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DRAWING AND MANUAL Local Action Series: vol.1 Yuichiro Fujishiro | LOCOVISION #01 前編

DRAWING AND MANUALでは、『「つくる」、のその先へ』をタグラインに、日々のクリエイティブワークで得た知見の共有、疑問の探究を、自社で運営するマルチスペース「FACTORY」で開催するトークイベントや、金沢ブランチから展開する「RE·D」というブランドの商品・サービス開発など、様々な角度で発信しています。

その活動の一つ、「地域の情報発信」という切り口で、様々なコンテンツの作り手に話を訊いていくというコンセプトの元、所属ディレクター藤代雄一朗が企画・ナビゲートするトークセッションシリーズ「LOCOVISION」が2020年7月にFACTORYでスタート。第一回は映像作家 柘植泰人さんと、クリエイティブ・ディレクター 鎌田貴史さんをゲストにお呼びして、おふたりが手掛けた石川県能登の魅力を発信するウェブサイト「のとつづり」を題材に、これからの映像と地域の関係性を多岐に渡りお話ししました。

今回のDRAWING AND MANUAL noteは、ドキュメンタリーシリーズに続き、地方創生シリーズ第一弾として、イベントの模様を書き起こし、まとめて数回に渡りお送りいたします。

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目次
オープニング〜自己紹介〜「のとつづり」紹介
「のとつづり」の経緯〜ファースト・シーズン
北陸新幹線金沢乗り入れで「のとつづり」セカンド・シーズンへ〜映像
「地域のキーマン」
地域とクリエイターの関係性を映す
「旅」という感覚でのものづくり


オープニング〜自己紹介〜「のとつづり」紹介

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藤代:よろしくお願いします。

鎌田さん:よろしくお願いします。

藤代:まず自己紹介から、私はドローイングアンドマニュアルという会社で映像の制作、ディレクターをやっております。藤代といいます。
今回は地域の魅力を伝える映像をつくっている人々をお招きして、制作の舞台裏とかどうやって考えてその企画が出来上がったかとか、そういったお話を根掘り葉掘り伺いたいなぁと思って企画しました。
ロコビジョンという名前で今後も続けていきたいなと思っているんですけれども。今回、第1回目が石川県の能登をテーマにした「のとつづり」というウェブサイトのお話しを伺っていきたいと思います。宜しくお願いします。
ゲストの方々をご紹介いたします。
まずお一人目が鎌田さんです。よろしくお願いします。

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鎌田さん:よろしくお願いします。

藤代:自己紹介どうしましょう、この相談もしてなかったですね(笑)。

鎌田さん:自己紹介ですね。私は17-8歳くらいからウェブサイトずっと作っていて、基本それ1本でやってるんですけど。2006年に今の会社を立ち上げて、14期目ですかね。spfdesign という会社の代表しています。ここ(画面)にクリエイティブ・ディレクターって書かれているんですけど、クリエイティブ・ディレクションする時もあるんですけど、基本的には名刺に書いているのはアート・ディレクター、web デザイナーの2つで書かせてもらっています。
今日いろいろ、お話しさせていただく「のとつづり」についてはクリエイティブ・ディレクションという観点のポジションとアート・ディレクションだったりwebを作ったりとか全般やってるみたいな感じですかね。

藤代:ありがとうございます。

鎌田さん:あの、お声がけいただいてありがとうございます。喋るの下手なので、そこはあのすみません、先に謝っておきます。

藤代:いえいえ(笑)、で2人目のゲストですが、柘植さんです。今日はZoomで参加していただくことになってます。よろしくお願いします。

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柘植さん:お願いします。すみません、行けなくて。

藤代:いえ。自己紹介を軽くしていただいて。
 
柘植さん:映像ディレクターやっています、柘植です。主にCMとか、広告映像作っているディレクターです。宜しくお願いします。

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藤代:今日は9つの話題を用意してまして、「のとつづり」を中心に色々こういう話を順繰り伺えたらいいなあというふうに思っています。
これを見ながら話が全然飛んでも良いですし、ここに書いてあることが盛り上がらなかったら次の話題に行ったりとか、適宜やっていくという進行させてください。
質問とかご意見などありましたら、Youtube のチャットですとか、Twitterのハッシュタグで「#locovision」と書いて投稿をしてくださればこちらで拾い上げて、終盤あたりで質疑応答みたいな形の時間もやりたいなというふうに思っていますので、そちらもよろしくお願いします。

