アスリートの腰痛改善に大事な事 その2


痛みというのは「現象」です。「現象」が起こっている時の体の中の状態は大変複雑です。

痛みとは
「神経生理学的、免疫学的、認知行動的、社会環境的など様々な影響により感じる個々の経験」とされています。

痛みが慢性化すると心理的な原因からも痛みを感じ、動く際の機能的な障害を引き起こす可能性があります。アスリートに関しては心因性も含まれますが怪我からの回復状況やトレーニングの強度、チーム環境など変化の要因が多きく心理的要因が全てとは言い切れません。

アスリートの痛みの分類は以下に分けられます。
1、侵害受容性(炎症性を含む)、2、神経系、3、侵害可塑性
それぞれの痛みの状態と判断基準の指針は以下です。

1、侵害受容性
アスリートの腰痛で痛みとして感じるには特に侵害受容器として感知をして後角、中脳、脳幹部などで抑制性を介して大脳皮質で痛みとして認識して痛みを感じるというのが多いかと思います。

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侵害受容器は以下に分けられます。

5 types Nociceptors (侵害受容器)
1、温度覚   冷/温
2、機械受容 圧迫/機械変化 感覚器 時にポリモーダル
3、化学受容 化学物質
4、サイレント 周囲組織の炎症期
5、ポリモーダル コンビネーション
侵害受容性の痛みの定義は

「末梢の組織の侵害受容器から起こる有害な侵襲
組織のダメージや炎症により末梢の侵害受容器から伝達される。」

となります。


運動後の過活動や怪我などの炎症性の痛みは侵害受容性の痛みに入るかと思います。


侵害受容器からの伝達により痛みを感じるため、試合中で感情が高まっているときや体の状態により痛みとして認識されない場合もあります。
痛みは上記のメカニズムによって中枢神経系で統合されて認識されるため、ストレスや不安、緊張などの要素で侵害受容機に影響を与える可能性もあります。
亜急性や慢性的にスポーツなどの激しい運動や活動が体の部位にかかると、その部位が炎症を起こす事もあり、また炎症が起きていなくても侵害受容器の活性伝達を変化させる可能性もあります。
そのためにスポーツなどの過活動により痛みと認識される場合もあります。
また生活習慣の問題で組織の内部環境によって痛みが長引いたりします。

2、神経性
神経性の痛みとは痛みがその部分の神経の範囲に関与するもの。
外傷や疾病などによる体性感覚神経によるもの。

この二つがあります。

3、侵害可塑性
侵害可塑性の痛みは実際に組織にダメージがあろうとなかろうと末梢の侵害受容器もしくは体性感覚システムにより痛みとして認識される痛みです。
炎症などの侵害受容器への活性がなくても神経の過敏化により侵害受容の機能に問題を来たし痛みとしての認識される可能性があります。
最近痛みが起こるメカニズムとして言われている中枢感作もあります。
中枢感作(定義 末梢での組織損傷や炎症の程度が激しくまた長期間続くとそれらが伝達される中枢に機能的な変化が生じ、正常な伝達が中枢で誤って解釈され「痛み」として感じられるようになる)
とは異なるとされていますが、メカニズム的には同様になります。

腰痛において重要な組織「胸腰筋膜」


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胸腰筋膜はクラシックな認識だと腰の膜組織という認識になります。

しかしながら近年では関わる筋も複雑化して、その間には疎性結合組織という体を滑らすための潤滑的な組織が関り「一つの膜」ではなくミルフィーユ的なスライド構造をなしているとされています。

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その胸腰筋膜には多くの神経レセプターが存在し、その多くは侵害受容に関わる自由神経終末が含まれています。

慢性腰痛の患者はこの胸腰筋膜が肥厚していたり、せん断応力の低下(滑りの低下)などが研究などで報告されています。ただこの関係性によって完全に腰痛と直結するかというのは別の話しになりますが、考察レベルでは胸腰筋膜は腰痛に重要な組織といえるでしょう。

いくつかの自由神経終末は温冷受容器、化学受容器、さらにはポリモーダル受容器として存在し、機会受容としても機能するため、体のツッパリ感などの違和感、せん断応力(動きの変化の違和感)影響する可能性があるとされます。

身体感覚の変化は痛みという「感覚」を変調させいわゆる「違和感」のような痛みとも捉えられる感覚を感じてしまう可能性があります。

冒頭でお伝えした通り痛みは現象です。

そこに隠されているのはこの組織の変調によることも大きいかと考えられるかもしれません。

ではどうしたらいいか?

選手はまず自分の感覚に繊細になり、自分自身の体の変調に敏感に意識をして捉え、どのような動きやどのような状態で痛みという感覚として変調させているのかを感じることが第一歩です。

ケアする人はそのようにそのインプットがどのように妨げられているかを捉える事がプライマリーアプローチかと思います。

以上のようにスポーツによるアスリートの痛みは複雑です。

またスポーツという過活動を行うという事は局所の組織のストレスがどうしてもかかってしまいます。

体に変調を感じたら適切に判断する。
これが重要です。

慢性化は悪いサイクルを繰り返します。初期の段階でしっかりと自身を見つめる習慣をつけてみましょう。


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6767935/

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3189915/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6852276/



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