一番星を掴むと痛い


淡い月に見とれてしまうから,また今日も懲りずに夜空を眺めている。幾多の星とはよく言ったものだが、見上げればすぐにあなたを見つけられる、ような気もする。愛とは美しいと感じるもののの基準を揃えようとすることだと言った貴方の、好きだった色は藍白色だったとか、私が好きだった色はプラスチックピンクで、めっぽう相反していると笑った瞬間とか、そういうどうでもいいことは覚えているのに、匂いとか、声とか、キスが短いとか、そういう大切なことはろ紙をくぐるように忘れそうになる。暗い足元も見えずに、貴方が高くともしていた光が全てだった。転んだあとに笑われてるのも気づかないふりをするのだ、そうして、地の隙間から咲いている花を眺めるんだ。這いつくばって血を流して、醜くたって構わないから、唯、自分のことだけを見つめてあげてね。と言っていた意味は、気づくのが遅すぎた。君のいないこの世界でしたいことが見つけられないから急いだふりうつむくまま、だって私の大好きなネモフィラが咲いているのだもの、なんて、正当化。何も分かっていないふりをする自分が、嫌いなだけだ。実は。もういっそ。地球の裏側へ飛びたいのだ。そこでは沢山の陽気な人達が太陽に照らされて、燦然と輝く笑顔でいるに違いない。そうだろう?無人の駅に届くまで、昨日の僕に出会うまで。その間だけの小休憩、酸素なんていらないから、ちゃんとしにたいよ、かたちのない歌は見えないんだから僕を救ってくれることなんてない、それでも真紅の左手で朝を描いたら、それはそれは素晴らしい朝焼けを描くことが、ぼくにだってできたから、絶望から希望を生み出すなんて案外簡単なことだったと少しだけ驚いた。そのまま遠い遠い夏の向こうへ、踏み出す勇気を得るためにとうめいなうたを君に透かして、ぼやけた輪郭が馴染んでその姿を取り戻すのが早いか、ぼくのとうめいがもっと視界をぼかして、その真紅を溶かして行くのが早いか。もしくはそれは絕望なのか、或いは希望なのか。この青と赤が絡まってちゃんとしのうとしているぼくにはもうさっぱり分かるわけがなくて。冷たくない君のてのひらを、とうめいが全身からあふれる中で思い出した。その感触も、色彩も、全てがきみらしくて、何なら多分君だった。その手をとることは絕望なのか、或いは希望なのか、そもそも希望を定義できないやつに明日を描くことなんてやっぱりできなかったんじゃないか。噫、噫、噫噫噫噫噫噫噫噫噫噫噫噫噫噫噫噫噫噫赤と青、赤と青、赤と青が絡まって僕を、炎色反応の渦に飲み込んでゆく。窮屈な四角い箱の中で、それだけが全てだった自分のものでない安っぽい知識、でもそんな知識いらなかった。受動的な意識で形成された脳みそのいらない容量を、すべて君のために使いたかった。こんなに想えることに正直理由なんてなかった。本能的にただ君に引力を感じていた。理性と感情の間を常に考えた。絶対的に存在しない記憶、それは幾多の真白のなかで唯一素晴らしく輝くうるうるのとうめいにふれて、割れないように、でも壊せるように(今考えたらコンクリートを優しく舐めながら崩れやしないかと恐れていたようなものだが)優しくその殻を叩いたときの記憶を無意識的にたどりながら、その桃色を叩いた。甘美で優美で完璧で気色悪い声だけが部屋を満たしていくのを感じた。漠然と帰りたいと思っていた場所はきっとここだったのだと思わざるを得なかった。温められたショコラのミルフィーユが緩やかにとろけてうるまったような処感には、愛以外の感情を抱くことはできなかった。それは唯僕が熱に浮かされたときに見た幻想だったとしても、ひどく本質を掴んでいると思う。積み重ねる。甘く、解ける。それはくずれるにちかいかもしれない、壊さないためには触れないのが一番なのだ。でも、万が一触りたくなってしまった時にはどうすれば良いかと言うと、溶かしてしまえばいいのだ。溶けて、甘くて、絡みつくような愛が崩れると言ったことは無く、ただ、その甘さの奥からは、鉄みたいなしょっぱさが襲ってくるかも知らない。凄く不謹慎だけど、僕は頭の中で君を何度も殺したことがあるから、君はいま生きてるのか死んでるのか、本当に、分からなくなってしまったみたい。鉄を齧りながら、私はそんなことを考えていた。まあ、正直どちらでも良くて、そんなことよりは、私の細胞がいま電子を受け渡してエネルギーを生成していることの方がよっぽど複雑で興味深いよ、たぶんね

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