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今回のテーマが、「のとつづり」というコンテンツなんですが、石川県能登のいろいろな人々ですとか風景とか、そこに根付いている文化とかをすごく丁寧にピックアップして紹介しているウェブサイトがあります。
多田屋という旅館を経営されている多田健太郎さんという方を中心にこういったコンテンツを作り上げていってる、というサイトです。
このウェブサイトの中に記事ですとか、色々素敵な写真があり、映像もたくさん掲載されています。簡単にひとつ、ふたつくらい観ていただきたい。


(女将さんが酒造の前でポーズしている)
藤代:ここ一番好きなんですよね。
鎌田さん:これ、写真だと思ってますよね(笑)。酒を飲むことを、「米を呑む」っていうんです。炭水化物は酒から摂るっていう。この酒、毎月送ってくるんですよ。実家とうちと。
藤代:へえ。はい、ありがとうございます。ちょっとひとつ流させてもらいました。あともうひとつ簡単に。

藤代:先ほど観ていただいたような、人を紹介する映像があったり、それとはまた別でこういっためちゃくちゃ美しい風景を淡々とこう観せていく、みたいな映像もあったり。全部で43くらい動画があって、全部観ると1時間以上かかりますよね。
本当に綺麗で素敵だし、なんか観てて、ほっこり温かくなる映像がいっぱい詰まっていて。僕はこの映像をきっかけに「のとつづり」というコンテンツを知ったっていう感じだったんですけど、非常に感銘を受けたのでそこからずっと定期的に見返したりしております。
これ終わった後に皆さんにも「のとつづり」っていうのを実際にいろいろ映像を観ていただきたいんですけれども、どうやってこの企画が出来上がったかとか、撮影されたかみたいな話をおふたりに聞いていきたいなというふうに思っています。

鎌田さん:はいよろしくお願いします。


「のとつづり」の経緯〜ファースト・シーズン

藤代:最初に鎌田さんに企画の当初、最初の段階の話を伺いたいなと思っています。資料をご用意いただいたのでそちらを出しますね。 

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鎌田さん:「のとつづり」が立ち上がったのが2011年くらいなんですけど、実はその前から、このさっきおっしゃってた多田屋さんという能登の入口にある和倉温泉にある多田屋さんという旅館さんとの仕事での出会いが最初だったんですね。

藤代:最初はもういきなり依頼があったんですか?お知り合いだったんですか?

鎌田さん:共通の知人とかそういう流れ。全く多田屋とは関係のないプロジェクトでご一緒してた、打ち上げで目の前に座ったエンジニアの人。僕そこで初対面だったんですけど、知り合いに旅館の御曹司がいるから、ウェブサイトやりたがっているから紹介していい?いうのが最初ですね。それが2005年とか2006年ぐらいで。

藤代:だいぶ前ですね。15年前?

鎌田さん:現社長の健太郎さんという方は6代目なんですけども。当時はお父様が社長をされてたんですけど、世代交代でこれから旅館の経営していく上で、健太郎プロジェクトの第一弾ということで、ウェブサイトしっかりしたものつくって立ち上げようという話だったらしくて。それのご相談が最初のきっかけですね。

こういうウェブサイトを当時つくってたんですけど、1年くらいかかったのかな。

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藤代:すっごい手が混んで…大変そうな(笑)。スクロールしていくとこう切り替わっていくみたいな感じになってる。

