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洋書多読に辞書を引く

多読3原則という誤まった方針が、いつまでも日本で蔓延しているのは非常に残念です。多読指導者は専門学会の指針を見たり学術論文を読んだりして、正しい情報を広めて欲しいと思います。

まず、「日本多読学会による英語多読指導ガイド」をご覧下さい。最初に多読とは
(1)辞書をできるだけ引かずに、
(2)もとの英文を日本語に訳すことなく
(3)理解度100%にこだわらず、理解度 80~90%で
(4)大量に、長時間にわたって英語の本を読むということです。

メリットとデメリットを読者(学習者)自身が判断して、辞書を引く頻度をコントロールしてください。

上記が日本多読学会の公式見解です。イスラム原理主義者、極右政党など、世の中には何でも極端に走る人がいますが、洋書多読で辞書使用の禁止を正当化できるような科学的エビデンスはありません。辞書使用群と非使用群を比較して、語彙習得や英文理解に関して非使用群が統計学的有意に優れていたという研究論文はないでしょう。客観的エビデンスなしに自分のエゴを他人に押し付けるのは「原則」ではありません。

次に、Richard Day and Julian Bamfordが発表した論文「Top Ten Principles for Teaching Extensive Reading」をご覧ください。これが世界的に最も高頻度に引用されている多読の原則です。

  1. The reading material is easy.

  2. A variety of reading material on a wide range of topics must be available.

  3. Learners choose what they want to read.

  4. Learners read as much as possible.

  5. The purpose of reading is usually related to pleasure, information and general understanding.

  6. Reading is its own reward.

  7. Reading speed is usually faster rather than slower.

  8. Reading is individual and silent.

  9. Teachers orient and guide their students.

  10. The teacher is a role model of a reader.

一見して分かるように、dictionaryという単語は使われていません。やさしい読み物を自分で選んで、できるだけ沢山読むのが多読です。


最後に、Paul NationとRob Waringの共著「Teaching Extensive Reading in Another Language」の一部を引用します。Occasional dictionary use should be allowed in extensive reading because dictionary look-up has positive effects on vocabulary learning through noticing and on comprehension.

新型コロナウイルスの感染が拡大したときも、テレビタレントや自称専門家があれやこれやと自論を展開しましたが、やはり信頼できる情報は専門医から得られることが多かったと思います。同様に、リーディングに関しても日本多読学会や大学教授の見解に従う方が間違いが無いと思います。

辞書を引きたくない人はそれで構いませんが、科学的根拠に基づかない自分のやり方を他人に押し付けるのは止めましょう。

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