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ドイツの上でピアノを(短編小説) ※連載中

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14歳の僕は男子校に通っていた。恋は知らなかったけれど、女子校の女の子と通学デートをしていたあのころ、事件は起こった。
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記事一覧

2015.11.6 ドイツの空でピアノを

学会からの帰りのフライト、僕はシャルル・ドゴール空港からANA787に乗っていた。

ゆったりとしたシートに身を任せてはいたものの、なんとなくそわそわしていた。僕は飛行機があまり好きではなかったからだ。それでも、挨拶をしてくれたそれほど美しくないキャビンアテンダントの愛嬌ある笑顔は、少し僕の心を落ち着かせた。どこかで会ったような・・・そうだ、病院の内科の女医さんに眼が似ている。始まることもなかった

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2015.11.10 続 ドイツの上でピアノを

(前回までのあらすじ)早熟だった僕は、14歳の頃ある女の子と電車通学をしていた。恋の予感のしない相手との通学だ。そんな時、一通の封筒が僕の家に届いた。

郵便受けにはオレンジと黄色のかわいらしい模様の封筒が入っていた。母が見つけ、僕が部活から帰ってくるとにやにやしながら渡してきた。

「はい、ラブレターよ」「そんなんじゃねえよ」

顔をトマトみたいに真っ赤にして母からひったくると、自室にこもって封

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2015.11.18  続々 ドイツの上でピアノを

ともかく何かアクションをせねば。

そう考えたものの、何か妙案が浮かぶわけでもない。

僕は平然と、その翌日からも「通学デート」を重ねた。平然と、何もないような顔をして。

数日経つと、だんだんと自分に嫌気がさしてくる。大切なことを言わないでおくことは、嘘をつくこととイコールだ。わかっていながらも何も言えず、手紙の返事もできないままでいた。

そうして一ヶ月が過ぎた頃。

僕の家のポストに、さらに

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2016.2.5 続々々 ドイツの上でピアノを

(前回までのあらすじ)

14歳のころ、僕は小学校時代の友達と「通学デート」をしていた。ある日来た一通の手紙には、「あなたが好き」の文字。差出人は通学デートをしている子の親友の女の子だった___返事をせず何食わぬ顔で通学デートを続けているともう一通の手紙が同じ子から届いた。電話番号と「電話をください」のみ。僕は意を決して電話をかける。

家族は居間に揃っていて、テレビを見て大笑いをしていた。素人が

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