鎌田さん:これはスクロールとかではなくて、画面が広すぎるんですけど。下にグローバルナビゲーションがあってコンテンツを切り替えるとサイトの大きな絵の、パーツを移動しながらコンテンツを見ていく。

藤代:すごい。
 
鎌田さん:で、その4年後ですかね。2011年くらいにさっきお見せしたウェブサイト、ブランディングという観点で、結構成功したよねというお言葉もいただいてたりして。その4年後に、より集客を意識したウェブサイトへのリニューアルの相談を受けました。
ガラッと雰囲気が変わって。

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https://tadaya.net/

今もこのバージョンのサイトは公開されているんですけど、さっきのバージョンが写真じゃなくてイラストで世界観みたいなのを書き起こして、それをウェブサイト全体のトーンにしてたんですけど。より能登の風景だったり写真を中心にした構造に変えています。
他にも色々コンテンツの構造はもちろん変えているんですけど、大きなウェブサイトの顔としては、こういう形になりました。
「和倉の夕日に染まる宿」って言うキャッチフレーズというかタグラインみたいなものを、このタイミングで開発。

藤代:和倉っていうのは多田屋さんがある場所?

鎌田さん:和倉温泉ですね。和倉温泉の中にも当然旅館はいっぱいあるんですけど、多田屋さんというのはちょっとかなり外れにあるんですよ。端っこの端この、さらにちょっと外側くらいの。
で、なぜそこにあるかというと、昔は密集している方にあったんですけど三代目の女将さんが、こっち側まで行けば夕日が独占状態になるっていうので。その夕日に惚れ込んで、こっちから温泉を引っ張ってくる大工事をして。結構莫大な予算かけてこだわってそっちに移設したっていうのがあって。
なんで、真正面にオーシャンビューで、夕焼けが見れる宿っていうのは他にはなくて、和倉温泉の中に。多田屋さんのみ。で、「和倉の夕日に染まる宿」っていうタグラインを作らせてもらって。


北陸新幹線金沢乗り入れで「のとつづり」セカンド・シーズンへ〜映像

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鎌田さん:でそのリニューアルのタイミングと同時に健太郎さんこういうことおっしゃってて。

「能登の魅力を多くの人に知ってもらいたい。そして能登に訪れてもらいたい。多田屋はその旅の宿として使って貰えば幸い。」

ということをおっしゃってて。いいこと言うなって(笑)。

藤代:ほんとこれが最初のキーワードですよね。

鎌田さん:能登が好きな人でね。なんていうかな。いち旅館さんがいち旅館の予算で、旅館のPRをするウェブサイトを作る一方で、もっと能登全域をこういう視点で見ているというのはすごいなと思って。で、是非協力できたらなと思って立ち上げたのが「のとつづり」ですかね。で、何度も何度も何度も、計4〜50回くらい能登へ行って。

藤代:そんなに行ってるんですね(笑)。

鎌田さん:記事全部の数。「のとつづり」は何かというと、風景・人・店・文化という切り口でいろんなところに取材していって、それを記事に、読み物に、コンテンツとしてつくっていく。で、このタイミングでは写真と文章でやってたんですね。で全部で57の記事をやって。写真は、おととい一生懸命数えたんですけどね、340ありました。

藤代:めちゃくちゃ、ある。

鎌田さん:で、こういうのを1年間かけて、何度も何度も足しげく通って作り上げたのが、「のとつづり」ファースト・シーズンとするならば、セカンド・シーズンもずっとやりたいよね、やりたいよねという話をしている一方で、その間にある番外編ということで、映像っていうコンテンツはやっぱり欲しい、あるとすごくいいなぁと思って。立ち上げから3年後ぐらい2014年頃に提案したんですけど、この当時って2015年に北陸新幹線が金沢まで乗り入れるというタイミングで。

