
「やってみないとわからない」 自分の日常に寄り添っていた”描く”という行為。 自分の中のロックを線で表現するイラストレーター
真っ白な紙に、線が引かれ、色が付けられ
絵が徐々にその姿を現してくる。
イラストが描きあがるタイムラプス動画をtwitterで見た。
若菜さんが描くイラストの色は暖色系で温かみがあり、絵は笑顔や穏やかな表情のものが多い。その線と色合いから、優しさを感じずにはいられなかった。
「とにかく手を動かしてみた結果」
タイムラプス動画に添えられていたこの文が、とても心に残った。
今までの制作の中で、色々考え、手が止まって描けていなかった時期があったのかもしれない。そんな風に想像したら、勝手に人間味を感じ、お会いしたくなった。
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若菜真穂さん
札幌在住/イラストレーター/webディレクター
イラストレーターとして絵の制作、展示活動を精力的に行う。
持ち味はファッションイラストのエッセンスを汲んだシャープで勢いのある線。音楽を愛し展示会場でのライブパフォーマンスも行う一方、webディレクターを務めるなど多彩な活動をみせる。
以前は東京の写真系のベンチャー企業に勤務。
その後、イタリアのミラノへ約8ヶ月間、2つの目標を掲げて留学へ。
1つ目は個展を開くこと。
2つ目はイタリア・ボローニャ国際児童図書展に参加すること。
しっかりと二つの目標を達成し、日本へ帰国。
帰国後、2018年12月から、ご夫婦ともに「住んでみたかったから」という理由で札幌へと移住。また、イタリア生活が一つのキッカケで、日本とイタリアの2拠点生活を将来的に計画中。
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@イラストより音楽に心惹かれた学生時代
学生時代は美術部に所属したことはなく、それよりも音楽への関心が強かった。
特にロックが好きで邦楽では斉藤和義に傾倒。洋楽ではJanis Joplinという女性シンガーの曲をよく聴いた。
中学高校と軽音楽部がなかったので運動部に所属していたが (中学はテニス部で、高校では剣道部。剣道は2段)、大学に入ると念願の軽音楽サークルに入部。同時に歌のレッスンも受け始めた。
しかし、なかなか思う通りにはいかなかった。
若菜さん 「音楽は好きだったけど、納得のいく結果が得られず、自分の可能性の限界を感じてしまうようになっていた。
そんな時でも細々と絵だけは描いていて、ふと気づくことがあった。
それは、私にとって音楽は非日常で、絵は日常だなって。絵は日常の中にあるものという感じだった。」
若菜さん「音楽に強い憧れがあるからこそ音楽に取り組むときには気合が必要だし、理想との落差に気持ちが挫けてしまう。でも、絵を描くときには特別な気合をいれる事もなく、淡々と描くことができた」
若菜さんにとって、生きることは日常で
その日常の中での表現活動には、イラストを描くことが合っていた。
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@実績はないけれど、楽しそうだから個展を開いてみた
若菜さんが所属していた大学のゼミでは、ある古民家を活動場所にしていた。
若菜さん「私がそこで個展を開いたら、絵を披露しながら、友達を呼んでお茶もできて、楽しいんじゃないか?」
楽しそうなことにはのってみる、という心持ちの若菜さんは、それだけの理由で個展を開いた。
美術系の部にも大学にもいったことがなく、実績も何もないけれど、個展を開くことにした。
チラシを配ったり、友達を呼んだりして人を集めた。
結果、当日は楽しい時間と空間が生まれた。
「経験や実績がなくても、やろうと思えばやれる」
若菜さんは、そんなことを実感したという。
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@絵の学校に行って感じた挫折感。しかし、それが自分の基準を考えるきっかけになった
社会人になり、働きながら2年間ほど、夜間で絵の学校に通っていた。
そこで自分よりはるかに絵の上手な人たちがゴロゴロいるのを目の当たりにし、大きな壁にぶつかる。
元々自分の技術に自信があった訳ではないけれど、それでも、これだけ自分より上手な人達がたくさん、当たり前のようにいる現実。日に日に学校へ行く足取りは重くなり、自分の表現への悩みは深まっていった。
なぜ、悩んでしまったのか。
若菜さん「自分の中の明確な基準がないまま、迷いのある自分の絵と技術の高い他の人の絵とを比べてしまい、勝手に自信をなくしていた」
と、振り返る。
自分が本当に描きたいものは何か、表現したいものは何か。
それがまだわからない状態で、自分が描きたいものとは別の分野で上手な人と比べてしまい、自信をなくし、悩んでしまっていた。
自分の基準を見極める為、イタリアのミラノへと渡った。
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@イタリアへ
若菜さん「正直、イタリアへ行ったのは、自分よりも上手な人が普通に学校にたくさんいて気持ちの上で行き詰まっていたから、というのもあった」
と包み隠さずに話してくれた。
冒頭にも書いたように、ミラノでは、個展を開くこと、そして、国際児童図書展に参加することを目標を掲げ、それを見事達成した。
その中で少しずつ自分の描きたいもの、表現したいものが定まり始めたという。
約8ヶ月のイタリア生活を終えるとイタリアのことがさらに好きになり、将来は日本とイタリアの両方で活動したいと思うように。
現在、旦那さんと一緒に2拠点生活を計画中だ。
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@自分が描きたいものとは
人から感じられるエネルギー。
若菜さんが一番描きたいものだ。
そこには、彼女の憧れるロックに通じるものがあるのかもしれない。
若菜さんが引く線、選ぶ色は、彼女が今まで経験してきたものが、ペンの先から紙の上へと伝わり、イラストとして表現される。
若菜さん「今まで経験してきたことや、感じてきたこと、それらが自分の基準を作り、そのフィルターを通じてイラストができあがる。基準ができたら、あとはそれを貫く上で、どのように表現するか。」
物腰柔らかい雰囲気の若菜さんの基準という土台は、とてもしっかりしているように感じた。
イラストレーターとして嬉しい瞬間は?という質問に関して
若菜さん「単純に、作品を褒められる瞬間。自分自身を褒められるのは少し恥ずかしいけれど、自分のフィルターを通して描いた絵を褒められるのは、自分の人生を肯定してくれているようで素直に喜べる」
と答えてくれた。
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