関する調査研究」の運転シミュレーターを使った反応時間の測定結果によると、呼気に含まれるアルコール濃度が高くなるほど、反応時間が伸びるという報告がされています。

【呼気に含まれるアルコール濃度とアクセルペダルを離すまでの反応時間】

〈やや単純な作業〉
■アルコールなし:0.51秒
■低(呼気中アルコール濃度 0.10mg/l程度):0.52~0.53秒(+0.01~0.02秒)
■中(呼気中アルコール濃度 0.20mg/l程度):0.54秒(+0.03秒)
■高(呼気中アルコール濃度 0.25mg/l程度):0.56~0.57秒(+0.05~0.06秒)

〈やや複雑な作業〉
■アルコールなし:0.66~0.69秒
■低(呼気中アルコール濃度 0.10mg/l程度):0.71秒(+0.02~0.05秒)
■中(呼気中アルコール濃度 0.20mg/l程度):0.73~0.75秒(+0.04~0.09秒)
■高(呼気中アルコール濃度 0.25mg/l程度):0.76~0.78秒(+0.07~0.12秒)

※画面に刺激が呈示されてから、運転者がアクセルを離すまでの時間
※科学警察研究所交通安全研究室「低濃度のアルコールが運転操作等に与える影響に関する調査研究」のデータをもとに作成

上記の結果からも、呼気に含まれるアルコール濃度が高くなるほど、アクセルペダルを離すまでの時間が伸びることは明らかです。

アクセルペダルを離すまでの時間が遅くなるということは、ブレーキペダルへの踏み変えおよび踏み込みが遅れることを意味しています。

また、車は1秒間に数メートル以上もの距離を走り抜けます。車が1秒間で進む距離は次の通りです。

【1秒間で車が進む距離と速度の関係】
■20km/h:5.6m(0.1秒あたり0.56m)
■30km/h:8.3m(0.1秒あたり0.83m)
■40km/h:11.1m(0.1秒あたり1.11m)
■50km/h:13.9m(0.1秒あたり1.39m)
■60km/h:16.7m(0.1秒あたり1.67m)
■80km/h:22.2m(0.1秒あたり2.22m)
■100km/h:27.8m(0.1秒あたり2.78m)

先ほどの"呼気に含まれるアルコール濃度と反応時間"の結果にある"呼気に含まれるアルコール濃度の高い状態でやや複雑な作業をしたときの反応時間"は、"呼気に含まれるアルコールがなし"の状態と比較すると0.1秒以上遅くなります。

車が0.1秒で進む距離は、日常的に運転する速度域で0.56m~1.67m、高速道路では1.67m以上です。

つまり、飲酒運転をするとアクセルペダルを離すまでの反応時間が遅れ、走行距離が長くなり、ブレーキ操作が遅れるため、事故になる危険性が高まります。

わずかなアルコールでも脳への影響も大きい

そもそも「酔う」というのは、脳が麻痺している状態です。

飲酒をするとアルコールが血液に入り、血液が循環して脳にアルコールが到達し、脳の神経細胞を麻痺させます。脳の神経細胞が麻痺している状態のことを「酔う」というのです。

血液に入ったアルコールの濃度が高くなると、酔い方にも変化があります。血中アルコール濃度と酔いの状態の関係は次の通りです。

【血中アルコール濃度と酔い方】
■血中アルコール濃度 0.02%~0.04%(爽快期):爽やかな気分になり、判断力が少し鈍る
■血中アルコール濃度 0.05%~0.10%(ほろ酔い期):脈が速くなり、理性が失われる
■血中アルコール濃度 0.11%~0.15%(酩酊初期):気が大きくなり、立つとふらつく
■血中アルコール濃度 0.16%~0.30%(酩酊期):呼吸が速くなり、千鳥足になる
■血中アルコール濃度 0.31%~0.40%(泥酔期):意識がはっきりせず、まともに立てない
■血中アルコール濃度 0.41%~0.50%(昏睡期):ゆり動かしても起きず、呼吸はゆっくりと深くなり、死にいたる
※公益社団法人アルコール健康医学協会の資料を参考に一部抜粋
【酔いの状態と血中アルコール濃度・呼気中アルコール濃度の関係】
■ほろ酔い期:血中 0.2~1.0mg/ml、呼気中 0.1~0.5mg/l
■酩酊期:血中 1.0~2.0mg/ml、呼気中 0.5~1.0mg/l
■泥酔期:血中 2.0~3.0mg/ml、呼気中 1.0~1.5mg/l
■昏睡期:血中 3.0~4.0mg/ml、呼気中 1.5~2.0mg/l
※トヨタ公式サイト「飲酒運転の危険」より一部抜粋

血中アルコール濃度・酔いの状態・呼気中のアルコール濃度の関係からもわかるように、血中アルコール濃度が0.10%未満の「ほろ酔い期」であっても、判断力が低下し、理性を失ってしまいます。

判断力が低下すれば、運転の要素である「認知・判断・操作」が正しく行われません。つまり、飲酒をすると「正しい認知」、「正確な判断」、「適切な操作」ができないということです。

少しの量の飲酒で爽快な気分になったり、ほろ酔いになったりときには既に、脳の神経細胞が麻痺し判断能力が鈍った状態になっています。そのため、わずかな量でも飲酒をしたら運転してはいけないのです。

飲酒運転の行政処分

飲酒運転の行政処分は、「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の2つに分けられます。

酒酔い運転は、アルコールの影響によって正常な運転ができない状態です。酒酔い運転の行政処分は、基礎点数35点、免許取消し、欠格期間3年(前歴や累積点数がない場合)となります。

酒気帯び運転は、呼気に含まれるアルコール濃度によって行政処分が異なるものの、いずれも厳しい処分です。

呼気に含まれるアルコール濃度が0.15mg/l~0.25mg/lの場合、基礎点数13点、免許停止(期間90日)となっています。

呼気に含まれるアルコール濃度が0.25mg/l以上の場合、基礎点数25点、免許取消し、欠格期間2年(前歴や累積点数がない場合)です。

【参考】
■千葉県警公式サイト:https://www.police.pref.chiba.jp/kohoka/orders_prefecture_01767.html
■時事通信:https://www.jiji.com/amp/article?k=2021062800768&g=soc
■警視庁公式サイト:https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/info.html
■科学警察研究所交通安全研究室:https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/insyuunten/kakeiken-kenkyu.pdf
■公益社団法人アルコール健康医学協会:http://www.arukenkyo.or.jp/health/base/index.html
■トヨタ公式サイト:https://www.toyota.co.jp/mobilitas/anzen/vol13_2.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?