藤代:そっか、そのタイミングだったんですね。

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鎌田さん:で、金沢までくるとそこから能登に入ってくる、集客が見込めるということで、能登全体が結構沸き立ってたと思うんですよね。普通に注目もされていて。
世界農業遺産っていうのに選ばれたりとかしてる背景もあって、能登に結構注目が集まったんですよ。まあまあチャンスというか。というタイミングだったので、より直感的に魅力を伝えるための映像プロジェクトというのを提案しました。で、提案時の資料を持ってきてくださいと言われて持ってきたんですけど。

藤代:お願いして持ってきていただきました。

鎌田さん:結構健太郎さんと僕の関係性というのが。

藤代:近しい感じだった。

鎌田さん:年も近いですし。知り合ってからも長いですし。いろいろ時間一緒に過ごすこともあって。あまり歯に絹着せない物言いできる関係性かなと僕は思っているんですけど。ムカつかれてるかもしれないですけど(笑)、多分大丈夫です。なんで、結構ゆるめの資料になっています。
世界農業遺産にも選ばれたり、新幹線乗り入れますよね、ていうのでちょっとここでカンフル剤というか。もう一回注目してもらいたいですね、というので提案しました。
今まではというのは、先ほどご説明したような57個の記事と346枚の写真で作ってた読み物コンテンツっていうのは、能登の魅力の気づきということで。写真をいっぱい使って、文章はあんまりこう短すぎず、浅すぎず、長すぎない。読んでて疲れるものにはならないような。ちょうどいい深度で掘り下げることに成功しました。で、実際多田屋に泊まりに来てくれるお客様とかから、多田屋のサイトだったり「のとつづり」をみて来ました、って言ってくれるお客さんが結構いらした、みたいなことで課題は達成できたよねって話をしつつ。
今回この提案でやりたいこととして、映像なんですけど。能登ってこんなに魅力的な土地なんですよっていうのを、直感的かつスピーディーに記憶にたたき込むようなものを作りましょう。「のとつづり」の取材で見つけた沢山の魅力を再編集して総集編みたいな映像1本作って、短時間で一気に魅力を感じてもらえるようなものができたらいいな。そういう映像を観た後に、さっきご紹介した記事とかを見ると、より深い、記事そのもののポテンシャルが引き出されるんじゃないかなと思って。見てるユーザーさんの気持ちを醸成する装置として映像は機能するんじゃないでしょうか、という提案だったんです。
で、仮で例えばNOTOという映像を作りましょうと。脈々と続く伝統だったりとか。で、それを、柘植さんにお願いしようと。今はNovemberですけどその前にいらっしゃった会社ですね。ここに柘植さんという優秀なディレクターいるんで、お願いしたいですという話をしました。と、ウェブサイトリニューアルしましょうっていう話ですね。で、ぜひやりましょうと言っていただいて。能登の四季の魅力を盛り込んだ総集編ともいえる一本の映像を作ろうっていうのがここで動き始めました。

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藤代:ウェブサイトで紹介した色々な場所を、ギュッと一本にまとめましょう、という話ですよね。

鎌田さん:柘植さんごめんなさいね、ちょっと長くなっちゃって。これ前段の部分なので。
で、過去に取材に回った場所でどこに取材に行くのか、ロケーションの候補選定をする中で過去に取材したところだーっと全部洗い出して、かつ新しいところも。けっこう時間も経っているので。新しい魅力のあるところをリサーチかけてまとめてきました。
で、職人軸、食軸、人軸、風景軸みたいな。カテゴライズしつつ春夏秋冬、と。なんで最低4回、四季通じても4シーズン。最低4回、できれば8回とかいけるといいよね、みたいな話をしながら整理していました。

藤代:面白いですね。優先順位とかも。

鎌田さん:そうですね。で、最終的に作ってくださいってNovemberにお願いしたのは、総集編の1本なんですけど。それを構成する映像素材集というのは無数にできるわけですね。合計何千時間くらい回したのかわかんないくらい猛烈な、膨大な量の映像があると思うんですけど。それをセレクトしてセレクトしてセレクトして、絞り込まれたもので編集した1本が出来上がるわけなんですけど。その1本から外れたけど無茶苦茶いい素材集っていうのがあるはずだと思うんで。それが世に出ないのはあまりにももったいないですよねっていう話を、柘植さんだったりとか、プロデューサーの山田君と一緒に話して。それを機械的につなげるだけでいいから。

