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ひとり力の『取材力』

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#危ない読書

#佐藤優


「いささか油断なく気をつかうべし   。                殊(こと)に酒盃(しゅはい)に酔い候(そうら)えばこころがけてさえ落度(おちど)あるものにて候(そうろう)。/小笠原流礼法より」


7つの大罪の大食ではない美食

美食と美酒に酔い相手を懐柔するのはより簡単になる酒宴の席を選ぶ。そこにはもちろん公式テーブルマナーがどうしても必要になる。礼を知らなければイキにくずしてみせることもできない。このくずしかたでさらに口をひらかせるテクニック。

テーブルマナーとは諜報活動のひとつで中世からそうであったように。現代では毒を盛ったりはできないので中世よりはマシかもしれない、だけど美酒に酔いしれる事はそれにとても近い。私はそれほどグルメでもないし山海の珍味に興味もない。それでもまったく知らないよりは少しは知っておくべきだと思う。最近思うのは20代の頃はいくら飲んでも酔わないのが自慢だったけれど今はそれほど強くない。少し前にラリックのシャンパンを飲んだけれど本当はもっと飲みたくても自重している。こういうのは訓練だと思っているので時間を使って学びに行ったりする。

衣については3代遡(さかのぼ)り 食については5代遡らなければ        通(ツウ)とはいえない。

/酒井美意子著ロイヤルマナーより

勝負ドレス

過去に関係のあった取り引き先のラグジュアリーブランドを扱う会社に同業のよしみで副業として雇ってもらった。60才を過ぎている社員の中に過去にもずっとラグジュアリーブランドだけを扱ってきた人と知りあう。その人にとって人生のもっとも輝いた時代にいた頃のシャネルはどうも特別なようで「私にとってココ(シャネル)は特別なの」その笑顔が忘れられない。今はシャネルの後継者だったカールラガーフェルドも亡くなってその人にとって本当にひとつの時代が終わった。シャネルだけではなくヴァレンティノも引退してやたら売れ線狙いのコレクションが鼻についた。時代はまわっていく、私にとってブルマリンが特別なように。私は現在はブライダル関係にいるけれど裏方も裏方でそれが安全なので今はそうしているけど時々、副業でラグジュアリーブランドに戻るとすべて懐かしい。

私にとってやはり一番人生の中で輝いた時代にシャネルがそうだった人のように特別なきっかけだったかもしれない。カールラガーフェルドはファッションは商売だと公言しているけど私もそう思う。私でも50を過ぎたらシャネルスーツの1着は買おうと思っていた。あの美しいリントン社製のツィードジャケット。だけど久々にラグジュアリーに戻ってみたらラガーフェルド亡き後に魅力的なインポートが現れていた。ジャンヴァティスタヴァリのツィード。値段的にはシャネルとおなじぐらいでこれは素晴らしいと感激した。それは新しい時代の空気を感じた。

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個人的に私はハイブランドではない中堅のもの作りをするブランドがどうも自分にはあうような気がする。「それ、すごくステキね、どこの?」そう聞かれることが多い。そのブランドのストーリィが流れるようなモノを着ることでパーティーでも自分のストーリィを作るのだった。

過去にそのブランドにいた頃、ハイブランドでもないのに結構値段が高いのがメディアでも有名だった。そういう話しをする友人の1人にデザイナーがいてある時「エルメスを持つ資格のない人がエルメスを買うのはダメだ」と言うから私はものすごく意地悪に言い返した。「高級メゾンが上流の貴族やセレブリティだけで存続しているワケじゃない。客に優劣をつけるのはおかしい、何で食ってるかを考えるべきだ」そういうと「泉〇ン子がシャネルに来るとシャネルの店員は接客しない人もいるよ」というのでそれほど品のないことはないと言い返した。人の足もとをみて判断する下品さはホントに恥ずかしい。

たとえばいかにも怪しげな商売の人が現金でたくさん高級品を買ったらその日のプライオリティは私の中では高くなる、もし汚い金であっても私がキレイな金に変える、その気持ちを大切にしている。

ところでその知名度がそれほどではなかった頃にこのブランド(ブルマリン)の対象になっている年齢層は何歳かと聞いたら「23才だって」と会社から教えてもらった。23~25才でこのコレクションを買えるのはたしかに富裕層しかいないと思ったけれど日本でじっさいに買っていく客の年齢層はものすごく高い。お金を持っていたのは20年前でも60代とかで一番着て美しい20代前半対象ブランドをヨボヨボの婆さんに売る時はこれは思ってはいけないことだけどやはり辛い。それはべつにこのブランドに限ったことではないと思う。私はそういうもろもろの事を仕事を通して食卓芸術やファッションから学んだ気がする。

closetfreak/Tuesday