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20200830 モーリシャス沿岸における油流出事故の現時点まとめ~日本政府と企業の動きと現地政府発表を中心に~

モーリシャス沿岸における油流出事故に関しての、現時点でのまとめをしておこうと思います。ファクトチェックとまではいきませんが、日本政府・企業の情報やその周辺の動きを中心に1次情報(新聞などではなく政府等の情報)を元にしておきます。

モーリシャスとは?

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アフリカ大陸のマダカスカル島沖に位置する、火山が隆起してできた島国です。国土の広さは東京都ほど。最近では、海外からの投資を誘導して、IT産業への投資や国際金融センターの設置等を積極的に進めているとのこと。

ちなみに、上の地図に掲載されている「レユニオン」という島名は、フランス領のレユニオン島なので、フランスはモーリシャスの近隣国扱いになります。

今回の事故の関係者を見てみよう

船主→長鋪汽船株式会社の子会社です。

用船者→商船三井

この二つの言葉の関係は、商船三井のプレスリリースにありますので、引用しておきます。

船主とは、「本船を建造、所有し、乗組員を乗船させ、荷物を運べる状態にする。それにより、運航者である用船者(商船三井)に提供している」
用船者とは、「一定期間、船主(長鋪汽船)から船を借り、荷物を付けて輸送する。『運航』とは船を実際に動かしているのではなく、『どこの港へ行ってください』などのお願い、指令をすることを指す」

両社ですが、油流出以降、定期的にプレスリリースを発行しています。

結構、このプレスリリースのみでも日本側の企業の動きはわかります。

では、次は日本政府の動きを見てみましょう。

日本政府の動きはまとめられている

日本政府の動きは、外務省のモーリシャス共和国のページにまとめられておりました。

下記は、上記ページからPDFファイルがダウンロードできる資料です。

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結構大事なのは、「モーリシャス政府からの支援要請を受け」というところと、「7月25日に座礁し、8月6日まで流出が油の流出が防げていたのはなぜなのか」の所です。その点は、最後の章にまとめましょう。

国際機関の反応

主だった、国際機関の声を拾ってみましょう。

NGO団体のグリーンピース。商船三井と長鋪汽船に公開質問状を送り、その回答を公表しています。

その質問状への回答を引用しておきます。

「両社は回答の中で、損害への対応や、調査協力、再発防止策などを講じる意向を明らかにしており、一定の評価はできます。一方で、法的義務を果たすだけでは、現地の環境や暮らしの回復は困難です。また、航路の見直しや化石燃料からの撤退がなければ、再発防止を確かなものにはできません。両社には、加害企業としての責任を果たすため、これらの問題に対して、真正面から取り組むことが求められます。モーリシャス当局が、分断された貨物船の前半分を海底に投棄する作業を開始したと報じられていますが、有害物質や油が残留したままでの投棄は、被害を悪化させるだけでなく、事故原因の全容解明を困難にすることになり、許容できません。今回のような油の流出事故は、世界中で過去何度も繰り返され、そのたびに海の生態系や周辺住民の生活・経済を危機に追いやってきました。今こそ事故の根本的な問題に向き合うため、自らの企業責任に厳しい姿勢で向き合い、一歩踏み込んだ対応をとるべきときです」

続いては、WWF。近隣で起きた様々な海に関する環境汚染などを取り上げています。

別の切り口。ITF(国際運輸労連)から、船長が逮捕された件についての意見。コロナウィルスの影響で船員が交代できなかったことから発生した悲劇という観点を出しています。

日本語版がなかったので、日本海事新聞の記事もurl貼っときます。

モーリシャス政府の報道

モーリシャス政府の報道は、油流出後は日本のメディアでもちょこちょこ情報が出てくるようになりましたので、それ以前の、7月25日~8月6日の間のプレスを2つ。

8月4日のプレスでは、座礁船を引き揚げるサルベージチームと1隻目のタグボートが来たという発表。裏を返すと、モーリシャスにはこの作業に使えるタグボートがなかったということか。。。ちなみに、ワカシオに乗っていた乗組員もサルベージチームもコロナウィルスの陰性を確認してから、上陸したようです。

8月7日のプレス。この時点では、座礁船から油が流出しており、しかも、環境的に非常にデリケートな場所へと流出していると。そして、政府として、周辺国の助けを求めるとともに、フランスの識者と議論を始めているということ。ここで、どうして、フランスと思いますが、最初に申し上げた、レユニオン島がフランス領である関係があるのでしょうか。

ちなみに、8月14日のモーリシャス官房の記者会見で、日本から6人の専門家が派遣されていることにも触れられています。

ここまでの内容をまとめてくださっている在モーリシャス邦人のブログ

で、ここまで調べると、1本のストーリーにしてみたくなるのですが、現地に住む日本人の方のブログにもうすでに、解説していただいておりました。

この方のブログでも、やはり、モーリシャス有数のきれいな海の地帯に油が流出したことと、7月25日に座礁して、12日間も間があったことの背景を解説しています。

一旦の考察

ここからは、上に上げたファクトに基づいたオピニオンになります。

まず、商船三井と長鋪汽船は株式会社ですので、有限責任の範囲内で最大限に責任を果たすと表明し、物資と人をモーリシャスへ送っています。

日本政府もモーリシャス政府の要請を受けて、人を派遣しており、政府の記者会見でも触れられています。

一方で、人類共通の財産である海洋に油が流出したことは、世界中の問題であり、ある程度の見通しが立つまで中長期的に日本としても協力していく必要があるでしょう。

ただ、船員が交代できなかったことやサルベージチームもコロナウィルスが問題ないことを確認するのに手間取り、日本からの人員も2週間の待期期間を経てからの活動となっています。

こうした、多国間で地球規模の課題を取り扱うにあたっても、withコロナ時代にきちんと運用できる方法を考えていかないといけないでしょう。

加えて、現在、コロナウィルスの関係もあり、ボランティアは受け付けていないそうですが、モーリシャス政府が基金を立ち上げたそうなので、興味のある方は英語サイトですが、ご覧ください。





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