藤代:最初は機械的にっていう話で(笑)。

鎌田さん:それで一本できたってことにしませんか、って言ったら「まぁそれならできるかな…」って(笑)。

藤代:ってお願いした結果が、こうなった(笑)。

鎌田さん:なんと43本編集することに、なってしまった(笑)。なるほど、ありがとうございます。すごいですね、やり始めちゃうと。

藤代:結果むちゃくちゃ大変だったという。やっぱりそんな機械的につなげるだけで済むわけないですけどね(笑)。

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「地域のキーマン」

藤代:面白い。この作り方を中心にいろいろお伺いしていきたいんですけど。この「地域のキーマン」って書かせてもらっているお話を伺いたくて。先ほどのロケ地の候補の表もそうですけれども、やっぱりその土地にいる面白い人とか綺麗な景色とかって、あんまり馴染みがなかったり精通している人がいないと全然わからないんですけれども。
ああやってリストは上がってくる、優先順位とかもちゃんとあるって言うのはやっぱりそこに精通している人がプロジェクトの中にいないとできないことだと思ってるんですけど。

鎌田さん:ですね。部外者がいくらリサーチかけてもわからない部分はあるんですけど。

藤代:それがちゃんと映像にも表れているというか、映像に出てくる人もすごく親しく話しかけてくれる様子が写ってたりとか。あぁこんな場所あるんだ、みたいな。あの面白い素敵な場所が映されたりとかしていて。やっぱりそれは多田さんという存在が大きいんですか?

鎌田さん:間違いないですね。健太郎さん、6代目ですね。

藤代:多田さんはもうみんな知ってて。あ、じゃぁ誰々とかいいよ、みたいな感じで案内されて。

鎌田さん:そうですね。もちろん顔は広い、というか知ってらして。でどういう人がいらっしゃいます?って質問したら、じゃあこういう面白い人がいるよと言って紹介してもらったのが最初のとっかかりなんですね。その視点が、なんというか単純に知り合いって言うだけではなくて、能登を盛り上げていきたいと思っている若い世代というか、次世代というか。まさにその当事者なんで多分そういう視点で、こういう面白いひとたちがいるよと紹介いただいたと。

藤代:鎌田さんも最初そのウェブサイトを作る段階で初めて訪れて。いろいろな場所に案内されて。

鎌田さん:そうです。

藤代:でもそれで4~50回行ってるってことは、そこでだいぶ仲良くなって、それで映像があってみたいな感じなんですかね?

鎌田さん:2005~6年、最初のウェブサイトを立ち上げたときも、最初行って、当時若旦那と若女将と僕とで、イラストレーターさん連れて行ったりとか、旅行して回ってたんですよ。それは別に取材ではなくて、ただ能登の良さを知る旅、みたいな。そこから始まって、取材とかも通じて知り合った方々だったりとか、何回も通ううちに関係性というのはできてきて。それから14~5年くらい健太郎さんとは付き合いがあるんですけど、それと同じくらいの期間、年に何回かは行くことによって関係性というのは醸成されてきているとは思いますね。


地域とクリエイターの関係性を映す

藤代:なるほど、わかりました。ちょっと柘植さんお待たせしてしまってすいませんが、柘植さんにもお話を伺いたいんですけど。地域にすごく近い関係性が築けているが故の企画であったり、映像だったとは思うんですけれども。その案件に入ったときにじゃあどうやって撮ろうって考えたのかっていうのをお伺いしたくて。ここ「自分でカメラを回す」って書いちゃってるんですけど、本当にダラダラと話しているところをただ撮ってるんだけども、すごくそれがいい、みたいな編集になっていたりとか。
切り取り方が普通のドキュメンタリーとはちょっと違う、異質なものに感じて。でもなんか観ていると引き込まれるっていうか、映っている人をどんどん好きになっちゃうみたいな、気持ちになっていったんですけど。最初はどう考えて、撮ろうって決めたのでしょうか?

