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育った革展開催レポート後編

「育った革展」開催レポート①の続きです。

育った革展とは

職人が丹精込めて作った革製品には芸術品のような美しさがある。傷や汚れがつくのを恐れて、使用をためらってしまうかもしれない。

一方で。日用品として使い込まれた革製品や履きこまれた革靴には、古道具の様な美しさがある。使ってきたからこそ生まれる傷や汚れも内包する経年変化の魅力は、使用を繰り返さなければ生まれえない。

本展では、人が使うことで「育った革」が並びます。傷やシミ、修理の跡が目立つものもあれば、丁重に扱われたものもあります。

買ったばかりの時に一つ小傷がついたら、とても気になる。
でも、1年後傷やシミが増えたその姿は、なんだかいい顔つきに見えるかもしれない。

「革って面白い」そんなことを体感していただく展示です。

展示品紹介②


Owner:坂本憲明 @iolom_official @noriakisakamoto
Brand:DEVOA @d_e_v_o_a

私のどうしても手放せない何度も直しては履いてしまう靴が、12年ほど前に購入した、洋服のブランドDEVOAの短靴です
キャメルレザーで、サイドゴアの仕様でとても履きやすく気に入って履いてました。
しかし、履きすぎてしまい、ボディ全体にヒビが入ってしまったりともうダメかと思っていたところ、
シューリペアの友人が
そんなに気に入っているならチャールズ皇太子みたいに継ぎ接ぎにしてでも履くのも格好良いですよ
と言ってくれて、
原型のデザインすら修理で変わってしまってますが、
それが逆に唯一無二の靴になりました(坂本)

坂本憲明
インテリアデザインに従事していた傍ら、独学でオブジェやジュエリーの製作を始めジュエリーブランド iolom を立ち上げる 
空間に作用するオブジェクトや作品を発表する作家活動をnoriakisakamotoとして活動している

Owner:菊地夏美 @k1011010011
Brand:TANINO CRISCI

同じ靴(できればもうハーフサイズ小さいもの)をもう1足買おうと唯一思っているのが、このジョッパーブーツ。佇まい、革の表情、足との相性、洋服とのコーディネート。どれも抜群に良くてイベントの時や気持ちをシャンとしたいときはこれを履くことが多いです。2011年に廃業しているので、良いコンディションのでマイサイズを夜な夜な探しています。残念ながらパンプスは足の形に合わなくて持ち腐れ。(菊地)


Owner:谷口弘武 @lionshoecream1910
Brand:不明

ネットで見つけて、一目ぼれして購入したタンニン鞣しクラッチバックです。
ビジネスにもカジュアルにも使える、非常に使い勝手がいいバッグとなります。
オイルを塗りこむことでガラッと表情が変わる革の風合いも気に入っています。(谷口)


Owner:谷口弘武 @lionshoecream1910
Brand:SCOTCH GRAIN @scotchgrain_official

私が社会人になったころ(前職)に初めて購入したちゃんとした革靴です。

履くペースはそこまで高くないですが、10年以上前に購入してまだしっかり履ける状態のため

革素材の持ちの良さ、お手入れすることの大事さを感じることのできる一足です。(谷口)

谷口弘武
株式会社谷口化学工業所の5代目代表。
同社は明治43年(1910年)創業のレザーケア製品メーカーであり、
ライオン靴クリーム本舗というブランド名にて製品展開を行っている。

Owner:mienisi店主 @mienisi_
Brand:JABEZ CLIFF @jabezcliff

15年以上愛用している革小物
様々なTPOに応じるシンプルさと
どれだけラフに使ってもへたらないタフさ
全くひび割れしないのが凄い
引き続きこれからも使い倒したい逸品(mienisi 店主)

Owner:mienisi店主 @mienisi_
Brand:iolom @iolom_official

Unforme Wallet
“不定形”と名付けられた財布という名のオブジェ
鍛造で作られた真鍮金具の存在感とバケッタレザーの経年変化
その造形美との出逢いは初めての経験と興奮でした(mienisi 店主)

Owner:mienisi店主 @mienisi_
Brand:alden @aldenshoeco

初めて勤めた会社で昇格した際に購入した
初の本格的(?)なクラシックシューズ
サイズ選び・履き方・ケア方法、何一つ分からない中自己流で履き倒し「経年変化」の魅力を教えてくれた(mienisi 店主)

服屋mienisi/自由が丘
末永く愛せる一着とその方法を提案する服屋

Owner:ヒロツネ
Brand:LONA @lona_bag

手馴染みがいいサイズ感と、暗めの赤のシボ革に刻印箔をつけてもらったところがお気に入りです。普段のお出かけで使っています。

社会人一年目の誕生日に、当時先輩社員だったきくちさん(!)のおすすめで頂いたものです。漠然と憧れていた革への入り口を開いてもらうきっかけになりました。

ちょうど私の社会人歴と同じだけこのサコッシュの使用歴も重なっていくので、大事に育てていきながら、私も負けじと味を出していきたいところです。(ヒロツネ)

ヒロツネ
大阪出身 26歳 会社員
日々の幸せを増やすべく、師匠(きくちさん)伝授のもと
革→コーヒー→クラフトビール→植物栽培→スパイス→香水と色々手を出し、広くじわじわ楽しんで生きています。


Owner:菊地夏美 @k1011010011
Brand:iolom @iolom

一目惚れでオーダーしたレザーバックパック。
オリジナルのサイズがもう一回り大きかったので、A4サイズくらいで…と懇願して作っていただきました。
毎日使い倒すのは本当は良くないと理解しつつも、ほぼ毎日背負っています。大体入っているのは、ノートパソコンとジム用の着替…。「あのレザーのリュックの人」とコンビニとかで覚えられているのではないかと思ったり。(菊地)

