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ABOUT

ここ2年ほどの間に、「本屋」について、すごく考えさせられる瞬間があった。
始まりは仕事で東京に滞在したとき。駅ビルのエスカレーターを上がって入り口にたどり着いた瞬間、「こっちの本屋にはこんなにも同年代の人たちが集まるんだ」と、思わず声に出しそうなほどの強い衝撃を受けてしまった。
そりゃそうだ。年齢別の人口ピラミッドを見ても、東京はまだまだ現役世代に存在感がある。
だから本屋の目立つ平台も、集まる本も、それだけじゃなく駅の広告も電車内の映像も、その多くが当たり前に現役世代の暮らしに向けられている。
道理にかなっている。
なのになぜか、その光景は、確かにショックだった。
それはたぶん、同じ国の同じ時代にあるはずの、小さな町の本屋のことを同時に思い出してしまったからだと思う。

東京から遠く離れた北海道にある、最近まで住んでいた小さな町の本屋。
町はもうずっと前から人口減や高齢化の流れに押されていて、本屋自体の規模もあまり大きくはなかったけれど、それでも本好きなら一目見ればすぐわかるほどにその店の棚づくりは誠実で、学生の頃からいつも信頼を覚えさせてくれた。
だから欲しい本があると必ず一番最初に探しに行き、なるべくそこで買うようにしていたのだ。
けれど2018年頃だっただろうか、ある時いつものように店に入ったら、入り口すぐの平台が様変わりしているのに気づく。
それまでは丁寧に選び抜かれた文芸書がいっぱいに並べられていたのに、この店の世界の一部分でしかなかった「老後の生き方」「生前整理」「終活」といった高齢者向けのHow to 本が、あきらかにスペースを占領している。
そして平台が示すこの店の答えはそれから何度通っても、もう変わることはなかった。
自分の人生と、店の生きるスピードがある境界線から、どんどんズレていく。
それでも、せめて続いていてさえくれたなら、きっと救われたのだ。
平台の風景が一変してから1年後のこと、店のドアに突然貼り紙が貼られた。
「倒産のお知らせ」に人も光も未来も遮られてしまった店内は、今までに見たどんな風景よりも静かで昏くて、悲しかった。

30代も半ばを折り返し、それなりにいろいろなことがあった日々の延長で、迎えた2020年は今までよりもう少し好きに生きたいな、そして何か新しいこともしたいな、なんて考えている。
そんなときに、浮かんだ中のひとつが「この町にもう少し本屋があったらいいのにな」ということだった。
移り住んだ今の町はもう少し現役世代が多く集まっているけれど、それでも私の家から歩ける範囲に本屋はない。
だけど東京から遠く離れ、衰退とひとくくりにされるこの土地にも、まだ続く人生があり、禍福がある。
それを考え、表現し、他者と共有するには、やはり「本屋」の存在が欠かせないのだと、本に育てられてきた人間は今ひとり、しみじみ思う。

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北海道在住。アイドルと文章書くことと野球が好きです。 cakes連載①→『SMAPとそのファンの物語』https://cakes.mu/series/3927 cakes連載②→『モーニング娘。年代記』https://cakes.mu/series/4134