柘植さん:たぶん最初、鎌田さんから相談があったときは、僕が旅行した時の映像、草津とか京都とか旅した時の映像をイメージして、期待して相談してくれたと思うんですけど。
なんかあんまりそういうの、もうやりたくないと思ってた時だった。

藤代:もういっかな、みたいな。

柘植さん:そうですね。ああいうものを、頼まれてつくった時にあんまりうまくいかないかないなぁと思ったんです。

藤代:あぁ、なるほど。

柘植さん:なんでかわかんないんですけど。こういうところ撮ってください、撮って欲しいというところを、自分はあまり魅力を感じなかった。とか多分そういうことがあったりして。でも頼まれてつくるものじゃなければ、自分が楽しかったなぁ、綺麗だったなぁっていうものだけを映像に入れれば、それでできちゃうので。やっぱりそういうところがつくったものの良さだったのかなぁと思ってて。
そうなるとその、今回も能登の魅力を伝えたいっていう依頼に対して、同じような映像を作っていると、自分としてはあんまりいいものにならないんじゃないかって言う気がしていたので。多分鎌田さんにも、今までみたいなやつ、あんまもうつくりたくないんですよね、みたいな話最初にしてて。

藤代:そうなんですね。

柘植さん:だからと言ってどうしたいというのもなかったんですけど。今までと違うものを作りたいという思いは最初からあって。

藤代:作り始める時には、柘植さんと鎌田さんの間でもいわゆる資料みたいな、こう撮りますみたいなものがあって進められたんです?それともいきなり行ってとりあえずまわしてみて、考えようみたいな感じだったんです?

鎌田さん:最終的にできたものですか?

藤代:撮り始めた時ですね。

鎌田さん:とりあえず行ってみようでしたよね。絵コンテとかないのかな〜ってぼんやり思ってたんですけど(笑)。

柘植さん:何もなくて。ただとはいえ、今までとどう違うものが作れるかもわかんないから、1回行ってみよう、みたいな感じで。多分行ったんじゃないかなと。ただ、そこでこういうふうにつくっていったら面白いんじゃないかな、っていうのを発見できたのが、朝市。輪島の朝市の映像があるんですけど。多分それをつくった時に、このスタイルでいこうと思ったんですよね。 

鎌田さん:魚焼いて食ってるやつです。

藤代:わかりました!あれめっちゃ美味しそうですよね〜。

柘植さん:最初からのこういうものを作ろうとして行ったわけではなくて、行ってからこういうものにしようっていうのを決めた、という流れですね。

鎌田さん:旅人の視点で映像を作っていくっていうのは、確か行く前からおっしゃってて。普通に旅人が旅に出て予期しない出来事が起こって、そっちに流されながら旅を紡いでいく、みたいなのを映像化するのがいいんじゃないかな、という話は確かされてた気はしますね。なので筋書があると、成立そもそもしないというか。だから、なんか起これ、なんか起これって思いながら(笑)撮影しているような側面はありましたね。

藤代:一日に何箇所か回るってそもそも決めておいて、コンタクト取っておいて何時に行きますって。順々に回ってくのを、柘植さんがそれをおさえて。

鎌田さん:そうですね、どうしても香盤上次のロケ地の人を無視して、今いい流れだから、ちょっとごめんなさいしておいて、っていうわけにはいかないので。限られた時間の中でできるだけ、演出しないというのはありましたよね。

藤代:一緒に同行している鎌田さん自身も、お魚食べていらっしゃるのが映ってたりとか、撮影クルーとか取材クルーががっつり映ってるっていうのも、最初行ったときにひらめいたというか、全体を撮ろうみたいな感じになったんですか?

