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あまりに深すぎるJack Strattonの世界[5] ミックス動画シリーズ「SOUND OF TWO」、Jackのバーナード・パーディーへの深い愛とは

KINZTOのDr.ファンクシッテルーだ。今回は「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」マガジンの、15回目の連載になる。

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Vulfpeck(ヴォルフペック)のリーダー、Jack Strattonについて複数のプロジェクトを紹介してきたが、まだまだ終わらない。まったくこの人の才能はどうなっているのか…。

今回は、「二つの異なる映像を同時再生して、ひとつの音楽にミックスしてしまう」Jackの動画作品シリーズ、「SOUNDS OF TWO」を紹介しよう。ものは試し、これを観てもらいたい。

一瞬で内容が理解できる驚くべき動画だが…ご覧のとおり、この左右の動画は、もともとは全く別の動画としてYouTubeにアップされていたものだ。

ソウル&ファンクドラマー、バーナード・パーディーのドラムだけの動画と、

Snerky Puppyでも有名、現在世界中でトップキーボディストのコリー・ヘンリーのオルガン・ソロ動画である。これらを組み合わせて再生しただけで…こんなグルーヴになることを、誰が想像できるだろうか。

他にも「SOUNDS OF TWO」には、とにかく驚異的な作品が並んでいる。組み合わせてひとつの作品になること自体が驚きだが、さらにその組み合わせ、Jackの発想の自由さにさらに驚かされる。

👆ジャズピアニストのキース・ジャレットと、バーナード・パーディー。実際には絶対に共演しなそうな意外すぎる組み合わせ。

👆バーナード・パーディーとコーラス隊。27秒あたりから左右のサウンドが一体化する。もともと一緒に演奏していたのでは?と思えるほどの一体感だ。パーディーの喋りも入ってきてかなりコミカル。

👆今度はパーディーとハービー。この動画のグルーヴは「SOUND OF TWO」シリーズでも特にすばらしい。ハービーのソロも驚異的である。元動画のせいで、パーディーのほうの動画に「ラテンのフィーリング」という日本語字幕が出てくるのが面白い。

バーナード・パーディーの動画が多く使われているが、恐らく、JackがYouTubeの彼の動画を繰り返し見ていたことから、今回のプロジェクトがスタートしたのではないか…と考えられる。Jackのバーナード・パーディーへの愛は本物だ。Jackはパーディーのドラムを研究し尽くし、「Funklet」でも彼のドラムパターンをプリセットとして組み上げて、さらに自身でもその奏法をマスターしている。

“Jack is truly a disciple of funk and R & B drumming,” Katzman said.“Bernard Purdie is his hero, and he really, really sounds like Purdie. It’s crazy. If you’re ear is developed in that realm and you listen for it, Jack can totally blow your mind with how true to form he’s become with funk drumming.”

「ジャックは本物のファンクとR&Bを叩けるんだ」とテオ・カッツマンは語る。「バーナード・パーディは彼のヒーローで、彼は本当に、本当にパーディのように聞こえるんだ。クレイジーさ。もし、あなたがパーディーや当時のドラムスタイルに詳しければ、ジャックが演奏する本物のファンク・ドラムにノックアウトされてしまうでしょう。」

👆Jackがパーディー風に叩いている分かりやすい動画。ドラムソロの開始位置から再生できるようにしておいた。パーディーお得意の「ダチーチーチー」もロング尺で披露してくれる。


Vulfpeckが有名になると、Jackはついにライブにバーナード・パーディーをゲストプレイヤーとして招くことができるようになった。しかもニューヨーク進出、大人気ライブハウス「Brooklyn Bowl」のステージだ。

滅多にやらない、公式のカヴァー動画である。カヴァーで有名になりたくない、と語り、アルバムへのカヴァー録音を封じているJackだが、この動画だけは公開したかったのだろう。わざわざファン(テーパー)が撮影した動画をもらって、自分で編集して公式にしているほどだ。👇

Jackがどれだけ嬉しかったことか…動画を観ているこちらまで嬉しくなってくる。

Jackはこの頃から自分のヒーローたちをVulfpeckのレコーディングやライブにゲストとして呼ぶようになる。しかも、必ずしも自分は演奏に参加せず、プロデューサーやカメラマンとして関わっているのだ。

それは、もしかしたら、それこそがJackの原点の姿…リスナー、ファンとしての位置で、ヒーローたちの演奏を眺めたい、という想いもあるのかもしれない。あるいは単純に、リハを組んでいないであろう大物ゲストたちを演奏の外側からまとめるために演奏に参加していないのかもしれないが…。

顔をくしゃくしゃにして、満面の笑みでヒーローの演奏を眺めているJackを見ていると、演奏せずそこに立っている理由に、いろいろな想像をしてしまう。

憧れのJames Gadson、そしてDavid T. Walkerを呼んだレコーディング(Running Away)では、演奏がうまく終わった瞬間に大きくジャンプしてガッツポーズをしている。ここでは、自分達で14000人を集めたマディソン・スクエア・ガーデンのライブよりも、どの映像よりも、彼は素直に喜びを爆発させているように思える。

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出典:https://www.youtube.com/watch?v=wvpLjcXU3hY

以上、「SOUND OF TWO」シリーズとJackのヒーローたちへの想いをまとめた記事となった。この「SOUND OF TWO」シリーズも、Jackが自分でまとめたYoutubeプレイリストがある。

最後に、まだ紹介していない「SOUND OF TWO」シリーズを掲載して、今回は終わりとしたい。Dr.ファンクシッテルーの講義にお付き合いいただき、ありがとう。


「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」、次回の講義は、「Joe Dart解体新書」の予定だ。お楽しみに!



◆著者◆
Dr.ファンクシッテルー

イラスト:小山ゆうじろう先生

宇宙からやってきたファンク研究家、音楽ライター。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動。


◇既刊情報◇

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