Owner:森田圭一 @moritakeiichi_shoemaker
Brand:Paul Harnden

「あなたの作った靴を一度みてみたい」と。
とあるセレクトショップからの依頼がきたのが、15年ほど前のこと。
右も左もわからない、駆け出しの靴作家だった私に舞い込んできた初めてのチャンス。
押し寄せる期待と不安。想いは自作のアンクルブーツに込められた。
しかし、相手からの返答は散々たるものだった。
「これじゃまるで、ポールのパクリですよね」
まるで振り返りざまに金属バットで殴られたかのような。
その唐突すぎる衝撃は、物事を知覚するのに暫く時間を要した。
やがてやって来た、鋭いくせに鈍い、矛盾したような神経の痛み。
かつて憧れた靴は、その言葉は呪縛となり、私を動けなくさせた。(森田)


Owner:森田圭一 @moritakeiichi_shoemaker
Brand:kokochi sun3 @moritakeiichi_shoemaker

一枚の革で覆われたそれは、巾着袋のような仕立てになっており、爪先に風のとおる穴が空いていた。
本作kaza-anaのコンセプトは「靴が靴になる前のそれ」。
ご先祖様が裸足で野山を駆け回っていた時代、
痛かろうと足に纏った靴になる前のそれを想像し、プロダクト化した。
振り返れば、ポールの呪縛は私に試練を与え、kaza-anaを作らせた。

「これじゃまるで、ポールのパクリですよね」と。
あの時いただいた言葉には、本当に感謝をしている。
呪縛の礎に頭があがらない。
と、そんなこんなまさに今。
実は新しい呪縛と対峙している。そう、kaza-ana という呪縛だ。(森田)

森田圭一
職業 靴作家・靴職人。
1975年神戸生まれ。イギリスからやって来たハンドメイド・シューズに衝撃を受け、靴製造の道へ。ハンドメイドにこだわった「kokochi」ブランドを展開。靴の即興製作「shoes drawing」と銘打たれたパフォーマンスで注目を集める。「美しい道具としての靴のあり方」への探求を続ける。

Owner:田中 @tomoe.co1948
Brand:Fratelli Rossetti

靴に興味を持ち始めた25年程前、
革の色に一目惚れ。
イタリア靴ならではの繊細な色彩感覚がなせる
ベージュアンティークレザー(田中)

Owner:田中 @tomoe.co1948
Brand:SWAN SHOES
(Crocket&Jones)

靴の製法などの勉強をしていた頃に、
復刻シリーズのこの靴に出会い
始めて買ったグッドイヤー製法の靴
スワンシューズ(クロケット&ジョーンズ)のユーチップ

田中
トモエ商事株式会社
ファッションに興味を持ち、服飾の専門学校を卒業後、百貨店(松屋銀座)のセレクトショップに販売をしていたが、靴売場に移動し、靴に興味を持ち25年になります。

革のお手入れワークショップ

よくお手入れされて育った鹿革の靴でした

会期中、革を育てるためのお手入れを体得していただくワークショップも開催しました。
ご自身で調べてレザーケアをしていても、どのくらいが「適量」なのかや、ブラシを使わなくてもいいのかも?や、持ってるけどこのクリームは何に使えるんだっけ…?などわからないことってありますよね。

奥から、豚毛・馬毛・豚毛・馬毛

ブラシ、持っているけど何用のブラシで何の毛かもわからない…ですとか。

マンツーマンなので、ご自身のペースで磨いたり質問したり一休みしたり…
あっという間の2時間でした。

展示を終えて

「育った革展」を開催して、Instagramではすぐに展示品紹介の投稿をしていたのですが、それを終えたら走り切った気持ちになってしまい&出張や他のイベントが重なったこともありnoteの投稿がこんなに遅くなってしまいました。

「絶対面白いじゃん」という気持ちと「謎企画過ぎて誰も来てくれないかもしれない」という気持ちに挟まれながら企画~開催までを走り抜けたように記憶しています。

展示品のお貸出しをお願いしたとき「面白そうですね」「いいね」とみなさま快く背中を押してくださってそれだけで目頭は熱くなり、
展示の告知をしたら、「行きたかったけど予定が合わなくて」や「○○でもやってください」とわざわざご連絡をいただいたり、「夜ならいけるよ」と仕事終わりに足を運んでくださったり、
来てくださった方々お一人おひとりに、「これはですね…!」と説明をしながら面白さを見つけていただけた瞬間があり、それこそ「革って面白いでしょ!」という本企画展のめざすところだったので、私の独りよがりで終わらなかったことも光栄でした。
ふとした思い付きから始まった企画でしたが、挑戦してよかったです。

靴好き以外の方にもたくさんお越しいただき、沼への入口へ招待できたように感じています。ようこそ。笑

展示が終わってからも、「出展したかった」とか「次こうしてみたら?」など、未来の話がポジティブに出てきたことも想定外でありがたい限りです。

正直なところ、展示を開催した後のことは何も考えていなかったので…。
展示をやってその後の私には何が見えてくるのだろうか?というのは、全く想像が出来なくて、楽しみでもあり怖さもありましたが、
育った革展をきっかけに、次の扉が開いたような気持ちです。

直近は、すでに決まっているイベントにひとまず集中しますが、
企てもしていくので、これからもよろしくお願いします。

菊地夏美

いただいたサポートで、タンナーさんのお話を伺いに行ってきます!