柘植さん:そうですね。やっぱり人が映ってないと面白くないなぁって思って。例えばその誰かに会いに行くとか、こういうイベントを撮るとか決まっている場合はいいんですけど。景色だったり、旅人がいないと人が出てこないような設定のシーンは、出した方が面白いかなって。ただスタッフをそんなに前に出して撮ろうとはしてなかったんですけど。いないと面白くないというところは映したという感じ。

藤代:なるほど、それは場所に応じてって感じなんですね。確かにそう。

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鎌田さん:面白い瞬間は逃しづらかったんでしょうね、スタッフ出るのはもう絶対にナシ、ていうルールにしちゃうと。でもスタッフが映り込んでる時に、いいところがポロっと出たりとかするんで。それも気にせず使える状態の素材をいっぱい撮りためたっていうのは、結果良かったんだろうなと思う。

藤代:あれ今回ってんの?みたいな感じで、「いきなり回さないで〜」みたいなやり取りされているのもあるじゃないですか。あれとかフラッと寄ってなんとなく喋り出している感じがすごく伝わってきて。

鎌田さん:人柄が出てきますよね。

藤代:そう。確かに、人柄がそういうところですごくでるんだっていうのも、やっぱりこの映像を観てすごい思ったんですよね。それは、やっぱり撮影しながらそういうのを見つけていったということなんですねぇ。

鎌田さん:基本僕はお任せでしたけど。ずっと僕はニヤニヤ見てるだけで。

藤代:そうなんですか(笑)。けっこう色々な人が行ってますよね。カメラマンとかも同行してたりとかしたんですか?

鎌田さん:そうですね、柘植さん本人も回してますし。

藤代:柘植さんの撮影クルーですとか。

鎌田さん:大体2カメで回してましたよね。あと音楽をつけてもらって。その全部に。

藤代:そうですよね。曲が違いますよね。

鎌田さん:すごい人でめっちゃ速いんですよ。ポロリン、て。もうなんか、しゃべるように弾くみたいな。谷口彩子さんって人で。その人に喋るように、初見で音楽をつけていくくらいの気持ちでお願いできないですかってお願いしたんですけど。いいよって言ってくれたけど、めちゃくちゃ大変だったろうって。で、そういう人を連れて行ったりとか。

藤代:そうなんですか!でもそれ、いいですね。

鎌田さん:一緒に旅行って、そう、こういうところに映ったり。

藤代:一緒に巻き込んでというか。


「旅」という感覚でのものづくり

鎌田さん:実際に経験して、体験して肌で感じたものを音楽にフィードバックする、というようなことですかね。次のテーマで「旅シリーズ」と書いてましたがまさに「旅」って捉えてた節はありましたね。
最初の取材チームと打ち合わせしていると、次の旅行いつ?っていつも言うくらい。ロケーションとか取材とかという言葉でなく、旅行って言うような。

藤代:旅って感覚になってったということですね。どのぐらいの頻度で行ってたんですか、これって。基本冬編は冬みたいな感じで固まってたんですか?

鎌田さん:やっぱりイベントごとがあると、祭りを撮ろうとかだったら祭りに合わせていかないといけないし。でも祭りの日に撮れない夏のシーンがあったら違う日に行くし。で、みんなのスケジュールも当然あるし。なかなかそこの調整大変でしたね。柘植さん何回くらい行きました?

柘植さん:僕、多分5-6回だと思いますけどね。多分。

藤代:編集は実際にいっぱいやられて大変でしたか?

柘植さん:でももう一人、当時井手内くんて言うスタッフがいて。基本編集は彼がやって。2人でこういう構成にしようかっていう相談しながらやっていたので。そこまで大変じゃなかったかな。

藤代:編集してから音楽つけてもらってたんですか?

柘植さん:そうです。

藤代:すごいやり方ですね、それも。まさか43曲作るとは(笑)。見てる間に気づいたんです。これ曲違うなと思って。

(中編に続く)

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